若者の未来の働き方

才能ではない!手を動かして貪欲に学んだ人こそ報われる、ピュアで刺激的な世界 ~エンジニアのリアルボイス

これから世に出るエンジニア候補生にとって、「ビジネスの現場」がどうなっているか、正確にイメージするのは難しいものだと思います。また、若手エンジニアにとっては、「どう成果を出すのか」、いまいち見えないものかもしれません。そこでデバプラが一計、今、現場で成果を残している人にお話をお伺いし、これからどう働いていくのが良いかを探っていくことにしました。

第4回は、SEQSENSE(シークセンス)株式会社で、警備用の自律移動ロボット・SQ2の開発にあたるエンジニア、前川大輝さん。とても自由で先鋭的なこの職場に、彼はどのようにしてたどり着いたのでしょう。「エンジニアは才能じゃない」と言い切る前川さんの軌跡と働き方を紹介します。

エンジニア、前川大輝さん

 

ロボカップ世界大会で完全優勝を達成

──学生時代に熱中したことは?

父親が機械系のエンジニアでそれを見て育ったので、自分も技術で生きたいという憧れが小さい頃からありました。大学選びもロボット関係のことをやっている学校に行きたくていろいろ調べたところ、ロボカップの世界大会に毎年参加しているチームがあった千葉工業大学に入りました。

大学時代はロボカップにどっぷりつかり、そこでの出会いを通じて他にもいろんなロボットプロジェクトに携わっていたので、もう本当に土日祝日、昼夜を問わず、ひたすらロボットに関わる日々でした。

──大学4年生の時にチームリーダーとして2014年ロボカップ・ブラジル大会を完全優勝* されました。勝因はどこにありましたか?

その前の前の2012年は2位。しかし、新機体への移行が追いつかず旧ロボットに頼ることになった2013年はシード権があったから4位になれましたが、内容は悔しいものでした。 先進性のある開発をしていくという当たり前のことだけでなく、職人的な調整に頼ることのない可能な限り自動化されたシステム作り、メンバーの積極的な勧誘や技術の体系化、組織的且つ計画的な開発スタイルの確立等……、なんでも有益だと思えば取り組みました。そんな僕たちを大学の理事が評価してくれ、2014年は過去最大の予算がつきました。それで新機体の開発は加速し、故障してもすぐにパーツを入れ替えられる環境も整ったんです。その結果、チーム初となる完全優勝が実現しました。

*完全優勝……競技と技術チャレンジ課題ともに1位になること

──そうした活動を通してどんな学びを得ましたか?

受け身ではダメで、常に自分から学び取りにいくという積極的な姿勢を持つことの大切さです。 夢に向かって努力している人の情熱は周りに伝わって、自然と人が集まってくることもわかりました。 ありがたいことに僕も大学の研究員をはじめ、技術的にすごい人方々に囲まれながら開発を共にし、その中から沢山のことを学び得ていきました。

──その後、ロボティクスの技術を開発するスイス発のスタートアップ「Rapyuta Robotics」に入社されますが、その経緯は?

僕は学生時代にROS(Robot Operating System)というロボット向けオープンソースソフトウェアの日本コミュニティーを運営していました。その動向を聞きつけたメディアを通じて、それが海外のウェブニュースで取り上げられたんです。それをRapyuta Roboticsの社長が見てくれ、さらに調べてみたらロボカップで優勝しているし、他にもいろいろなロボットプロジェクトをやっているし面白そうな人材だ、と声をかけていただきました。
その当時、同大学の大学院に進学し1年目だったのですが、スカイプでいろいろ話したところ、これは面白そうだ、今すぐやるべきことだと感じ、思い切って学校をやめてスイスに渡って入社しました。

 

着陸、充電までが自動で行えるドローン

 
──「Rapyuta Robotics」に入社後はどんなプロジェクトを担当していたのですか?

警備用の巡回ロボットや物流向けの自律移動ロボットの開発に携わった後、ソフトバンクと協業で開発したドローンの自律制御および自動充電サービスのシステム開発を担当しました。これは、ドローンが屋外のドッキングステーションを飛び立って巡回し、また着陸し、充電するまでのすべてを自動で行えるシステムです。これまでは、ドローンを使う場所へ移動させたり、充電したりするのは人の手で行っていましたが、そこも自動化することで、完全に無人化できます。

これまでにも自動着陸機能を持つ製品は少数ながら存在していましたが、精度が悪かったり夜間は動かなかったりと、出来は微妙でした。昼夜を問わずに確実に自動着陸でき、充電までを自動で行える頑健なシステムを開発したのは、おそらく我々が世界初だと思います。

──開発にあたり、どんなところに苦労しましたか?

