「無駄づくり」発明家・藤原麻里菜さんインタビュー
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今回インタビューを受けて頂いたのは、頭の中に浮かんだ不必要な物を何とか作り上げる「無駄づくり」を主な活動とし、YouTubeやSNSで多くの発明品を発表しているコンテンツクリエイターの藤原麻里菜さん。2021年には、Forbes Japanの「30 UNDER 30 JAPAN2021」に選ばれるなど大きな注目を集めている藤原さんは、2013年からYouTubeチャンネル「無駄づくり」を開始し、これまで200個以上の不必要な発明品を世に送り出してきました。そんな「無駄づくり」には電子工作の知識も大いに役立っているとのこと。「無駄づくり」の発想はどのようにして出てくるのか。そして「無駄づくり」は今後どこへ向かっていくのか。前編に引き続き、後編もお楽しみください。
電子工作でますます広がっていく「無駄づくり」の世界
編集部:「無駄づくり」をしていく中で、藤原さんは電子工作をどのように捉えていらっしゃいますか?
藤原さん:私はArduinoをメインに電子工作をやっているのですが、マイコンを使った電子工作を始めようとすると普通はいわゆる「Lチカ」から始めると思います。でも、「Lチカ」って本当にしょうもないプログラムですよね(笑)。そこで「しょうもないな」と感じて止めてしまう方も多いようですし、同じく基礎であるサーボモータを使ってみても、あまりそれから先の想像が膨らまないと思います。しかし、私の「無駄づくり」はサーボモータの技術だけでやっていることも多くあります。大きなスイッチをサーボモータで押したり、お花の水やりにジョウロを付けたりするのもサーボモータでおこないます。他にも紐を引っ張ったりする仕掛けもサーボモータでおこなえます。ちょっと考えたり、工夫をするだけで、自分のものづくりに活かせる使い方を何百通りも思いつくことができると思います。ですので、これから電子工作を始めようと思っている方は、何かひとつのパーツでどれだけのことができるか、想像力を働かせることが大切だと思います。
編集部:ひとつのデバイスやパーツから、何ができるか考えるのが楽しい時間なのでしょうか?
藤原さん:そうですね。自分のアイデアが先行で良いと思いますが、「あ、このアイデア、サーボモータでできるな」といった発見があると凄く気持ち良いですね。自分のアイデアとパーツがつながる瞬間があるととても楽しいです。
編集部:電子工作を覚えられて、「無駄づくり」の幅は広がったのでしょうか?
藤原さん:それは間違いないですね。例えばDCモータをイジっているだけでは、センサは使えないですが、センサを使ってプログラムできるようになると、ものづくりの幅が非常に広がります。覚えた技術から想像を膨らませていくことは、非常に楽しいことだと思います。
編集部:これまで電子工作を使った「無駄づくり」で、実は役に立ってしまったようなものはありましたか?
藤原さん:見方によっては役に立っているものもあると思います。私はものづくりのゴールとして、作った後で「役に立つ、役に立たない」といったことや、「これは無駄ではないから失敗」というようなものはなく、そういったことも全部含めて「無駄づくり」だと考えています。ものづくりをするきっかけみたいなものが、「無駄づくり」という枠の中だとハードルが低くなるのでその枠の中でおこなっているだけで、凄くストイックに「これは無駄だからOK」「これは無駄ではない」というように自分で正解を決めているわけではありません。
毎日「無駄づくり」のアイデアを溜め込んでいく
編集部:藤原さんはこれまでも画期的なアイデアで多くの「無駄づくり」をおこなってこられましたが、そのアイデアの源泉はどういった部分にあると思いますか?
藤原さん:人から聞いたこととかではなく、自分が日常生活で感じたことや素直に感じたことをベースにするようにしています。意識的に毎日アイデアを考えようとしていますので、コンスタントにアイデアは溜まっていきますから、あまりアイデアの枯渇といったことはありませんね。
編集部:藤原さんの中で、最近の電子工作のトレンドとして気になっているものはありますか?
藤原さん:最近、Arduinoで使える指紋センサを購入しました。「こんな簡単に指紋が取れるんだ」と驚くほど凄いものでした。そういった意味で、最近は指紋認証にとても注目しています。例えばしょうもないものを指紋認識させて開けたりしたいな、とか考えています(笑)。また、圧電素子も簡単に使えていろいろ工夫ができるセンサなので注目していますね。センサを試してみようと思うと、Aruduinoならサンプルコードがありますので、それをイジればどんなセンサでもある程度使いこなすことができます。ですが、もしArduinoを知らなければ、指紋センサを使いこなすのはとても難しいと思います。Arduinoの前知識があれば、センサもそれなりに使いこなすことができますので、その点でArduinoを使えるようになって本当に良かったですし、「無駄づくり」の中でも非常に重宝しています。あとは、重さが測れるようなセンサがあったら、いろいろなシーンで利用できそうだと思っています。
編集部:普段、電子工作の情報やトレンドはどのように集めているのでしょうか?
藤原さん:インターネットで検索して調べることが多いです。中にはDevise Plusが上位に出てくることも多いので結構参考にさせてもらっています(笑)。あとは海外のサイトも見るようにしています。日本語で検索して出てこなかったら次は英語で海外のサイトを調べたり…といったことはよくやっています。自分と同じ悩みを抱えている海外のエンジニアがいないか、よく調べたりしていますね(笑)。
編集部:ちなみに、海外で藤原さんのように、いわゆる「無駄づくり」をされているクリエイターはいるのでしょうか?
藤原さん:はい、たくさんいます。電子工作を使った「無駄づくり」クリエイターもたくさんいますし、海外のクリエイターは発想が大胆だったり、規模もガレージを使っていたりして、日本とは違った部分があってとても面白いです。
編集部:ちなみに、これまで「無駄づくり」で作られてきた製作物は、どのように保管されているのでしょうか?
藤原さん:展示用や何回も人に見せる用のもの以外は、バラバラにしてしまうことが多いです。Arduinoを使っているようなものは、一度分解してパーツを再利用することも多いですね。ただ、あまり明確な基準はないですが、中には「これは残しておきたい」と思うものもあったりしますね。
編集部:最後に、今後「無駄づくり」と電子工作の観点から、藤原さんの中で新しいチャレンジの予定があれば教えてください。
藤原さん:「無駄づくり」をしていく中で、CNCをもっと使っていきたいと思っています。切削とかもきちんとCADで設計してやってみたいと考えています。電子工作では、ラズパイはちょっと使っているのですが、中途半端に覚えてしまっているので、もっと「無駄づくり」に活用していきたいですね。
編集部:本日はありがとうございました。
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2回に渡ってお届けした藤原麻里菜さんのインタビューいかがでしたでしょうか?ますます注目を集める「無駄づくり発明家」藤原麻里菜さんの今後のご活躍に期待したいと思います!
今回の連載の流れ
前編:「無駄づくり」発明家・藤原麻里菜さんインタビュー
後編:「無駄づくり」発明家・藤原麻里菜さんインタビュー(今回)