ロボコン

NHK学生ロボコン2021 出場ロボット解剖計画②

大阪大学 / 富山大学

NHK学生ロボコン2021出場校のロボット開発の経緯、コンセプト、自慢できるポイント、戦略などをまとめた「出場ロボット解剖計画」を4回に渡りお届けします。
第2回は、大阪大学 Robohanと富山大学 TomiRoboです。

お読みいただいた方にとって、これからのロボコンが楽しくなり、技術的なヒントが掴める一助となれば、これ以上うれしいことはありません。
お忙しい中ご対応頂いた各チームの皆様、ご協力頂き、誠にありがとうございました!

 

目次

  1. 大阪大学 Robohan
  2. 富山大学 TomiRobo

 

大阪大学 Robohan

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ロボットのコンセプト、設計思想を教えてください

「できるだけ堅牢性が高く、多少乱雑に扱っても壊れない機構」を目指しました。
コロナ禍によりいつ活動制限がかかるかわからない、機構開発に大人数を割くことができないという状況の中、できる限り勝利に近づくには、壊れにくくメンテナンスで常に機構班が張り付く必要がない、練習を繰り返しても修理が必要のない機構を設計することが良い、という思想で設計しています。
実際、機体完成後から練習中、当日まで大きな機構メンテナンスをすることはありませんでした。TR・DRともに設計思想通りの動きをしてくれたように思います。

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スローイングロボット

 

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ディフェンスロボット

 

こだわったポイント、⾃慢のポイントを教えてください

こだわりのポイントは、TRの投擲機構2本を中心に据えて投擲時はカニが腕を挙げたような形になる機構配置、ポットを回転するため外からモーメントがかかりやすいDRの重心の低さです。TRが腕を前に振り下ろして矢を5本取得した後、2本の腕を振りかぶって投げるという一連の動作が気に入っているので、自慢したいところです。また、DRはポットを左右に振っても機体が浮いたりしないよう、重心を低くしています。機体に剛性を持たせるための頑丈で重い構造や、エアシリンダなどの重いアクチュエータをできるだけ低い位置に配置することで低重心を実現しています。

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ディフェンスロボット機体裏

 

戦略について教えてください

戦略のコンセプトとしては、「堅実な勝利を」です。勝ち方としては、グレートビクトリーをする方法、時間いっぱいまでグレートビクトリーされないようにしつつ相手よりも多く得点を取る方法とありましたが、今回大阪大学の戦略は後者でした。TRは全てのポットに矢を入れていくのではなく自陣に近く確実に入れられるポットを集中的に狙うことで相手より得点を伸ばしつつ、DRは相手がグレートビクトリーを狙ってくるならば妨害し、そうでないならば一番自陣に近いポットを確保することでTRの得点率を確実に向上させることに専念しました。

特に重要なデバイス、パーツを教えてください

機構として重要なパーツはTRに使っているコアレスDCモーターです。この投擲機構にははじめ違う種類のモータを使っていました。ただそのモータには、トルクはそこそこで出力が高いという特性がありましたが、この形の投擲機構に利用するにはトルクが足りず、起動時に必要な電流も多いのでうまく飛びませんでした。コアレスDCモータに換えたことで、高い加速性能と低い起動電流を実現、大幅に飛距離を伸ばすことができ、TRの堅実な得点力を支えています。

 

富山大学 TomiRobo

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左:スローイングロボット(TR)
右:ディフェンスロボット(DR)

 

ロボットのコンセプト、設計思想を教えてください

スローイングロボット(Throwing Robot(TR))

TRは得点を稼ぐことが役割のロボットです。主な機能として、①矢の取得、②矢の受け渡し、③矢の発射、④足回りがあります。

①矢の取得
5つのアームがあり各アームにサーボモータを使用して動力を直に伝え、矢をそれぞれ保持します。各アームは同時に動かすことで5本の矢を一度に取得することができます。

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矢の回収機構

 

②矢の受け渡し
機構下部にあるラックアンドピニオンを利用して①の機構全体を移動させ、各取得アームを発射機構に合わせます。DCモータを2つ使用して①のアーム全体をロボット内側へ回転させ、①のアーム
を開くことで発射機構へ受け渡しをします。

