2017年3月23日、「関東春ロボコン」が開催された。
会場は新宿ダンジョン駅を抜けた先にある工学院大学1階アトリウム。全7チームの関東学生ロボコニストや観客が集まり、こうした形式の大会として初回とは思えない、本格的&大盛り上がりな仕上がりとなった。密着させていただいた編集部各員も、このクオリティには感服。この一日のレポートと、あまりにも上昇志向な運営メンバーのインタビュー、二本立てでその取り組みを紹介したい。
関東春ロボコン 〜Go for the Strike〜
「関東春ロボコン」は今回が初開催。工学院大学、東京大学、早稲田大学が主催し、主催3校に東京工業大学を加えた4校7チームが参加した。
競技課題は”Go for the Strike”、テーマはボウリングだ。フィールドの3箇所に置かれた合計4つのボールを回収し、指定位置で発射して合計10本のピンを倒す。フィールド内のロボットは自律動作が強く推奨されるルールになっている。
制限時間は3分。
・ボール回収に成功すると、初回のみ1つあたり20点が加算される
・回収したボールを射出し、倒したピンの数につき10点が加算
・すべてのピンを倒すと「ストライク」達成
勝利条件は以下の通り。
・先にストライクを達成したチームが勝利
・制限時間内にストライク未達の場合、得点の高いチームが勝利
・得点が同じ場合、違反の少ないチームが勝利
・得点も違反も同じ場合、ロボットの重量が軽いチームが勝利
注目はボール回収機構だ。「ポールの上に置いてあるボール」が2つ、「棚の中に入っているボール」が1つ。そして「箱の中に入っているボール」が1つ。すべてのボールを集めて回収ポイントを狙うか、スピーディに一部のボールだけを回収してストライクを狙うか、戦略次第でマシンの構造も変わってくる。
チーム・ロボット紹介
各校、基本的に「エアポンプの圧縮空気をつかってシリンダを動かすボール回収機構」と「ベルトやタイヤの回転でボールを打ち出す射出機構」の組み合わせでマシン製作をしているようだ。
工学院大学「HRP」
工学院大学のホームチーム「HRP」が作ったのは、左右に2本ずつのエアボトルと木製パーツが目を引く大型マシン。ポールのボールをアームで引き寄せトレイで受ける機構と、2本のアームで棚のボールを掴み取る機構を搭載している。
東京工業大学「M1T」
2Lペットボトル7本を背負った大柄なマシン。パイロットもペットボトルを背負っていた(スペアか?)。棚からボールを取り出す開閉式のアームが特徴的。スムーズなボール回収動作が観客の目を引いた。
東京大学「永遠のnull」
ボールをまとめて回収し、3つのタイヤで打ち出す比較的大柄なマシン。カメラの目で画像認識し、自律動作の制御を行うとのこと。
東京大学「CleanGame」
ボール回収アームを操作するシリンダ用のエアボトルは小さなものが1本のみで、ひときわエコな印象の機体。すべてのボールを回収する機構も試作したが、重量制限などにひっかかり、諦めざるを得なかったとのこと。
東京大学「東大ボゥリング部」
かなりスピーディに動く。スラロームやボール回収も鮮やかで、射出準備や位置合わせの挙動に迫力のある華やかなマシン。テストランのトラブルを動画撮影し、LINEで共有して課題解決のディスカッションをしていた。
早稲田大学「オ○ゴーリ(オマルゴーリ)」
14kgの軽量マシン。コンパクトな形状ながら、1本のアームですべてのボールを回収するしくみになっている。
早稲田「メガオ○ゴーリ(メガオマルゴーリ)」
今大会参加チーム唯一の「エア未使用」。狙いの球を箱の中の1つに絞った。スムーズなライン取りのため、位置制御にベジェ曲線を利用することに初挑戦している。
ロボコニストの熱い1日まとめ
前置きが長くなったが、ここからは1日の流れと各チームのロボットたちの活躍を紹介していこう。
08:30
取材班は定刻に現場入り。まだ会場は嵐の前の静けさ。ガランとした会場には、STマイクロエレクトロニクス、Nucleo等、協賛企業のブースが! フィールド、観客席、検量場など、設備や会場の設営もきちんとしており、NHK学生ロボコンとよく似た本格的な印象だ。
09:00
受付開始。人も集まり、活気が出てきた。見学者には高専生も。デバプラを知っていてくれた(ありがとう!)
