2021年10月10日、2年ぶりのNHK学生ロボコンが開催された。当初は6月13日に予定されていたが新型コロナウイルス感染症の影響で9月8日に延期、その後再度延期され、10月10日に開催が実現した。会場は無観客、各校の応援団もデバプラ取材班もリモートで参加となった。
本当に開催できるのか、どうすれば安全に開発を続けられるのか、参加していいのか……とても苦しく迷いのある中、ギリギリの判断が続いた末の開催だった。まずは参加チームと参加できなかったチームやメンバー含む、すべてのロボコニストに最大級の敬意を評したい。
リアルタイム速報はデバプラTwitterアカウントから発信したためもうご存知の方も多いだろう。本稿では2年ぶりのロボット対決の全試合を前編後編の2回に分けて一気に振り返るぞ!
ゲストはデーモン閣下、出身校である早稲田大学の出場に喜んでおられた。ロボコン応援団長のこじるりこと小島瑠璃子さんに続き、解説はレジェンドロボコニストとして東大OBの河村洋一郎さん、薮内健人さんが出演した。
目次
会場・開会式
会場はいつもの通り片柳アリーナ。試合フィールドの奥の、開けた場所にピットがある。各チームとも、充分な距離を置いており、換気もよさそうだ。また、ピットクルーの人数が最小限に絞られているのも分かる。感染対策に「万全」はないが、最大限のリスク回避が図られていることが察せられた。
開会式も、いつもであれば1校ずつの入場や個性的溢れるデモンストレーションを見られるところだったが、今回は簡素だ。各校が集合した状態で、開会の挨拶と選手宣誓が行われた。
予選第一試合
Aグループ
- 赤:早稲田大学 閣下の出身校
- 青:金沢工業大学 いつも安定した強さを見せる強豪校
2年ぶりの初戦、いつもの「3、2、1、Go!」の合図とともに、両チームともスムーズに走り出した。一番槍は金沢工業大、そのまま流れるようにツインを達成する。早稲田大は中盤からリトライの繰り返しになってしまう。これまでなら苦しい戦いを支えてくれた観客席からの応援もない。実況の焦る声だけが響く……3分間の試合を制したのは金沢工業大だった。高い放物線を描く軌道は河村さんによれば「上から入射するほどポットインしやすくなる」とのことだ。
【結果】8-0 金沢工業大学の勝利。
Bグループ
- 赤:大阪大学 回転防御のDRが華やか
- 青:東京工業大学 DRが投擲機構を持ち、バッフルを乗り越える足回りも特徴的
スタート直後に大阪大が2点獲得、東工大はTRのスタートが少し遅れるが、1点を取って追う。緊張感のある僅差の戦いだ。
試合開始から2分弱で、大阪大がツインを達成し、その後も順調に得点を伸ばす。東工大はDRが頑張っているが、TRに不具合がある様子だ。TRがリトライを繰り返す間に3分間の試合が終了した。例年の東工大には見られない、苦しい戦いとなった。
【結果】9-1 大阪大学の勝利。
Cグループ
- 赤:富山大学 防御用の黄色いネットが目立つDR
- 青:立命館大学 オムニホイール用いた機敏な足回りでなんだかご機嫌な動きをするDR
両者スムーズな動き出し、立命館大がまず1点を先制する。富山のDRがポットのテーブルを回して妨害しており、いい動きだ。立命館大のDRは矢を振り回すタイプの防御が華やかだ。拮抗した戦いに競り勝ったのは立命館大だった。
薮内さんが立命館大のTRについて「矢の射出角度が浅い。軌道が低いため入射が難しくなるはずだけれど、それでもうまく入れている。精度が高い」と解説する。
【結果】3-1 立命館大学の勝利。
Dグループ
- 赤:千葉大学 直径15cmの3型ポットにも得点可能なTR、グレートビクトリーを狙える
- 青:工学院大学 前日にロボットの重量オーバーが発覚、対応に追われている
スタート直後、千葉の矢が勢いよく打ち出される。DRの足回りが機敏だ。工学院大のDRは矢をぶんぶん振るタイプの防御機構で頑張っているが、防御されていないポットに千葉大がどんどん矢を入れていく。
千葉大のTRは手動ロボットとのことだが、打ち込みの精度が素晴らしい。実況、解説ともに「ゾーンに入っている」「本当に手動?」と手放しで絶賛。工学院大はTRが矢を打ち出せず、得点獲得に至らなかった。前日の調整不足が痛い。
【結果】8-0 千葉大学が勝利。
Eグループ
- 赤:京都大学 前回(2019年)優勝校
- 青:新潟大学 いつも精度の高い制御を見せてくれる。今回のルールとは相性が良さそうだ
スタートと同時に両チームのDRが飛び出した。TRの動きも早く、新潟大が22秒で先制する。京都大のTRはスタート直後にリトライするが、その後動きが止まってしまう。ピットクルーがPCを見ながら必死の調整をしている様子だ。
新潟大は足回りも美しく、ツインを2つ達成した。やはり強い!
