ドローン

ドローン専門の展示会で発見!常識を覆す最新固定翼ドローン6選!

《目次》

はじめに

固定翼ドローンの特徴とは!?

最新固定翼ドローン6選!

1:災害現場で活躍が期待される超大型機「TERRA Dolphin 8000 / TERRA LABO」

2:垂直離着陸が可能な固定翼ドローン「TERRA Dolphin 4300 VTOL model / TERRA LABO」

3:水上から離陸できる飛行艇「HAMADORI 3000 / スペースエンターテインメントラボラトリー」

4:極地での観測業務で活躍が期待される「飛鳥・改五 / 日本鯨類研究所」

5:8つのプロペラで垂直離着陸を実現!「Wingcopter 198 / 伊藤忠商事」

6:翼端のチルト機構が面白い!「Dragonfish / Autel Robotics」

まとめ

 

 

はじめに

テクノロジーの発展とともに、さまざまな産業で利用されるようになってきたドローン。これまでは空撮するためのもの、というイメージの強かったドローンですが、ここに来て、空撮だけではなく、農業や測量、インフラ点検、災害対策、そして物流と幅広い産業での利用が模索されるようになってきました。

そして利用シーンが増えてくることで、今度は機体にも変化が現れました。汎用的な空撮ドローンだけでなく、用途に特化した特殊なドローンが登場するようになり、搭載しているシステムやテクノロジーはもちろん、その形状も大きく変わってくるようになったのです。

一般的にドローンというと、ヘリコプターのようにプロペラが複数付いていて、それが回転して飛行するイメージがあると思います。しかし、ドローンの最新トレンドのひとつとして飛行機のような形状をした、いわゆる「固定翼」のドローンが多く登場するようになりました。

 

今回は、6月21日(火)~23日(木)に千葉県の幕張メッセで開催されたドローン専門の展示会「JapanDrone2022」で展示された機体を中心に、トレンドである固定翼ドローンの特徴やメリット、そこで使われているテクノロジーなどを紹介していきたいと思います。

 

固定翼ドローンの特徴とは!?

従来のドローンは、いわゆる「マルチコプター」と呼ばれるタイプのものがほとんどでした。これは、複数のプロペラを回転させて揚力を得て飛行するもので、分類ではヘリコプターと同じ回転翼と呼ばれています。4つ、ないしは6~8つのプロペラの回転で浮力を得るだけでなく、各プロペラの回転数を変化させることで前後左右、自由に移動することができます。機体の姿勢制御は機体に搭載されたフライトコントローラで行い、最新の機体では外乱に強く非常に安定度の高い機体が登場しています。最近では下の画像のように、上下でプロペラが対にセットされて、合計で12枚ものプロペラで飛行する機体も出現しています。

一方で、近年は固定翼のドローンも多く登場してきました。ドローンは無人航空機の総称ですので、決してマルチコプタータイプの機体でなくても呼び方としては間違っていませんが、やはり飛行機タイプの機体を見ると若干の違和感を覚える方も多いでしょう。

固定翼の機体が続々と出現してきた理由としては、下記が挙げられます。

 

1:飛行機のような形状にすることで空気抵抗が少なく、スピードが出しやすい

2:マルチコプタータイプより動力が少なく済むので燃費が良く、航続距離が圧倒的に長い

3:機体の積載量が多く、さまざまな装備を搭載したり、荷物を運搬することができる

4:モーター等が停止してもしばらく滑空でき、安全に着陸させられる可能性がある

 

一方で固定翼機にはデメリットもあります。

 

1:滑走や着陸するのに広いスペースが必要となる

2:マルチコプタータイプのように小回りは効かない

3:ホバリングできないため一箇所に留まることはできない

4:操縦が難しい

 

