さらなる冗長性と信頼性を! 920MHz帯を活用した遠隔制御の新しい形【前編】

目次

  1. はじめに
  2. いま920MHz帯を使った遠隔制御が注目される理由
  3. 920MHz帯の特徴と得意・不得意を理解する
  4. 920MHz帯の活用を考えたきっかけとは!?

 

1. はじめに

離れたマシンを、電波を通じて自在に操縦することができる遠隔制御。操縦者の指令を受け取りそれに応じた動作をする遠隔制御装置は、社会に目を向けると家庭用から産業用まで、さまざまなシーンで活用されているなくてはならない技術です。小さい頃、トイラジコンで遊んで意のままに離れた物を操縦できることに感動した方も多いことでしょう。

誰もが子どもの頃、一度は遊んだことのあるラジコン。離れたマシンを自在に操れるその魅力にハマったお子さんも多いのではないでしょうか。

 

そんな遠隔制御の技術開発や装置の販売をおこなっているのが、千葉県に拠点を構える双葉電子工業株式会社です。「フタバ」の愛称で知られるこの企業は「ラジコンのフタバ」としても有名で、ラジコン飛行機やヘリ、ドローン、ラジコンカーなどを操縦する「プロポ」の分野で世界有数のシェアを誇るトップ企業となっています。

 

その双葉電子工業が近年力を入れているのが920MHz帯を使った遠隔制御の冗長性と信頼性の向上です。人の手を離れて動くラジコン飛行機やドローン、ロボットをいかに安心安全に操縦できるようにすることは遠隔制御技術にとって避けては通れないものであり、ドローンや無人ロボットの発展に伴い、ますます必要不可欠なテクノロジーとなっています。

今回は双葉電子工業の開発担当者に、遠隔制御の冗長性と信頼性のあり方と目指すべき方向性についてお話を伺いつつ、ロボットやドローンの遠隔制御における今後のトレンドを紹介していきたいと思います。

今回お話を伺った双葉電子工業は、ラジコンの送信機や受信機、サーボなどの分野で世界トップレベルのシェアを誇る企業。同時に無線機器だけでなく、ラジコン飛行機そのものも開発している。

 

2. いま920MHz帯を使った遠隔制御が注目される理由

双葉電子工業は長年、ラジコン飛行機やヘリ、ドローン、そしてラジコンカーなどの送信機(プロポ)や受信機、サーボなどを開発してきました。それらの通信方式は20年以上前から27MHz帯や40MHz帯、そして法改正が行われた2008年頃より2.4GHz帯を使った製品を発売しており、現在のラジコンの世界ではそのほとんどが2.4GHz帯での通信となっています。

今回取材にご協力頂いた、左より双葉電子工業ホビーラジコン事業センター生産・開発部主管技師の田中昌廣氏、生産・開発部技術開発課開発一係係長の保泉兆優氏、営業部営業課課長の大村文彦氏と同社の無線機器製品。

 

しかし、ラジコンやドローン、ロボットの遠隔制御について、近年は新しく920MHz帯を活用した通信方式に注目が集まっています。双葉電子工業で920MHz帯通信モジュールの開発を担当しているホビーラジコン事業センター生産・開発部技術開発課開発一係係長の保泉兆優氏は、同社で920MHz帯を使った製品を開発した経緯として、

「2.4GHz帯はさまざまな機器に使用されており、ラジコンやドローンの遠隔制御だけでなく、Wi-FiやBluetooth等が多くの機器で使用されています。当社の通信機器も周波数の変調や周波数ホッピング等の技術で、電波の妨害に対して強くは作っているのですが、2.4GHz帯全般を埋められてしまうと、場合によっては遠隔制御の観点から信頼性に関わってくる可能性があります。ラジコンやドローンは通信が一瞬でも遮断されてしまうと、大きな事故にもつながりかねません。そこで当社では、2.4GHz帯で制御しつつ、2.4GHz帯が妨害を受けた時だけ自動的にバックアップの920MHz帯に切り替わるシステムの開発をおこないました」と語ります。

 

2.4GHz帯は免許不要で利用でき、比較的遠くまで電波を飛ばすことができるため非常に便利な周波数帯です。そのため、産業分野だけでなく科学分野や医療分野などでも使われています。前述のWi-FiやBluetooth以外にも、家庭用の電子レンジ、RFIDなどでも使われており、無線通信が当たり前の現代において非常に多くの機器で使用されるようになってきました。そのため、帯域が混雑して不安定になったり、電波同士の干渉が発生しやすくなっています。

 

そんな中、空を飛ぶラジコン飛行機やラジコンヘリ、ドローンなどは通信が途切れてしまい、機体がアンコントローラブルになってしまう、いわゆる「ノーコン」の状態を極力なくす必要があります。これは空を飛ぶ無人航空機の宿命でもあり、空の安全を確保し、無人航空機が市民権を得るためにも非常に重要な点です。

 

3. 920MHz帯の特徴と得意・不得意を理解する

さて、遠隔制御の新しい形として注目される920MHz帯ですが、この周波数帯はどのような特徴を持っているのでしょうか?