【結果】9-0 新潟大学が勝利(試合直後は12-0だったが、その後公式発表で9-0)。
Fグループ
- 赤:筑波大学 相手のグレートビクトリーを防ぐ作戦を主とする、8年振りの出場
- 青:東京工科大学 防御重視でグレートビクトリーを狙わず、得点で勝つ作戦を取る
スタート直後に工科大が気持ちよく矢を放つ。どんどん打ち出して、試合開始20秒でツインを達成。DRも矢をうねうねと回し、良い妨害動作をしている。筑波大はリトライが続き、矢を打ち出せない(記者の地元なので頑張ってほしい……)。東京工科大の射出の精度が高い!
結局、3分間の試合中に東京工科大が20本の矢を全て打ち切り、20点という大量得点を果たした。
閣下「声掛けやチームワークも良い」、東京工科大これは強いぞ!
河村「本番のシミュレーションを重ねてきた、これは強い」。
薮内「20本中10本入るのはすさまじい精度」。
【結果】20-0 東京工科大学の勝利。
予選第二試合
Aグループ
- 赤:金沢工業大学 初戦でツイン達成、勝てば決勝進出が確定する
- 青:京都工芸繊維大学 精密制御といえば京都工芸
初戦を制した金沢工業大が、本戦でも先制する。京都工芸繊維大はTR、DRの足元がLEDで輝くゲーミング仕様だ。DRはいい動きをしているが、TRが思うように動かない様子、暴走してバッフルに激突するシーンもあった。
金沢工業大は初戦で高い放物線を描く軌道が美しかったが、今回は得点に苦労している。3分間の試合が終わり、金沢工業が得点で競り勝って決勝進出を決めた。京都工芸大、強みを観せられず悔しい結果となった。
【結果】2-1 金沢工業大学の勝利。
Bグループ
- 赤:東京工業大学 初戦で阪大に負けており、後がない
- 青:豊橋技術科学大学 TRとDRの連携でロボット制御し、グレートビクトリーを狙う
決勝でも花形カードになることの多い強豪校対決だ。第1試合では東工大の調子が悪いように見えたが……。
試合開始と同時に、豊橋科学技術大が矢をどんどん打ち出して得点していく。実況も熱い、コメントがTV放送用だ! 東工大が思うように動けない中、試合開始から1分2秒で豊橋科学技術大が全ポットにツインを果たし、グレートビクトリーを達成した。
豊橋科学技術大のあまりの強さに、閣下からは「軍用に使えるんじゃないの?」と危ういコメントも。ロボコンファンには驚きかもしれないが、東工大は2連敗で予選敗退となった。
【結果】グレートビクトリー-0 豊橋技術科学大学の勝利。
Cグループ
- 赤:立命館大学 第1試合ではTR、DRともに安定した強さを見せた
- 青:東京大学 優勝常連校の強豪、見るからに強そうな低重心
スタート直後に東大が1点を取る。立命館も追うが、東大のDRがヌルヌルとイイ動きをしていて厄介だ。しかし東大のTRが少し不調か? 2分半で両チームリトライ。東大も「打てば入る」くらい強いが、例年の圧倒的な強さからは不安が残る展開だ。
とはいえ強く、試合終了の時点でツインも達成、9点を獲得していた。
【結果】9-1 東京大学の勝利。
Dグループ
- 赤:工学院大学 初戦では調整不足に泣いた
- 青:長岡技術科学大学 ルールブックを読み込んだ上でトリッキーな戦略を立ててきているという
スタート直後、長岡技術科学大のDRがインナーエリア内で独特の「三つ子」構造に展開する、可愛い! ポットテーブルを先に占有することで、相手のDRにポットを掴ませない作戦だ。
長岡技術科学大はTRも強く、どんどんツインを達成していく。実況コメントも熱い。49秒でグレートビクトリー達成を決めた。3分間の試合時間を目一杯使って工学院大も奮闘したが、得点に至れなかった、悔しいが工学院大はここで敗退となる。
【結果】グレートビクトリー-0 長岡技術科学大学の勝利。
Eグループ
- 赤:新潟大学
- 青:京都大学
初戦では新潟大が強かったが京大、得点できるか。スタート!今回も得点は新潟が早い。京大は初戦に続きリトライを繰り返している。苦しそうだが、2分20秒で初得点! 試合は精度の高い射出で新潟大が勝ち、決勝進出を決めた。前回優勝校である京大は予選敗退となったが2点を獲得し、一矢報いる底力を見せてくれた。お疲れ様でした!
