学生ロボコン2019は、前日テストランが始まっている。
今回の会場は、初の日本工学院専門学校・片柳アリーナ。これまでと同じ大田区蒲田だが、ぐっとJR蒲田駅に近くなった。天候は快晴、30度越え。9:30には参加チーム受付が開始。一番乗りは、また東大。館内は往年の代々木と同じ、フィールドとピットが地続きになったタイプ。建物、設備ともに新しく、快適に過ごせるだろう。今のところ、撮影用の強い照明は見当たらない。
各チームは慣れない場所に頭と体をなじませつつ、もろもろのタスクをこなし、テストランに入った。記者が見ることができたシーンだけで恐縮ながら、そのレポートを行いたい。
なお、ピットの模様は、下記記事でも順次公開している。
リアルタイム更新 https://deviceplus.jp/events/nhk-robocon2019-realtime-testrun/
テストラン(ロボット調整)1番乗りは、青フィールドに富山大学。東京大学も続いて赤フィールドに、と思われたが、マシン調整が入り豊橋が先頭に。
富山MR1は順調な滑り出し。MR2はコース壁に突き当たるようなこともあったが、なかなかのスピードを見せている。シャガイ投げも特に問題なさそうに見える。
少し遅れて入った、いつものターコイズポロシャツの豊橋。今回は4脚かつルール上も禁止ということで、吸引機構は封印。MR2はロープをくぐり抜ける、低いタイプ。走行時にかなりの音を立てる。実フィールドを計測しながら、各障害の確認を行っていた。全体として、オーガナイズされた、精度の高そうなマシン調整時間。そして最後には、ウーハイ。
青フィールドには東京工科。『サイエンスゼロ』でも取り上げられた、MR2の独自の歩行機能。2本のレールをクロスさせ、移動距離を生む。砂丘エリア(階段)及びロープを越えるのに苦労している姿も見られた。MR1はシャガイ投げを繰り返している。
ここで赤ゾーンのロープの補修が入る。テストラン開始前にも、ロープの固定に美術スタッフが時間を使っているように見えた。やや難しい造作なのか? しかし間もなく終わり、三重大学がフィールドへ。
三重は馬のような見た目を目指したとのこと。確かに、4脚、それも力強い生物のようなフィーリングがある。今回の「4脚」というルールに関して、各チームが多くの知恵を出したと思うが、馬はもっともストレートなモチーフだろう。これを狙ったことに敬意を表したい(もちろん、全てのアイデアに、だが)。試走は慎重に行っていた。
青ゾーンでは熊本大学。そのMR2は、赤い樹脂製パーツが目立つクモ型(と、ここでは便宜上分類させていただく)。馬形とは別の「生物感」があり、見ていて楽しい。足を器用に操り、ロープを無事に越えていた。
続いて青ゾーンは新潟の試走。MR2は大ヒット世界的SF映画を彷彿とさせる仕上がりの4脚。確かに、4足歩行。ややロープに苦戦していたか?
