「第8回東海北陸ロボコン交流会」が、2024年3月16~17日、愛知県青年の家(愛知県岡崎市)で開催された。東海北陸地区の8校から約90人が参加し、技術勉強会や技術交流のほか、参加者が自作のロボットを持ち寄って競い合う「ミニロボコン」も開かれた。現地より交流会のレポートをお届けする!
■13:30 技術勉強会
初日の冒頭のイベントとして企画された技術勉強会では、ロームの若手エンジニアが「半導体メーカーが作るセンサの世界」と題し、センサの基本知識や活用方法などについて解説した。実はこの社員、大分高専生時代の2017年に高専ロボコンに出場し、チームリーダーとしてロボコン大賞を受賞した経歴を持つ。
「皆さん、ロボットにはどんなセンサを使っていると思いますか?例えば輪投げロボットだったら?」と質問を投げかけ、ポールの位置検出には赤外線センサや超音波センサ、輪っかの検出には接近センサ、射出確度の調整には加速度センサやホールセンサなどの活用が考えられ、ロボット制作を例にとっただけでも様々な役割を担っているということを紹介。ロームの製品を例に挙げて機能の解説をしながら、「センサだけで何かを実現できるわけではないけど、たくさんのデバイスが組み合わさってできているロボットと同じように、マイコンやドライバ、アクチュエータなどとの組み合わせでいろいろなことが実現できます。この勉強会をきっかけにセンサに興味を持ってもらい、もっと知識を深めて、ロボット制作でも最適なセンサを選べるようになってほしいです」とエールを送った。
2013年から5年間ロボコンに出場し、地区大会の副審経験もあるという彼のロボコン愛あふれるトークに、参加者は熱心にメモを取りながら聞き入っていた。
■14:50 ブース展示
各高専や企業のブース展示でも、盛んに意見交換が行われていた。
富山高専(本郷)のブースでは、2023年高専ロボコン全国大会に出場したロボットの、独自設計したエアレスタイヤが参加者の興味を引いていた。スマホケースの素材などに使われるゴムのような柔らかい樹脂を使い、段差を柔軟に超えられるタイヤだ。3Dプリンタで1つのタイヤを製作するのに100時間、4つで400時間をかけたという力作だ。タイヤが逆回転した時に負荷がかからないよう、ハチの巣状になっているのも特徴的で、「まっすぐ段差に突っ込んでも超えていけて、操縦も楽。時間もお金もかかりましたが、このタイヤのおかげで全国大会に行けました」(相澤さん)という自慢の作品だ。
沼津高専は、昨年のミニロボコンで使ったキャタピラを展示。実際の戦車で使われているのと同じクローラーの仕組みを取り入れたという。石川高専は、下級生が先輩から受け継いだアイデアを改良しながら、制作した足回りや移動機構の紹介をしていた。「いろいろな人に自分のロボットを見せて、交流したい」と熱心に情報交換をしている姿が頼もしかった。
ロームのブースでは、センサの評価キットを配布し、社員が参加者と技術やロボコンの話で盛り上がっていた。ブースを訪れた豊田高専の榊原さんは、「今日講演で聞いたセンサの知識があれば、昨年のロボコンの足回りをうまく仕上げられたかも。すごく勉強になったし、他のチームの人と知識の交換ができるのは本当にありがたい機会」と話した。
「実は小学生の頃に、(ローム社員が)全国大会に出ていた時のロボコンを見たのを覚えている」と打ち明けてくれたのは、岐阜高専の尾﨑さん。その経験をきっかけにロボコンにのめり込み、昨年の高専ロボコンではピットメンバーとして活躍した。ロボコンを通してセンサが好きになったといい、「今日聞いた話をチームの皆に伝え、納得のいくロボットを作りたい」と熱く語っていた。こんなところでつながる人の出会いに、連綿と続くロボコンの歴史を感じた。
■16:40 ミニロボコン開幕!
東海北陸ロボコン交流会恒例のミニロボコンは、体育館を会場に、「飴玉ラッシュ」と「足軽大戦」の二本立てで開催。飴玉ラッシュは、2チームがフィールドに落ちている飴玉を拾って的に入れ合い、チームごとに得点を重ねるゲームで、足軽大戦は斜面や障害物のあるコースを走行し、タイムを競うスピード勝負だ。
下級生向けの飴玉ラッシュ、上級生向けの足軽大戦と2種類のゲームによるミニロボコン開催の狙いは、地区全体の技術力のレベルアップだ。毎年少しずつルールに手を加え、参加者のアイデアを促したり、フィールドが壊れないよう強度を高めたりするなど、幹事団の工夫がうかがえる。
参加者は、会場にロボットを運び込むため、ロボットを分解して持参していた。ゲーム前にはあちらこちらで真剣にロボットを組み立て、最終調整をしている姿が。規模は小さくとも、さながらロボコン本大会前の試走場のようだった。調整がうまくいかず、思い通りに動かなかったロボットもあったが、参加者皆でフィールドを囲み、「がんばれ!」「あとちょっと!」と声援を送る。途中で機構が壊れてもあきらめずチャレンジする出場者を温かく見守り、惜しみない拍手で相手をたたえ合う様子に地区の絆を感じた。
高専ロボコンのハイレベルな戦いを見ているとついつい忘れそうになるが、ロボットを設計し、組み立て、思い通りに動かすということ、それ自体がとても難しいチャレンジなのだということに気づかされた。全出場者の頑張りに拍手を贈りたい!
■終わりに
幹事団の目標の一つが、交流会の参加校数を増やすことだったという。高専ロボコン地区大会で交流会への参加を呼び掛けるなど、地道な努力が実を結び、今回の参加は昨年の6高専から8高専に増えた。
幹事団代表の岩瀬さん(鈴鹿高専)は「以前、地区大会の本番で、ヘルメットが足りないというピンチに陥ったんです」と、2年前の経験を振り返る。その時は、横のつながりがあった石川高専のメンバーがヘルメットを貸してくれ、本番を乗り切ることができたという。大会以外の交流や、いざというときに助けてくれる仲間の大切さを実感した経験だ。
岩瀬さんは今年1月の全国ロボコン交流会でも幹事を務め、多くの参加者と交流した。「他地区の高専もやっぱり強い。一校だけではなく、東海北陸地区全体で、皆で強くなりたい。この交流会を通じて関係を深め、もっともっと強くなることができるといいなと思う」と力を込めた。
参加者の皆さん、幹事団の皆さん、本当にお疲れさまでした!