【結果】11-2 新潟大学の勝利。
Fグループ
- 赤:東京工科大学
- 青:筑波大学
初戦は東京工科大が大量得点で勝利している。
スタートから東京工科大が速い。サクサクとツインを達成していく。筑波大はアローラックからの装填に苦しんでいる様子だが、DRはしっかりを3型ポットを守っている。
東京工科大はグレートビクトリーを狙わず、大量得点で勝ち進む作戦を採用しているため、筑波大のDRが守っていないポットにどんどん矢を入れていき、決勝進出を決めた。筑波大学は予選敗退となったが1点を獲得、次回大会への大きな一歩を手にした。
【結果】21-1 東京工科大学の勝利。
予選第三試合
Aグループ
- 赤:京都工芸繊維大学
- 青:早稲田大学
金沢工業大が決勝進出を決めているが、両校とも1勝を持ち帰りたい。こじるりが「きっとみんな必死で調整していたはず、不安の中で戦っている」と、ピットのロボコニストたちにもエールを送る。
試合スタート。早稲田、スタートと射出に成功!1点を獲得してリトライに入る。京都工芸繊維大はリトライ中に、何かハーネスを調整している……苦しいか? 早稲田大はリトライ後、TRとDRが激突する事故が発生。制御に苦労している様子も見える。
早稲田大が1点をもぎ取って勝利した。精密な機構や制御に強みを見せていた京都工芸繊維大だが、本年は悔しい結果となった。
【結果】1-0 早稲田大学の勝利。
Bグループ
- 赤:豊橋技術科学大学
- 青:大阪大学
豊橋技術科学大は、Dグループ長岡の「49秒グレートビクトリー」を強く意識している様子だ。スタートと同時に矢を打つが、その後TR、DRともにリトライに入る。初戦よりは得点に手間取っている様子だ。とはいえ阪大がリトライしている内にツインを達成している。ポットインが見ていて気持ちいい。
阪大のDRをすり抜けて豊橋技術科学大が得点を重ね、2分16秒でグレートビクトリーを達成して決勝進出を決めた。しかし、足回りにトラブルがあったという。現場の空気が張り詰めている。
阪大は予選敗退となったが5点を獲得。手堅い得点とDRのいい動きが印象に残った。次回大会でまた魅せてほしい。
【結果】グレートビクトリー-5 豊橋技術科学大学の勝利。
Cグループ
- 赤:東京大学
- 青:富山大学
東大はキレイに動いている。やはり足回りが機敏で美しい。気持ちよく得点していくが、DRがバッフルに激突してリトライするシーンもあり、普段の「爆速!」なRoboTechとはやはり様子が異なる。
富山大はTRとDRが息のあった連携をしている。TRのリトライ中は東大の得点をしっかり妨害しており、健気だ。試合は東大が制したが、OBの薮内さんからは「東大チームのメンバー間コミュニケーションに課題があるかもしれない」と厳しい指摘も出た。
【結果】12-0 東京大学の勝利。
Dグループ
- 赤:長岡技術科学大学
- 青:千葉大学
初戦では49秒でグレートビクトリーを決め、圧倒的強さを見せた長岡技術科学大。対する千葉大はスナイパー並の高精度手動射出で堅実に得点していた。
予選最終戦スタート、やはり長岡技術科学大が速い。矢の展開が派手でかっこいい。DRの展開も速く、1分10秒でグレートビクトリーを達成した。千葉大は、長岡技術科学大のDRが掴むポットにもしっかり矢を打ち込み、5点を獲得していた。ナイスプレーでした!
【結果】グレートビクトリー-5 長岡技術科学大学の勝利。
激戦が続いた予選に続き、後編では決勝トーナメントの模様をお伝えします!ぜひ、お楽しみに!