2020年の学生ロボコンはコロナ禍で開催見送りとなった。世界中のロボコニストがさまざまな想いでその判断を受け入れたが、今年は延期と再検討の上、開催が決定した。ABUロボコンも現時点では12月に開催される予定だ。制限の多い中でもロボット開発を諦めない、ロボコニストたちの熱い戦いを見逃すな!
学生ロボコン2021は2021年10月10日、東京都大田区にある日本工学院専門学校の片柳アリーナで開催される。残念ながらデバプラ編集部はリモート取材となるが、afterコロナのロボコンに全力で伴走する。
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目次
- 学生ロボコン2021、競技テーマは「投壺 ~トゥフー~」
- 1. 得点ロボット「TR」と妨害ロボット「DR」
- 2. 得点条件と制約
- 3. 妨害ロボットができることと制約
- 4. 勝利条件
- 見どころは「緻密で複雑な制御」の妙か
学生ロボコン2021、競技テーマは「投壺 ~トゥフー~」
中止となったABUロボコン2020では、フィジーを舞台にラグビーをテーマにした激闘が見られるはずだった。今年は舞台を中国に移し、テーマも中国の遊戯「投壺」となる。
投壺は、中国の伝統的な「おもてなし」だ。もとは客人に矢を射ってもらう歓迎の儀式だったが、次第に壺に矢を投げ入れて、その本数や入り方で点数を競うゲームになった。
バトルフィールドも中国の伝統的なモチーフである、太極図に似ている。赤と青に分かれた中を、最大4機のロボットたちが駆け回るぞ!
競技時間は3分間。ルールや得点条件・勝利条件の詳細は以下の通りとなる。
1. 得点ロボット「TR」と妨害ロボット「DR」
各チーム、最大2機のロボットを使用できる。1機は「アウターエリア」から、5つの「得点ポット」に向かって矢を投げ入れ、点を獲得する「スローイングロボット(TR)」で、もう1機は自軍のインナーエリアの中で相手の得点獲得を妨害する「ディフェンスロボット(DR)」だ。いずれのロボットも、手動でも自動でも構わない。ゲームスタート時点では各チームに20本の矢が割り当てられ、両機ともそれらを使って得点や妨害をする。
- 1分間のセッティング時間中に得点ロボットにセットできる5本
- ゲームスタート時点で、アウターエリアの「アローラック」に設置される5本
- アローラックが空になったらチームメンバーが補充できる10本(5本ずつ、2回まで補充可能)
詳しくは後述するが、ゲーム中に相手チームの矢を奪って自チームの矢にすることも可能だ。
2. 得点条件と制約
得点ロボットがアウターエリアから投げた矢がポットに入れば「1点」、同じポットに2本の矢が入れば「ツイン」達成で「4点」獲得となる。ただし以下のような制約がある。
- 矢は一本ずつ投げ、先に投げた矢が着地するまで次の矢は投げられない。
- 相手チームの色のポットに入った矢は、相手チームの得点となる
- セッティング時に搭載した5本を投げ終えるまで、アローラックの矢を取りにいけない
- 同じポットに2本続けて矢を投げ入れることはできない
- ツインはポット1つにつき2回まで。たとえば同じポットに6本の矢が入っていれば「ツイン(4点)×2回+2点」で10点の獲得となる
わかりにくいかもしれないが、整理すると得点ロボットはダイナミックな「一斉発射」や「連射」が不可能となる。アウターエリアを縦横無尽に走って5つのポットに1本ずつ矢を投げ入れるような、かなり足回りが忙しいバトルになるかもしれない。
3. 妨害ロボットができることと制約
妨害ロボットは、自軍のインナーエリアに入って得点ロボットのサポートや相手チームの妨害ができる。妨害ロボットのスタートゾーンはアウターエリア内、得点ロボットから対角線上にある。スタート後、妨害ロボットはバッフルを乗り越えたり、バッフルのない開口部を通ったりしてインナーエリアに入れる。
妨害ロボットができることは以下となる。
- アウターエリアから矢を投げ入れて得点する
- インナーエリアに落ちた矢を拾って、自軍の得点に使う
- 矢を1本だけ持ち、それを振って相手の得点ロボットが投げた矢を打ち返す
- 相手が投げた矢を自分の機体に当てて、得点を妨害する
- ポットが乗っている回転式テーブルのハンドルをつかみ、回転させて得点を妨害する
つまり、相手チームの投げた矢を地面に落とし、それを奪って自軍の矢にすることもできる。アウターエリアに出れば得点ロボットとして振る舞うことも可能なトリックスターだ。ただし、相手の妨害のためとはいえ「回転テーブルを故意にぶつける」「ポットにふたをする」「ポットから矢を抜く」といった行為は違反となる。
妨害ロボットが完全にインナーエリアにいる時のみ、インナーエリア内のリトライゾーンからリトライができる。それ以外の場合、アウターエリアのスタートゾーンからのリトライとなる。
4. 勝利条件
3分間の競技時間中に「全てのポットでツイン」を達成すると「グレートビクトリー」が成立で勝利チームが確定、試合終了となる。それ以外の場合は、以下の優先順位で勝者が決まる。
- 3分間の競技時間終了時点で合計得点が高いチーム
- 合計得点が同じ場合「回転テーブルに載っているポット」の合計獲得点数が高いチーム
- 中央の回転テーブルに載っているポットの得点が高いチーム
- ロボットの合計重量が軽いチーム
ルールはこちらの動画からも確認できる。
見どころは「緻密で複雑な制御」の妙か
これまで「投げて、得点する」というタイプのゲームでは、ダイナミックな一斉射出や華やかな連射をするロボットが活躍していた。しかし今回は「前の矢が着地してから次の矢を投げる」「同じポットに2本続けて矢を入れてはいけない」などの制約から、緻密な制御によって的を狙うバトルが予想される。ロボコンファンであれば「あのチームは強そうだ」など、想像が膨らむのではないだろうか。記者は個人的に、精密機構に強みを持つ京都工芸繊維大学や新潟大学に注目したい。また、どんな状況でも「勝つ」ロボットを作り上げてくる東京大学や東京工業大学、前回優勝校である京都大学からも目を離せない。さらに、いつも完成度の高いものつくりのワザを見せてくれる常連校やこの状況で力を見せた久し振りの出場校と、多彩なチームが対決する。
各チームどのような戦略と制御の考え方に基づいてロボットを作り上げてくるか、このルールではどんなロボットが「強い」のか。2年ぶりのロボコンでも熱気は変わらない。
学生ロボコンで優勝したチームは、12月に中国の山東省青島市にある即墨で開催されるABUロボコンへの挑戦権を得る。現時点ではオンライン開催が予定されている。
開催概要は以下だ。
NHK学生ロボコン2021 開催概要
開催日:2021年10月10日(日)
場所:片柳アリーナ(日本工学院専門学校)
公式サイト:http://www.official-robocon.com/gakusei/