このようにデメリットも存在するのですが、固定翼ドローンの開発が進む中で、いわゆるVTOL(垂直離着陸機)が登場してきました。プロペラを上向きと前向きに垂直方向に変化(チルト)させることで、離着陸時は回転翼機で、移動時は固定翼機の状態になるものです。これにより、デメリットの1や3は、その大部分が解消されることになります。

上記のような固定翼機の特徴を活かした利用シーンとなると、物流業界では、人の手で運ぶことでコスト高になってしまう離島や山間部の過疎地域への物資の輸送について、ドローンの活用が着目されています。また、国土交通省が推進する3DデータによるICT測量では、長時間の飛行と重い専用装備が必要な広大な敷地の測量に固定翼が最適とされています。さらに、災害時の情報取得や、圃場での農作物のデータ取得により、必要な場所だけ効率よく追肥を行い、一定の品質を保つことができる精密農業での運用が考えられます。今後固定翼ドローンの研究開発が進むにつれ、さらに特化した機体が登場して、考えもつかなかった意外な使われ方が出てくるかもしれません。それだけ未知の可能性を秘めているのが固定翼ドローンなのです。

 

それではここからは、「JapanDrone2022」で展示・発表された固定翼ドローンについて、そこで使われているテクノロジーも含めて紹介していきたいと思います。

 

最新固定翼ドローン6選!

1:災害現場で活躍が期待される超大型機「TERRA Dolphin 8000 / TERRA LABO」

愛知県に本社を持ち、福島県に研究開発拠点を持つドローン製造メーカー、TERRA LABO社製の大型固定翼ドローン(機体はモックアップ)です。全長4,600mm、全幅は8,000mmもあり、広い幕張メッセの展示場の中でもひときわ存在感を放っていました。画像でも人と比較するとその大きさがわかるはずです。

 

この機体の積載量はなんと40kg。さらに巡航速度は100km/h~150km/hと自動車が高速道路を走るのと同じくらいの速度で飛行することができ、最大速度は250km/hまで出すことが可能です。

 

そして航続時間は20時間(h)、航続距離は2,000kmというスペックを予定しており、これが実際の機体で実現すると、長距離飛行が可能でスピードが速く、物資も多く搭載できるという、固定翼ドローンの特徴をすべて網羅した凄まじい機体が登場することになります。

この機体の注目は従来のモータ+リポバッテリというパワーソースではなく、レシプロエンジンや水素燃料電池、ジェットエンジンを目的や利用シーンに応じて選択できる点にあります。これにより、従来のパワーソースでは難しい、燃費の良さとスピードの速さ、航続距離の長さを実現しています。

 

また、衛星通信によりリアルタイムで映像を伝送するシステムを搭載しており、主な用途としては台風や地震などで被害を受けた土砂災害現場や、立ち入り困難区域などの上空を飛行し、地表データを上空より取得し、流出した土砂の量を計測するなど、災害現場の被害状況の把握等、災害対策のために開発に取り組んでいます。

 

2:垂直離着陸が可能な固定翼ドローン「TERRA Dolphin 4300 VTOL model / TERRA LABO」 

同じくTERRA LABO製の固定翼ドローンで、先ほどの「TERRA Dolphin 8000」よりもひとまわり小さな機体になりますが、こちらはVTOL機構(垂直離着陸機)を備えたモデルとなります。

 

この機体は水素燃料電池によりプロペラを回転させ、主翼に搭載されたプロペラで垂直に離着陸し、上空での飛行は機体後部に搭載されたプッシャー式のプロペラで飛行するVTOL機です。

 

この機構により、離着陸時に滑走路が不要で、狭い場所でも離着陸が可能なだけでなく、VTOL機構を使うことでホバリングも可能です。マルチコプタータイプと固定翼機の良い部分を双方盛り込んだ機体と言えます。

なお、スペック上では、巡航速度は100km/h~150km/h、最大速度は150km/h、航続時間は2時間、航続距離は200kmとなっています。こちらも災害発生の際などでは長距離飛行によって広域の情報収集が可能な機体です。

 

