展示会

ハードウェアスタートアップは次のステージへ CEATEC2016

今年は、スタートアップ、Makers。

これまで「IT・エレクトロニクスの総合展示会」として開催されてきたCEATECは、今年から「CPS/IoT」をメインテーマとして生まれ変わり、2016年10月4日より開催された。確かに、会場で最も目にする単語は「IoT」だったかもしれない。

さらに、記者が強く感じたのは、スタートアップ or Makers界隈の進出度が高まったこと。ここ数年は、会場内にベンチャー企業が集まった特別ブースが設けられるようになっていた。そして今年はそれがより顕著になり、個別の出展だけではなく、大企業とスタートアップがタッグを組むような動きが多く見られた。実験的な試みはもちろん、リアルなビジネスとしての動きも本格化してきているようだ。Makerたちの存在は、より広く社会に影響を与える段階に来ていると言える。今回のデバプラ的CEATECレポートは、その辺りを中心にお届けしたい。

※CPS=Cyber Physical Systemとは、実世界のデータを集め、電子の世界で扱うこと。

 

大企業×スタートアップな試み

村田製作所×Makuake(マクアケ)

電子部品メーカーのムラタブースでは、クラウドファンディング「Makuake」と連携した「IoTアイデアコンテスト」の受賞作を展示。中でも記者が気になったのは、センサーを搭載したルアー。水温や光量、ルアーのアクションを測定し、データを収集・分析してしまうサービスだ。誰かがやるとは思っていたが……、中の人はガチの釣り師ということで、期待。
https://www.makuake.com/landing/murata/
http://smartlure.hatenadiary.jp/

 

Honda×カブク

Hondaブースのテーマは、「オープンイノベーション」。その言葉通り、だれでも3Dプリンタで外装を作ることができ、それを装備できるコミューターを展示していた。この外装は、3Dプリントのマーケットプレイス等で有名なカブクが提供する3Dプリントサービスを活用したもの。言い換えると、3Dプリントの技術があれば、「車メーカー」のスタートアップを目指すこともできる、ということになるのではないか。
http://www.kabuku.co.jp/

 

ローム×みなさん

ロームブースでは、デバプラ誌上でもフォローし続けている「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」の受賞作を展示。あくまで「アイデア」コンテストで、事業アイデアを目指したものではなかったにも関わらず、すぐにでもサービス化を目指せるような各賞だった。受賞作品の詳細は、下記ページをご覧いただきたい。
https://deviceplus.jp/rohmhack/

この日の会場には、審査員を務めた「エンジニア・タレント」池澤あやかさんの姿も。

また、すでにそのスジでは有名な、ORIZURUも会場を沸かせた。昨年、「CEATEC AWARD」を受賞したものだが、今年はさらに進化。宙返り(羽ばたき飛行体が!)や、腕のジェスチャーでの操作が可能になった。

もちろん、デバプラ読者的新製品も。プロトタイピングや趣味の電子工作をアジャイルなものにする「センサ評価キット」は、新センサを追加。ジャイロ、10軸モーションモジュール、光学式脈波、というラインナップだ。使いこなせるか自信がないが、10軸モーションモジュールが特に気になる記者。グループ企業のラピスセミコンダクタでは、「ラズライト」の新製品について、開発者に詳しい話を聞く機会があった。
https://deviceplus.jp/tag/センサ評価キット/

 

気になるスタートアップ

amazonのコンテスト! Preferred Networks

米スタンフォード大学で開催されたアワードで、日本の革新的なスタートアップ企業に選ばれた、Prefferd Networks社。さらにはamazonの倉庫のピッキング業務をテーマにしたコンテストで準優勝を勝ち取った、確かな技術力を持ったスタートアップだ。クール過ぎる。
https://www.preferred-networks.jp/ja/

 

進化! 遠隔ロボットCaiba

2014年のレポートでお伝えしたこともある遠隔ロボット「ダーレク」改め「Caiba」。ヘッドマウントディスプレイを使って操作ができるのが「遠隔」たるゆえん。遠く離れた場所にあるロボットを通じて、その視界を見られ、動け、コミュニケーションできる。2014年からずいぶん可愛くなった!……だけではなく、各方面の実証実験に積極的に参加するなどして、その実現性を着実に高めているようだ。
http://dalek-roborobo.blogspot.jp/p/

 

バウ○ンガルじゃない! イヌパシー

このINUPATHYは、言わばわんこ用ヘルスケア製品兼コミュニケーションツール。愛犬にハーネス型のデバイスを装着すると、
1. 現在の感情をLEDの色と光り方で表す
2. 心拍データ等をクラウドに保存し、健康管理に役立てる
3. 専用のスマートフォンアプリで、その時の愛犬の状態にふさわしい「キズナを深める遊び」を提案
……といったことが可能になる。ちなみに、「感情」は心拍データに現れるパターンを解析して行うという。
http://inupathy.com/jp/

 

マッシュアップアワード!