4校7チームが集まり、ピットで開梱と組み立てが始まる。とくにボールの回収と射出の機構に各チームの個性と工夫が見て取れる。
09:36
オリエンテーション開始
非常に詳しいルールが出ていたが、それでも色々質問が出る。質問者、回答者ともに真剣で、参加者全員の本気度と意識の高さを感じた。ここで対戦のグループ分け抽選が行われる。
10:05
計量開始。ブース専用の計測ツールを作っていた。重量制限は20kg。全チーム問題なく計量をクリアした。
10:40
受付順にテストランが始まった。スタートに手こずるチームや派手な動作で注目を集めるチームなど……参加者たちの表情にも力が入る。
13:00
開会 〜予選開始〜
・第一試合
【赤】早稲田大学「メガオ○ゴーリ」×【青】東京大学「CleanGame」
【セッティングタイム】
赤チームは慌ただしくセッティングに入った。青チームは最終確認だけで早めにフィールド外に出ている。セッティング終了、ロボットから手を離し、フィールドからアナウンスが入る。赤チームは整備不足か、不安げな印象。
【試合開始】
赤チーム:スタートラインから動けない。2分後に動き出したがスラロームを超えられず、リトライを繰り返す。
青チーム:スピーディにスタート、コース中盤でアームを展開する(かっこいい!)が、壁にあたってリトライ。その後もリトライを繰り返すがボール回収に至らず、タイムアウトとなった。
【試合結果】
両者得点・違反ともにゼロで試合終了となったため、重量の軽い赤チーム・メガオ○ゴーリが勝利。
・第二試合
【赤】東京工業大学「M1T」×【青】工学院大学「HRP」
【セッティングタイム】
両者最終確認、赤チームはPC画面も観ながら。青チームはボール回収トレイやマシン位置を微調整している。
【試合開始】
赤チーム、ボール回収トレイを出してからスタート。スムーズに3個回収し、1個射出してボトルを3本倒す。その後リトライ。リトライ後はボール回収には成功するものの、射出失敗。
青チーム、スタートできずリトライを繰り返す。試合終了10秒前に動き出したが、ボール回収前にタイムアップとなった。
【試合結果】
赤チーム・M1Tの勝利(ボール3個回収・ピン3本ヒットで90点)
・第三試合
【赤】東京大学「東大ボゥリング部」×【青】東京大学「永遠のnull」
【セッティングタイム】
両者落ち着いたセッティング。余裕をもって完了している。
【試合開始】
赤チーム、スピーディなスタート! 鮮やかにボールをアーム回収し、射出位置に移動しながらボールを装填する(かっこいい!)。安全ネットを超える弾丸シュートに会場が沸く。リトライ後にストライク達成。
青チーム、とてもスピーディなスタート! アームとトレイで鮮やかにボールを回収するが、スピード早すぎて壁に激突しリトライ。その後マシンが暴走、ゲートに激突し破壊してしまう。
【試合結果】
赤チーム・東大ボゥリング部がストライク達成で勝利(2分45秒)。青チームは試合の後、マシンの暴走が危険行為とみなされ失格となった。
・第四試合
【赤】東京大学「CleanGame」×【青】早稲田大学「オ○ゴーリ」
【セッティングタイム】
赤チーム、最終確認後、余裕をもって完了。
青チーム、マシン位置を丁寧にチェック、アームの動きなども最終確認。
【試合開始】
両者スムーズにスタート!
赤チーム、アーム展開が鮮やか→ポール前で止まってリトライ。
青チーム、ゆっくりアームを伸ばしながらスラロームを進むものの、進行中に振動音がし、リトライ。
その後、両者リトライを繰り返すがボール回収に至らず、4回目のリトライ後にタイムアウトとなった。
【試合結果】
両者得点・違反ともにゼロのため、重量の軽い青チーム・メガオ○ゴーリが勝利
・第五試合
【赤】工学院大学 HRP×【青】東京工業大学 M1T
【セッティングタイム】
赤チーム、慌ただしくケーブルまとめ、最終調整をしている。
青チーム、丁寧に機構やネジの確認をしている。
【試合開始】
赤チーム、スタート位置から動けないままタイムアップ。悔しい結果となった。
青チーム、スムーズにトレイを出しスラローム突破、ボール1つだけ回収、棚の中のボールもアームで回収成功。1回目のシュートでピンを3つ倒した後、ボール2つ目が詰まってリトライ。リトライ後、ボール1個を回収して打ち出し、ピンを2つ倒す、
【試合結果】
青チーム・M1Tの勝利(ボール2個回収・ピン5本ヒットで90点)。
・第六試合
【赤】東京大学「永遠のnull」×【青】東京大学「東大ボゥリング部」
赤チームが危険行為のため失格となり、青チームのみの試合となった。治具で慎重にスタート位置を整え、スムーズにスタート。2回目の射出でストライクを達成した(1分7秒)。
・第七試合
【赤】早稲田大学「オ○ゴーリ」×【青】早稲田大学「メガオ○ゴーリ」
【セッティングタイム】
重量対決勝利組。稼働にむけて両チームとも慌ただしく最終調整をしている。
【試合開始】