3:水上から離陸できる飛行艇「HAMADORI 3000 / スペースエンターテインメントラボラトリー」

こちらは固定翼ドローンでも珍しい飛行艇型のドローンです。海や川、湖が豊富な日本の国土の特徴を活かし、飛行艇にすることで水上を滑水して離着陸することができます。水辺には基本的に建物や人が少ないため、離着陸時の安全性が高いという利点もあります。わずか1~2秒の滑水で離陸でき、波の高さも2m程度まで可能。

 

この機体には機首部分にEO(電気工学)/IR(赤外線センサ)ジンバルカメラが搭載されていることで、オブジェクトトラッキング(対象を常に追跡する画像センシング技術)が可能な点が特徴です。対象を補足することで常にその対象を自動追従することができます。機体はGPSを搭載した自動航行となっており、飛行時間は約2時間となっています。

 

この飛行艇の用途としては、主に地殻変動調査を想定しているとのこと。これは動いたり沈み込んだりする海洋プレート上に設置した観測用の通信機器の音波を上空で受信するもので、これまでのように船舶や実機の飛行機を飛ばして観測するよりもコスト面で大きなメリットが見込めるとのことです。他にも豊富な最大積載量を活かして、さまざまな装置を積み込み、海洋調査での活用も模索されています。

 

4:極地での観測業務で活躍が期待される「飛鳥・改五 / 日本鯨類研究所」

クジラの国際調査等をおこなっている日本鯨類研究所が、鯨類調査の新しい方法として開発したVTOL型固定翼ドローンが、この飛鳥・改五です。この飛鳥・改五は2022年から本格的に鯨類の航空目視の調査に活用されるということで注目を集めています。

 

この機体は翼長3,300mmの固定翼ドローンで、4枚ある上向きのプロペラと、機体後方に推進するためのプロペラが搭載されたモデルとなっています。2022年3月の飛行ではなんと104kmも、自律による洋上でのロングフライトを実現。今後は南極での調査に実際に投入されるようです。

 

実際にクジラが多く生息する南極などでは厚い氷が邪魔をし船で近づけない場所も多く、その際にこの飛鳥・改五が船から発進し、上空から調査をおこないます。機体には可視カメラが搭載されており、そこから得た映像で生態を把握していくとのこと。

この機体もVTOLの良さを存分に活かしている点が特徴です。というのも、極地においては滑走路が整備されていないことが多いですが、そんな環境でもVTOL機ならば垂直離着陸が可能なので、観測船から発進が可能です。目的地まで船が近寄れない場所はドローンで観測する…。まさにドローンの最大の特徴である「人が近づけない場所へ安全に、そして容易に行くことができる」を、この機体は極地で実現していることになります。

 

5:8つのプロペラで垂直離着陸を実現!「Wingcopter 198 / 伊藤忠商事」

大手総合商社の伊藤忠商事のブースには、業務提携をおこなっているドイツのWINGCOPTER社製のVTOLドローン「W198」が展示されていました。大手総合商社にとってもドローンは無視できない存在で、伊藤忠商事は荷物の運搬や配送においてドローンを活用すべく、WINGCOPTER社と提携を結んでいます。

 

このW198は、プロペラが前方に4つ、後方に4つ主翼に取り付けられています。実はこのプロペラのうち、胴体に近い側の4つのプロペラにはチルト機構が備わっており、上向きのプロペラを離陸後に前向きへと可変させて、そのまま前方へ飛行していくことができます。

このチルト機構は実機でもオスプレイなどで使われているものですが、プロペラの可変時に機体が不安定になりがちなため、優れた機体制御が必要になりますが、このW198の機構ですと、8つのプロペラそれぞれの役割が明確になっており、その点をカバーしています。外側のプロペラは上向きの揚力を発生させ、内側の4つは揚力と推進力を場面に応じて出し分けるわけです。これによりすべてのモータがチルトする(垂直方向に傾く=プロペラが上を向いたり、前を向いたりする)わけではないので、スムーズに垂直離着陸から水平飛行に移ることができ、機体が不安定になることなく、前進飛行へ入ることができます。