実環境では事前に想定することが難しい数多くの問題に直面します。最初はなかなかスムーズに着陸できませんでした。ロボット開発はハードウェアとソフトウェアの両面がありますよね。やはりそこを切り分けてデバッグするのがすごく大変です。たとえばステーションから照射するパターンが悪いのか、電源の不具合でパターンがずれているのか、プロペラの不調か、それとも姿勢制御の問題なのかというように、テクニシャンではなくエンジニアとしての根本的な問題解決が常に求められます。

そうやって、実際に複数のお客さんの敷地で動かしてみてはシステムを改善してというサイクルをひたすら繰り返していき、ついには100回動かしたら100回成功できるところまでこぎつけました。当時は本当に忙しかったです。

──その後、SEQSENSE株式会社に転職されますが、その経緯は?

前社ではスイスと日本のオフィスに計3年ほどいて、順調に会社も大きくなってきて、達成感がありました。技術者は同じ環境に身を置き続けると成長が鈍化していきます。3年間同じところで働いた私は、そろそろキャリアアップをはかってもいいのではないかと思っていたところ、いろいろな会社から声をかけていただきました。中でもプロダクトの哲学に賛同でき、僕が必要だという強い想いが伝わり、かつ良い待遇を提示してくれたSEQSENSE株式会社を選びました。

 

自分の技術一本で勝負する“傭兵集団”の世界

──現在はどんなプロジェクトに携わっていますか?

弊社ではいまSQ2という警備巡回用ロボットを開発していますが、入社してまずはSQ2の状態管理システムを開発しました。これはHFSM(階層型有限状態マシン)というもので、たとえば今はナビゲーションをしている状態だとか、ステーションにドッキングしている状態だとか、いまロボットが何をしているかというのを、モジュール全体で管理・統制するシステムです。

もう一つは、3Dでシミュレーションできる環境をゼロから構築したことです。それまでもロジックやナビゲーション単体の検証は十分に行えていました。ただ、それを全体のモジュールに合わせるとどうなるかというのは、実機に実装してテストするというやり方でした。それをコンピューター上で3次元のロボットモデルで随時行えるようにしたのです。

警備巡回用ロボット

──どんな勤務スタイルですか?

完全裁量労働制なので、出社時間も退社時間も自由なのですが、一応、8時間労働というのが基本になっています。ただ、成果さえ出せば極端な話、3時間でもいいし、逆に働きたければ12時間でもOK。リモートでの作業も許可されています。給料は年俸制です。実際に自分は平均8時間くらい働いています。

着実に結果を出せる自律した個々人が集まっているというのが大前提なので、それが果たせなければ組織を去らなければならない時もあります。逆も然りで、技術という客観的な指標を持つエンジニアにとって特定の組織に固執する必要性は薄く、組織が満足な環境を提供出来ているのかを常に評価し続けています。これは組織人であるまえにエンジニアという自分をしっかりと持っているということです。一人一人が自分の腕一本で自己の責任のもと食っている、まさに“傭兵”ともいうべき精鋭たちが集まる世界です。

──そうした自由で刺激的な世界に入り込み、しかも成果を出すために必要なこととは?

学生時代から受け身ではなく能動的に手を動かし続けることだと思います。各々が技術で自己表現しているのがエンジニアの世界なので、積み上げた技術は巡り巡って必ず結果へと結びつきます。そして芸能やスポーツと違い、技術に才能は関係ありません。開発現場で求められるのは技術、そして顧客はプロダクト自体に目を向けるので、エンジニア自身が直接的に人間同士の駆け引きに翻弄されることもありません。特定の思想や組織に縛られず、何の為に自分の時間を使うのかを選択する自由を手にする事が出来るのです。

自分も決して最初からできたわけではありません。でもロボットと学びが大好きで、学生時代はロボットにすべての時間を捧げるくらいの想いで毎日学校に通い詰めました。遅くまで作業して学校の共用スペースや開発場、時にはロボカップの人工芝のフィールドで寝ることもありました。そうした日々があったからこそ、今があります。そして今も貪欲に学びを続けています。

前川さんとロボット

──特にこれをやっておいたほうがいいというものは?

オープンソースのプログラムにコードを書いたり、GitHubで自分のコードを公開するというのがおすすめです。これなら実力と実績を同時に高めることができ、就職の際にも大きなアピールポイントになります。やっぱりエンジニアなら、まずはコードを書いて見せましょうと。

あとは、まだ正解の出ていないものに取り組むことです。自分も学生時代はロボカップやつくばチャレンジ、企業との共同研究など、複数のロボット開発プロジェクトに参加していました。それらには教科書がないので、論文を読み漁ったり人に教えてもらったりして、アプローチから開発プロセスまですべてを自分で考える必要があります。それが“現実世界に対応できる技術”を育んでくれ、それこそが社会に出た時に本当に必要なものだと思います。

──ありがとうございます。では最後に、読者の方にメッセージがあれば。

……いろいろ言いましたが、要約すると「むっちゃ楽しいし自由だからエンジニアになろうぜ!」って感じです(笑)。

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Device Plus 編集部

エレクトロニクスやメカトロニクスを愛するみなさんに、深く愛されるサイトを目指してDevice Plusを運営中。

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