双葉電子工業が開発した「TM-18 RF-MODULE」(左)。従来の2.4GHz帯送信機の裏にモジュールを取り付けることで(右)、920MHz帯をバックアップとして利用することができるようになる(モジュール対応機種のみ)。

 

保泉氏は920MHz帯の特徴について、次のように解説してくれました。

「920MHz帯は周波数帯が2.4GHz帯よりも低く、小さなパワーでより遠くまで届く特性を持っています。低消費電力の特性を活かし、送信機本体の電源から電力を供給しても、本体の電力を大きく消費することなくバックアップの通信システムを設けることが可能です。また、2.4GHz帯と比べると直進性も緩やかになっており、物陰にも回り込む電波特性がありますので、遮蔽物に妨害されにくいのも特徴です。また、2.4GHz帯ほど混雑していないのも大きな特徴です」

 

保泉氏の言葉だけ聞くと、920MHz帯は遠隔制御にとってメリットばかりのようだが、苦手な部分はあるのだろうか? その点について、同じく生産・開発部の主管技師である田中昌廣氏にわかりやすく説明頂いた。

「例えば映像の伝送など大容量高速通信は920MHz帯には不向きです。映像伝送については、一度に大量のデータを送らなければならないので通信速度を上げる必要がありますが、そうすると電波の帯域を広くしなければなりません。つまりひとつの帯域で何チャンネル取れるのか?という問題が出てくるわけですが、そうなると今度は同一エリアで使える機器の台数が極端に少なくなってしまうわけです。映像の伝送など大容量高速通信は5.8GHz帯など帯域が広く取れる高周波数帯を使うのが一般的です」

 

最近ではドローンのカメラの映像をリアルタイムで送信機のディスプレイやアプリに伝送し、一人称視点で飛ばすFPV飛行がドローンではさかんにおこなわれています。そういった際のFPV飛行の映像伝送は5.8GHz帯を使い、機体の操縦については2.4GHz帯をメインに、バックアップとしてサブギガヘルツ帯(Sub-GHz帯)と言われる920MHz帯を活用するというのが、それぞれの周波数帯の得意な部分を組み合わせた形として最適解なのではないでしょうか。

 

4. 920MHz帯の活用を考えたきっかけとは!?

双葉電子工業では以前より920MHz帯について、ラジコンやドローンの遠隔制御への活用を考えていたと田中氏は言います。

「920MHz帯の利用が開放された際は、産業用のテレコントロールやテレメーターでの利用がメインで考えられていましたので、当社のようなラジコンの通信制御が含まれるかどうか、当時は判断が付きませんでした。しかし、ドローンが登場したことで920MHz帯がクローズアップされるようになり、当社でも920MHz帯を使った遠隔制御の通信システムを本格的に開発するようになりました。また、2021年に法改正がおこなわれたことも追い風となりました。従来はListen Before Talkといって自分が出そうとする電波のチャンネルが空いているか確認し、空きチャンネルであれば電波を出せたのですが、法改正により2.4GHz帯と同じ周波数ホッピングで電波を出すことができるようになりました」

 

このように、身近に使うことができる環境が整ってきたことで、ラジコンやドローンの制御に用いる道が見えてきた920MHz帯。後編では双葉電子工業の920MHz帯モジュールの特徴や実際に2.4GHz帯から920MHz帯に切り替わる様子を動画でお伝えしながら、今後の遠隔制御のトレンドなども聞いていくことにしたいと思います。

機体と操縦者をつなぐ電波の冗長性と信頼性向上を目指した双葉電子工業の920MHz帯周波数の活用。

 

後編では、製品の特徴と今後の遠隔制御の方向性などについて紹介していきます。お楽しみに!

 

 

今回の連載の流れ

さらなる冗長性と信頼性を! 920MHz帯を活用した遠隔制御の新しい形【前編】(今回)
さらなる冗長性と信頼性を! 920MHz帯を活用した遠隔制御の新しい形【後編】

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