 

W198は機体の下部に3つのボックスを搭載することができ、一度の飛行で3箇所それぞれにボックスを下ろすことができる配送用ドローンを目指しているとのこと。チルト機構によりその場で止まる、いわゆるホバリング機能も配送用として備わっているんだとか。

 

 

WINGCOPTER社のWebサイトで確認すると、積載量は6kg、航続距離は110kmということで、かなりの長距離フライトが可能なことがわかります。山間部や離島などへの配送などで、狭い場所でもVTOLの機能を活かし離着陸することも可能で、まさに日本におけるドローン配送の第一歩となるような機体ではないでしょうか。

 

6:翼端のチルト機構が面白い!「Dragonfish / Autel Robotics」

中国の深センに本社を構えるAutel Robotics(以下、Autel)。高性能な空撮ドローン「EVO」シリーズで世界的に有名なメーカーですが、このAutelも固定翼ドローンを発表しています。それが今回紹介する「Dragonfish」です。

 

この「Dragonfish」は、昨今のトレンド通りVTOLの固定翼ドローンなのですが、他のVTOL機はモーター部分がチルトしたり、上昇用と推進用でプロペラを別にしていることが多いのに比べ、この機体ではプロペラ(モーター)が取り付けられている翼端そのものがチルトする機構となっています。このような形にした明確な理由はわかりませんが、モーターの取り付け部分をチルトさせるより、耐久性が高くなり、確実な動作が実現できるのかもしれません。また、機体の上部にも2つのプロペラが搭載されており、これらも使って離着陸をおこないます。

 

この「Dragonfish」は、機首部分に最大積載量の範囲内でさまざまな装備を取り付けることができ、用途に応じて機体をカスタマイズすることができます。ラインナップとしては、4K光学ズームカメラや赤外線カメラ、レーザーを使った距離センサーなどがあり、それらをひとつのユニットにしたペイロードも用意されています。

他の固定翼ドローンに比べて小型の「Dragonfish」ですが、カメラ搭載時で約120分の飛行が可能で、他にオプションでGNSS基地局とRTKモジュールも用意されており、センチメートル単位の情報を取得しながら飛行することが可能です。また、上空から最大で46個の対象をトラッキングできるため、監視等のミッションもこなすことができそうです。

 

まとめ

今回はドローンの中でも最も注目されている固定翼ドローンについて、その特徴とメリットを紹介してきましたがいかがでしたでしょうか?ドローン業界はその活用シーンが大きな広がりを見せ、ますます活況になってきており、今回の展示会「JapanDrone2022」でも、ドローンメーカーだけでなく、携帯キャリア(G5回線による機体制御や通信)や、インターネット大手企業によるドローンのセキュアな通信に関するサービス、そしてドローンスクールや長距離輸送をする上でのドローンポート(充電スポット)など、さまざまな製品が展示されて熱気を帯びた展示会となっていました。

 

また、2022年6月からは航空法が改正され、すべての機体について機体登録が必要になりました。さらに、現在ではドローンを操縦することについて特に資格は必要ないですが、2022年12月からは国家資格が必要となる予定で、8月あたりに詳細が発表されるという情報もあります。このように制度が整備されることは、ビジネスシーンにおいてはやって良いこと、悪いことの白黒がはっきりするため、ドローンを活用したい企業にとっては非常に良いことだと考えられます。

首相官邸「空の産業革命に向けたロードマップ2021」より抜粋

2021年に国が発表した「空の産業革命に向けたロードマップ2021」では、2022年に有人地帯での目視外飛行を実現させる予定となっており、まさに今年がドローン飛躍の年となるはずです。ドローンの操縦に関する今後も発展が続くドローン業界。デバイスプラスでもしっかりとチェックしていきたいと思います。

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