第1回:消費電力の計算方法について
第2回:出力電流の絶対最大定格について
第3回:ブラシ付DCモータの簡単な駆動について
第4回:PWM駆動による定電流動作について
第5回:PWM駆動の電流回生方法による差について
第6回:モータに最大の電流が流れる状態について
第7回:出力トランジスタの寄生ダイオードを通じて電流回生した時の消費電力について
第8回:モータにトルク負荷をかけた時のモータ電流について
第9回:モータの電気的時定数に対して十分に小さいPWM周期について
質問:ブラシ付DCモータをPWM駆動する場合に、1つのMOSFETをモータとGND間に入れスイッチングしています。この時モータと並列接続しているダイオードには回生電流が流れますが、この回生電流の最大値はモータに流れる電流の最大値に等しいですか。
回答:1つのMOSFETを使用したPWM駆動ではMOSFETがオンしてモータに電源電圧を印加すると電流が増加していき、MOSFETがオフする直前が電流のピーク点になります。MOSFETがオフするとモータに流れる電流は並列に接続してあるダイオードを通じて流れ続けようとし、ピーク点の電流が最初流れ、電流が減衰していきます。このような動作をするためダイオードに流れる回生電流の最大値はモータに流れる電流の最大値と等しくなります。
1個のMOSFETをモータとGND間に入れた駆動回路をFig-1に示します。
この回路でPWM駆動時にMOSFETをオンして電圧をモータに印加した時の電流経路とMOSFETをオフし電流が回生した時の電流経路をFig-2に示します。また、PWM駆動時の電圧電流波形をFig-3に示します。
- (a) 電圧印加時
- (b) 電流回生時
PWM駆動時にQ1をオンするとモータ電流はQ1を流れて増加し、オフする直前が最大値になります。次にQ1をオフすると、モータは電流を流し続けようと動作するため、モータに並列に接続しているダイオードを通じて電流が流れます。この時ダイオードに流れる電流を回生電流と呼び、初期値が最大になり、Q1がオフする直前のQ1電流と同じです。その後、回生電流は徐々に減少していきます。次に再度Q1がオンしモータ電流が増加する一連の動作を繰り返します。
このためダイオードに流れる回生電流の最大値はモータに流れる電流の最大値と等しくなります。したがって、ダイオードは絶対最大定格の電流値が十分大きいものを選ぶ必要があります。
また、ダイオードに流れる電流とダイオードの順方向電圧で電力が消費するので、ダイオードのパッケージパワーも消費電力に合うものを選ぶ注意が必要です。
今回の連載の流れ
第1回:消費電力の計算方法について
第2回:出力電流の絶対最大定格について
第3回:ブラシ付DCモータの簡単な駆動について
第4回:PWM駆動による定電流動作について
第5回:PWM駆動の電流回生方法による差について
第6回:モータに最大の電流が流れる状態について
第7回:出力トランジスタの寄生ダイオードを通じて電流回生した時の消費電力について
第8回:モータにトルク負荷をかけた時のモータ電流について
第9回:モータの電気的時定数に対して十分に小さいPWM周期について
第10回:1個のMOSFETでモータをPWM駆動させるときのモータに並列接続するダイオードに流れる電流について(今回)