赤チーム、スタート直後にリトライ、その後もスラロームを超えられず、5回目のリトライ。後にタイムアウトとなった。
青チーム、コース設定を間違えたか? 動けないままタイムアウトとなった。
【試合結果】
重量勝負で赤チーム・オ○ゴーリが勝利。
予選の結果から、決勝トーナメントの順位が決まった。
1位 東京大学「東大ボゥリング部」
2位 東京工業大学「M1T」
3位 早稲田大学「オ○ゴーリ」
4位 早稲田大学「メガオ○ゴーリ」
5位 東京大学「CleanGame」
6位 工学院大学「HRP」
(失格) 東京大学「永遠のnull」
15:30
〜決勝開始!〜
ここからは勝ち抜きのトーナメントになる。
・第一試合
東京大学・永遠のnullチーム失格につき、試合消滅。工学院大学・HRPが不戦勝となった。
・第二試合
【赤】早稲田大学「オ○ゴーリ」×【青】早稲田大学「メガオ○ゴーリ」
【セッティングタイム】
赤チーム、慎重に機構部分をチェック。
青チーム、PCを接続し、ギリギリまで調整を続ける。
【試合開始】
赤チーム、スムーズにスタートするが、壁にひっかかりリトライ。進行中に振動音が出ている。棚のボールを取りに行く手前まで行くが、ボール回収には至らず。リトライを繰り返しているうちにタイムアウトとなった。
青チーム、最初のスラロームを超えられずリトライを繰り返す。自己位置の制御に苦労している様子。そのままタイムアウトとなった。
【試合結果】
重量勝負で赤チーム・オ○ゴーリが勝利。
・第三試合
【赤】東京大学「CleanGame」×【青】東京工業大学「M1T」
【セッティングタイム】
両者、余裕をもってセッティングを完了。
【試合開始】
赤チーム、スピーディなスタート。開始20秒でスラロームを超えるが、ボール回収に失敗してリトライ。開始2分10秒、2回目のリトライでボール回収に成功したが、射出位置の手前でボールが落下。リトライ後にタイムアウトとなった。
青チーム、開始40秒後にシュート1打目でピン4本、2打目で2本倒しリトライ。リトライ後ボール回収・射出を行うが、ピンを倒すまでには至らずタイムアウト。
【試合結果】
青チーム・M1Tの勝利(ボール2個回収、ピン6本ヒットで100点)。
第四試合(準決勝)
【赤】東京大学「東大ボゥリング部」×【青】工学院大学「HRP」
【セッティングタイム】
赤チーム、ケーブル調整している。
青チーム、足回しを中心にセッティング。
【試合開始】
赤チーム、相変わらずスピーディなスタート。安定したボール回収、開始後30秒と1分12秒で合計9本のピンを倒す。
青チーム、機体が回転してしまっている。自己位置制御に問題が発生したか? ボール回収に至らず、タイムアウトとなった。
【試合結果】
赤チーム・東大ボゥリング部の勝利(ボール2個回収・ピン9本ヒットで130点)。
第五試合(準決勝)
【赤】早稲田大学「オ○ゴーリ」×【青】東京工業大学「M1T」
【セッティングタイム】
両者落ち着いたセッティングタイム。余裕をもって完了させる。
【試合開始】
両チームともに順調なスタート。
赤チーム、スタートはスムーズだが、スラロームに手こずる。4回のリトライのうちに徐々にボール回収に近づくが、制限時間内に回収ができず、悔しい結果となった。
青チーム、速い。ボールを3つ回収し、2打シュートして8本ヒットさせる。試合終了5秒前、3打目で1本ヒットするがVゴールならず。
【試合結果】
青チーム・M1Tの勝利(ボール3個回収、ピン9本ヒットで150点)。
第六試合(決勝)
【赤】東京大学「東大ボゥリング部」×【青】東京工業大学「M1T」
【セッティングタイム】
赤チーム、治具をつかった正確な位置出し。
青チーム、上部機構を中心に落ち着いたセッティング。
両者余裕をもってセッティング完了。
【試合開始】
0分0秒:東京大学チームから「ロボテックコール」が湧き上がる!
0分12秒:両者ボール回収。
0分22秒:赤チームがシュートし、7本ヒット。
0分33秒:青チームもシュート、8本ヒット。
1分00秒:赤チームが2回目のシュートに成功し、ピン2本倒す。残り1本!
1分17秒:青チームが2回目のシュートに成功し、ピン1本倒す。残り1本!
1分42秒:赤チームが3回目のシュートで最後の1本を倒し、ストライク達成!
【試合結果】
赤チーム・東大ボゥリング部がストライク達成で勝利(1分42秒)。
16:30
すみやかな設営撤収のあと、閉会式へ。優勝チームのコメントや協賛企業のスピーチが行われた。撤収作業は非常にスムーズだった。手の空いた参加者が自主的にサポートに入り、あっという間にフィールドが片付いていく。モノ作りに慣れた人たち特有の、息の合った動きに感じ入った記者。
後半に続きます!
今回の連載の流れ
第1回:第一回 関東春ロボコンレポート(前編)〜新人ロボコニスト限定のロボット創造力バトル!全試合レビュー(今回)
第2回:第一回 関東春ロボコンレポート(後編)~勝ち続けるために…ロボコン主催校代表インタビュー