赤ゾーン、九州大学。フィールド横までマシンを移動させたが、一旦調整へ。代わりに東京大学が再度エントリー、フィールドに現れる。ブラックのポロシャツは去年のものと思われる。初回からほぼ完璧なテストラン。センサチェックは行っていたが、おそらく、今のところ最も完成度が高い試走だ。こちらも豊橋と同様、マネジメントされた時間。シャガイ投げも幾度となく繰り返した。ほぼ100%の精度。
赤ゾーンには、早稲田が現れる。早稲田MR2はクローラー型とでも呼ぶべきか。接地面を長く取った脚を、左右交互に前に出し進むタイプ。MR1はかなりのスピードを持っているが、投げたシャガイがフィールド外に出てしまうこともあった。
青ゾーンには横浜国立。やはりクローラー型のMR2。こちらは全体の車高も低く、ロープの下をくぐる、豊橋と同じ機構。エンコーダ、ライン、測距センサを使っているようだ。ややコース取りに苦労したシーンもあった。
続けて青ゾーンには、立命館。2案で決めかねたというMR2は、なかなか動き出せない。が、動き出すと……テオ・ヤンセン(リンクかどうかはわからないが)的な不思議なフィーリング。楽しい。
赤ゾーンに現れたのは京都工芸繊維。MR2の脚は華奢に見える。エアならではの挙動と言えるか、メリハリのある伸縮ができる。終了間際に、その挙動を見せてくれた。「歩いてる感」が強い。
ここまで、約1時間。現在13:26。
赤ゾーン、長岡。長岡チームには高専出身者がいるようだ。歩行的なリンク機構に一日の長があるか。そのMR2「スレイプニル」の脚は、グリーンとオレンジがまぶしい。これが高速「回転」する。砂丘もロープも、まるで何もないように通過できる。試走は初めから試合モード。ややミスも出たが、MR1「ルテア」、MR2ともにかなりの完成度だ。ただ、シャガイ投げにややバラつきがあったか……? 調整が楽しみな仕上がりだ。
この間、青ゾーンにロボットは現れない。その他のチームは、調整に苦労しているのか。
赤、京大。15年ぶり、と聞いたが、実質「初」と言えるのではないか。とにもかくにも、この場にたどり着いたことをお祝い申し上げたい。MR2は、小さく、軽そうな仕上がり。クローラー型で、ロープや坂に苦労する姿がありつつも、それでもいつの間にか障害をクリアし、ゴール地点の山エリアまでたどり着いていた。基本的な設計思想の有効度が高い、ということだろうか。MR2のシャガイ投げは、アームごと伸ばす。ふわっと、狙った面を出しやすいイメージだ。
さらに赤、九州大学。こちらもMR2はテオ・ヤンセンを思い出させる歩行リンク。ロープに苦労するも、自力で越えられる位置を探し続ける姿が「いじらしい」と感じてしまう。MR1シャガイ投げの精度も高い。
赤、仙台名取。今年も学生ロボコンの場に立ってくれた、唯一の高専チーム。高い技術力に期待が高まる。MR2はハニカムプラダンボディ。わずか6kgとのこと。そしてカメラモジュールによる自己位置制御。初手から試合形式の通しテストラン。ゲルゲ受け渡しまではスムーズ! が、MR2が砂丘手前で停止してしまう。その後のリスタートまではやや時間がかかる。
青、九州職業能力開発大学校。MR1はゴリゴリと床に響くオムニホイール。MR2は各脚にサーボ付き「関節」を2つ備える。間違いなく「歩いている」印象だ。その割には、片手でさっと持ち上げることができてしまう重さ。
赤、大阪大学。対して大阪大学のMR2は、一見して歩くロボットには見えなかった。が、もちろん間違いなく4脚走行。ワニのような歩き方、というのが良いか。ロープを越える際に、ロープを踏んでしまい転倒、というシーンが見られた。やはり柔らかいものを扱うのは難しい。
青、東京工業大学。今回、デバプラ編集部には、東工大、東大の2017年選手が加わっている。東工大のMR2は、間違いなく4脚動物。ウマ。その脚を見ると、あのBoston DynamicsのBigDogを思い出さずにはいられない。横っ腹を力一杯押しても姿勢を立て直すのでは、という錯覚。ただ、長い時間MR2が動くことはなく、未だ調整が必要、という状態に見えた。
赤ゾーン、金沢工業。MR1はさすがのスムーズさ。シャガイ投げも確実に狙った面を出す。しかしMR2はなかなか動き出せない。
青、東京農工。毎度のハワイアンシャツ。写真を見たとき一発でわかるので、編集部的にもうれしい仕様。そのMR2は……、ジャンプ機体! 小刻みな方向転換、位置決めも小ジャンプで行う。これは本番が楽しみ。
青、全チームで最後の登場になったのは、慶應。初出場。やはり編集部一同、拍手を送りたい。そのMR2は、クモ型。スピードこそ抑えめだが、確実な動作! 砂丘、ロープ越えも一発成功! これはすばらしい。大いに会場を沸かせてくれるだろう。
ものつくり大学は、やや作業が遅れ、2巡目以降のフィールド入りになりそうだ。
現時点で14:25。ものつくり大学を除くすべてのチームが、1回目の調整時間を終えた。これから、オフィシャルによる「ロボット審査」や再度の調整時間に入っていく。