ラズパイその他工作

風のままにキャラクタが動いてグラフィック作品ができる装置の制作

ラズパイの簡単工作を通して、電子工作の原理や基本を学ぶこの連載。教えてくれるのは、メディアアートの分野で、また「ちょっと深い仕組み」を解説する書籍の世界で活躍している、伊藤尚未さんです。前回はセンサを使ったおもしろ工作について学んでいきましたが、今回は装置とモニタが連動してアート作品をつくり上げる意欲作の紹介していきたいと思います。

前回の記事:センサを使ったおもしろアイテムの簡単工作

[目次]

1.はじめに
2.アナログとデジタルのオモシロさ
3.作品イメージを固める
4.人間の意図によらない意図的な作品
5.風によるグラフィック
6.プログラムによりさまざまなグラフィック作品が生み出される
7.まとめ

1.はじめに

私はこれまで「ものづくり」にこだわり、造形作品を作ってきました。もちろんアートの領域で、いわば表現として作ってきたつもりです。そんな中、何を作ればオモシロいのだろう?といろいろ考えた際に、興味を持ってアンテナの向く方向にあるものを、いわば「オモシロい」という表現にしてもよいかと思っています。今回はそんな自分の「オモシロい」を形にした作品の制作を紹介したいと思います。

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2.アナログとデジタルのオモシロさ

私は、アナログ、デジタルという閾値(シュレッショルド)を設けて白黒分けるつもりはありません。どちらもオモシロいことには変わりありません。

例えば、センサを使って何かを感知、検知し、それによって何かリアクションという出力を出すことを得意なのがマイコンでしょう。前回もフォトリフレクタを使って画面の中のキャラクタを操作しましたが、いっそのことフォトリフレクタ、光センサなど半導体製品も使わないという切り口はありうるか?と考えてみました。

仮に、センサの値を得るにしても前回のものをみても1か0かどちらかになってしまいます。これでは「スイッチでいいじゃん」ということに気づいてしまいました。スイッチとセンサはどう違うのか?を改めて考えてみると実は同じものではないか、と考えてしまいます。

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ここで言うセンサは主に半導体によるもの、スイッチは物理的接点によるもの、とイメージしています。しかし、スイッチとセンサはどう違うのか?を改めて考えてみると、実は同じものではないか、と考えてしまいます。

もちろんスイッチの接点にはこのような磨耗、熱、放電による影響を抑え、耐えるような合金が施されている場合もあります。

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ではセンサの場合はどうでしょう?半導体によるセンサを考えると(「センサ」とひとくくりにしてしまうのも乱暴ですが)、物理的接点よりも対応時間(回数)は桁違いに高くなりますし、回路によって閾値も変更できるでしょう。つまり感度が微調整できるわけです。

このように考えても、センサのほうが優位性は高いのですが、工作になるとシンプルなもので、身近なもので、できたら特殊なものは使わず、簡単に手に入るもので、しかも必要機能が充たされればそれでいいのでは?とも考えられます。

3.作品イメージを固める

今回は、これまでの連載の流れもあり、物理的な動き=何かを検知して、その動きを使ってアウトプットする作品にしたいと考えました。

そこでいろいろなデバイスがある中、もちろん耐久性や精度などをいろいろと考えていたわけなのです。結果として今回の作品はアナログな接点を使う、ということにたどり着きました。

しかもアウトプットとしては光るとか、動くとかの何かの動作制御ではラズパイを使わなくても十分なので、あえてモニタのなかで、いわばグラフィックとしての作品にしよう、ということで方向性は固まりました。

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4.人間の意図によらない意図的な作品

さて、具体的にはどのようなイメージをしているのかをスケッチしてみましょう。前回のビー玉とフォトリフレクタより、さらになにかアナログ的な要因でキャラクタを動かし、同時にアートの要素も取り入れることで作品としてのオモシロさが表現できないかとも考えました。そこで以下のような装置を作り、風鈴のように風を受けることでキャラクタを動かし、その軌跡をトレースすることで意図しないグラフィック作品を作るという装置を思いつきました。

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先にも述べたように仕組みは極力シンプルに、「風」を主体にしつつ、少しだけプログラミングの部分で味付けをしてみた、というところです。

5.風によるグラフィック

入力部分の仕組みは簡単。接点になる4つのネジの中に円板をつるし、風を受ける短冊をつける。円板がネジに接触することでスイッチが入り、その方向にキャラクタが進むというものです。キャラクタには「ペン」機能でその軌跡を線で残すようにします。

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こちらが実際にキャラクタが動いた軌跡になります。こうやってみると、現代美術作品のイメージが重なり合う気がします。

6.プログラムによりさまざまなグラフィック作品が生み出される

Scratchで組んだものはこちらになります。

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GPIOを4つ使い、それぞれでキャラクタの方向を決め、1歩づつ進めます。このときにペンでその軌跡を描いていきます。画面の座標を越えてしまったらキャラクタを中央に戻し、このときにペンの色も少し変化をつけます。これをそれぞれのネジ接点で検知して動きます。

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スイッチを回路図にすると、とてもシンプルです(笑)。

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実際の装置の画像です。ここでは上下左右の軌跡だけですが、もちろん隣同士の2箇所の接点が働けば45度方向へも動きます。画面の端まできたら一旦中央に戻るようにしており、うまくいけば放射状のグラフィックができるのではないかと予想しましたが、そうは簡単にいきません。しかし、自分の意図とは異なるからこそオモシロいのです。

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ただし、プログラミングによりいろいろな味を楽しむこともできるでしょう。例えば何かの条件でペンの太さを変えてみるとか、色の変化を変えてみるとか、キャラクタの挙動をかえるとか、アイデアはいくらでも出てくるはずです。

7.まとめ

アナログ的手法はシンプルゆえに意外と難しく、思ったようにいかないことも多いのですが、しかし、そこが魅力でもあり、開発の余地がある部分でもあると思います。

今回は作品制作に関わるいろいろな思考部分を文字にしてみました。また、新しい試みとしてアナログな手描きのイラストなども入れてみました。

以前より「電子工作」ってカタくてとっつきにくいと言われているので、なんとか少しでも、という想いもあり、今回のような記事にさせて頂きましたがいかがでしたでしょうか?

実際にはこんないろいろ考えながら、悩みながら、どこに落とし込んだらオモシロく、自分の作品としても納得いくか、という、まさに大きな見えない「閾値(シュレッショルド)」があるんだ、と実感してしまいます。

次回は物理現象とコンピュータを融合させた、美しいグラフィックと電子工作のコラボレーション作品を紹介したいと思います。

センサに関する基礎知識をもっと知りたい方はローム「センサの豆知識」をチェック!

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伊藤 尚未

日本電子工作普及推進委員会代表、メディアアーティスト。サイエンスライター、動物園の飼育員のフリした電気工事士、理科実験教室講師、ワークショップ講師、教材開発など、幅広く活動中。 月刊「子供の科学(誠文堂新光社)」で電子工作の連載を続けて19年、代表的な書籍は「電子工作大図鑑」「電子工作パーフェクトガイド」があります。