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矢の受け渡し機構

 

③矢の発射
DCモータを動力とし、発射アームを高速に回転させることで矢を発射します。矢の落下位置や姿勢はモータの出力と軸の回転角度で自在に変更することができます。

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矢の発射機構

 

④足回り
足回りは4輪オムニホイールを採用しました。軽量で取り回しに優れた構造になるよう設計しています。

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足回り機構

 

ディフェンスロボット(Defensive Robot(DR))

DRは味方TRのサポート支援、敵TRの妨害が役割のロボットです。主な機能として、①ハンドルの保持、②回転テーブルの受け止め、③飛来する矢の妨害、④足回りがあります。

①ハンドルの保持
上下に2つのアームを設置しエアシリンダで同時に開閉できようになっています。またリンク機構を採用したことでアーム開閉時に前後移動しません。つまりポットに触れず確実にハンドルを掴むことができます。

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アーム機構

 

②回転テーブルの受け止め
前面にMDF製のガードを設置しています。これにより、ロボットがポットに触れないよう回転する回転テーブルを受け止めることができます。

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DR全体(CAD設計)

 

③飛来する矢の妨害
DR上部に妨害ネットをつけました。アクチュエータなしで最も効果的な構造であり、大きくて丈夫なDRの特性を生かして得点妨害することができます。敵TRが飛ばした矢の散乱を防止する目的もあります。

④足回り
足回りは4輪メカナムホイールを採用しました。

こだわったポイント、⾃慢のポイントを教えてください

こだわったポイントは2つあります。

1つ目はTRの発射方法です。弊チームではモータ駆動による矢の発射を採用しました。モータの出力と発射時のアーム停止角度の2つのパラメータを調整することで、同じ位置から直線上にあるポットをそれぞれ狙うことができます。この2つのパラメータは制御側で自由に変更することができるので、試合前の調整時やテストラン時に矢の落下位置や姿勢を修正することが簡単にできます。

2つ目はDRの役割です。弊チームのDRはTRのサポート支援を主目的としています。つまりTRが発射した矢がポットに入るよう回転テーブルを移動させます。それによってTRの発射した矢の落下位置が少しずれてしまってもポットに入れることができます。この目的を逆に利用して敵TRが発射した矢がポットに入らないよう回転テーブルを動かすこともできます。

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TR全体(CAD設計)

 

戦略について教えてください

試合開始からツインが初めて達成するまでは以下の手順で行います。

①試合開始後TRは自チームゾーンのⅠ型ポットを狙う。
②TRが一本目の矢を発射している間、DRは前方Ⅱ型テーブルを固定する。
③TRは次に固定されている前方Ⅱ型ポットを狙う。
④自チームゾーンのⅠ型ポット、前方Ⅱ型ポットにそれぞれ矢が二本ずつ入るまで①~③を繰り返す。

その後、TRは矢の補充をしてから他のポットを狙います。基本的には相手チームゾーンのⅠ型ポットとⅢ型ポットか、相手チームゾーンのⅠ型ポットと後方Ⅱ型ポットの組合せでツインを達成させます。TRが矢を発射している間、DRは主にTRのサポートを行います。矢が入りやすいように狙っているポットのテーブルを動かします。またTRがⅠ型ポットを狙っている間、DRは保持している前方Ⅱ型ポットに相手チームの矢が入らないよう回転テーブルを動かします。
弊チームはグレートビクトリー達成を目指していますが、相手チームの妨害で難しいと判断した場合は得点の大量獲得を目指します。具体的には自チームゾーンのⅠ型ポットと前方Ⅱ型ポットを交互に狙います。

特に重要なデバイス、パーツを教えてください

今回TomiRoboではロボットの制御にラズパイを使用しました。搭載したのはDRだけでしたが、遠隔でPCからDRに搭載しているカメラの映像を見ながらタッチパネルで操縦することができます。
今後はより精度の高いロボット制御ができるようラズパイやPCを搭載したロボットを製作していく予定です。

NHK学生ロボコン2016 出場ロボット解剖計画
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