「スタートアップ」ではないが、おそらくその界隈の人が気になっているであろう日本最大級の開発コンテスト「マッシュアップアワード」。IBMやSoftBankなどがスポンサードする、ある意味「大企業×スタートアップ」なコンテストだ。その受賞作が展示されていたが、記者が気になったのは、「PetaPeta」というサービス。靴に仕込んだインソール型デバイスとスマートフォン、位置情報を組み合わせて遊ぶ、「頭脳戦鬼ごっこ」だ。作ったのは、デザインキャット社。記者が個人的に素晴らしいと考えたのは、そのデザインオリエンテッドな姿勢。ビジュアル面はもちろんだが、その先のことも「デザイン」と捉えたうえでソーシャルグッドを目指す、視座の高さ。
http://designcat.co/

 

その他、ノンジャンルで気になった展示をまとめて

VRグライダー

冒頭に書いた最近のCEATECの傾向、という話にさらに付け加えるなら、展示が業界関係者向けではなく、エンターテインメント要素が加味された、一般の生活者向けの展示内容が増えている傾向があること。例えば↓↓↓こちら。……これは間違いなく楽しいでしょう。TE(タイコエレクトロニクス)の展示。

 

BOCCOも進化中。ユカイ工学

昨年のCEATECで編集部がタイヘンにお世話になった、ユカイ工学。その「BOCCO」は引き続き進化中! BOCCOの世界観を壊さない、積み木型のセンサを追加発売するとのこと。
http://www.ux-xu.com/

 

e-Sportsを越える?超人スポーツ

ディスプレイの中だけで完結する格闘ゲームなどがe-Sportsというラベルをまとって久しいが、こちらは「超人」スポーツ。テクノロジー領域とスポーツを組み合わせた新しいゲームを提案する団体の展示だ。写真では分かりづらいが……、ヘッドマウントディスプレイを装着してフィールドに出て、ジェスチャーで相手に火の玉を投げて攻撃する、というゲームのデモ。当然、ディスプレイ内ではその攻撃や様々な情報が表示されている。その画面を見ず、単にハタから観戦しているとかなりシュール、というのは触れてはイケナイ部分。
http://superhuman-sports.org/

 

ジャンプ機構! 高専ロボコニストのみなさんが気になる(?)

こちらは慶應義塾大学・桂誠一郎研究室の展示。その名も「超瞬発マシン」。高速と高トルク、高い剛性と高い柔軟性は常にトレードオフの関係にあるが、この機構はそれを克服。キモは両「腰」部分の構造で、モータと引きバネ、そしてクラッチを組み合わせたもの。
http://www.ceatec.com/ja/news/exhibitor_detail.html?id=131

 

AIブースも出現 これからは外せない領域に

IoT関連の企画展示の横には、AI・人工知能関連専門のエリアが。国立の研究所とならんで、前述のPreferred Networksなど、先端的な団体が大きな存在感を放っていた。中でもリクルートホールディングスの展示内容は、「誰でも簡単に機械学習をビジネスに適用できることを目的」に作成されたソフトウェア「DataRobot」。これからのエンジニアは、この分野も「アタリマエ」のものになるのだろう。
https://www.datarobot.com/jp/

 

 

近年、CEATECは出展者数や来場者数が低下傾向にあり、先行きが心配された時期もあった。しかし今年は、出展者数は100社以上の伸び、来場者数もこの原稿執筆時点で増加予想と、明るい傾向にある。実際に会場を歩いてみても、記者という立場を越えて、いち生活者、モノづくりLover、そしてスタートアップ界隈の住民として楽しくためになることが多かった。IoTやスタートアップという言葉が気になる人にとって、「是非」なイベントだと言えるだろう。

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https://deviceplus.jp

高専ロボコン2019出場ロボット解剖計画