これが新しいモビリティの形!自動運転の明るい未来

技術の進歩とともに、あらゆるものが効率化、そして自動化されていく現代。人手不足解消のため、省人化によってロボットなどにできる作業は置き換え、本当に必要な部分に人的リソースを投入していく流れはさまざまな産業で加速しています。

 

そんな中、注目されるのがモビリティ領域における自動運転です。昨今、バスやトラック、タクシー運転手の人材不足問題が深刻化していると、ニュースで多く取り上げられています。人材不足だけでなく、高齢化社会を迎える中で、近隣への移動手段としても自動運転は大きな期待が寄せられていることでしょう。

自動運転は現在どこまで開発が進んでいるのか、そして今後どのように発展していくのか、さらにそこで使われている技術について、デバプラ的にも気になるところです。

 

そこで今回は、自動運転ソリューション、自律移動ロボット、物流ロボットの開発・販売をおこなっている、株式会社ZMPを訪問。自動運転や自律移動ロボットの未来について話を聞いてきました。実際に自律移動ロボットにも乗せてもらい、その性能を体験させてもらうこともできましたので、これを機にぜひ自動運転について興味を持ってもらえればと思います。

 

①歩行速モビリティ「RakuRo(ラクロ)」乗車体験!

今回、取材をお受けいただくにあたってZMP社に問い合わせたところ、株式会社ZMP 広報・ロボプロモーション部部長で一般社団法人ロボットデリバリー協会理事の木村寛明氏からメールにて「ぜひ、自動運転をご体験いただき、お写真もお撮りになってください」と返答いただいた。しかし、お伺いするのは東京のど真ん中。果たして…といろいろ想像しながらZMP社のオフィスにお邪魔したところ、なんとそこで待っていてくれたのは、同社の歩行速モビリティ「RakuRo®︎(ラクロ®︎)」!大きな目がなんとも愛くるしい。木村氏より「まずは自律移動するロボットを体験してみてください」と貴重な機会をいただいたので、お言葉に甘えてラクロに乗せてもらうことに。

ZMPの歩行速モビリティ「ラクロ」

体験ルートはZMP社のオフィスから公道の歩道を進み、交差点を右折して坂を登り、途中で信号のある交差点をいくつか超えた後、Uターンして帰還するというもの。ルートはブラウザ上で指定してラクロにインプット。準備が整ったところで実際に搭乗し、自動運転での体験走行がスタートします。もちろん、公道を走行することは事前に許可されているが、人通りもある歩道で果たしてラクロの走りはどんなものなのだろうか…。

シートが良くできており座り心地、乗り心地も抜群のラクロ

ZMPの木村氏が、走行ルートをロボット制御システムに指示して走行がスタート

まず、スタートしてわかったのは意外なほど乗り心地が良いこと。体を包んでくれるようなシートの座り心地は、これだけで安心感がありました。最大時速は6km/hとのことで、今回は人間が歩くスピードでの走行です。自動運転ですのでラクロにはハンドル等の運転装置は何もなく、本当に「座っているだけ」でどんどん進んで行きます。運転しないので、スマホも使えます。

面白いのがラクロのコミュニケーション力です。走行中に人がいることがわかると「こんにちは!」と元気に挨拶していました。表情も喜怒哀楽が出せるようになっており、これを見ているだけで楽しい気持ちになります。右折する際は「右に曲がります!」と言いながら、目線も右を向くなど周囲からも次の動きがわかるようになっています。また、人や障害物があり予定のコースが通れない場合は、AIが考えて自動で回避するなど、人と共生する自動運転ロボットになっている点も見逃せません。もちろん、信号もカメラで判別するようになっており、青信号に変わるまでじっといい子にしている姿が印象的でした。

前方の信号が赤の場合、カメラで画像認識してきちんと停止する

ラクロには前方監視用のフロントカメラのほか、ステレオカメラが2つ、下部には障害物センサーとして前後にひとつずつ2D-LiDARを装備しています。上部には3Dセンサーとして3D-LiDARを搭載。さらに側面警戒用にサイドカメラ、後方にはリアカメラが搭載されています。これらのカメラやセンサーを駆使して、3Dセンサーによる車両周囲の全体監視システムや、レーザーセンサーによる足元監視、バンパーセンサーによる前方の障害物監視などをおこない、安全な運転を実現しています。

ラクロの前方にはフロントカメラとステレオカメラが2つ装備されていて、進行方向の警戒にあたっている

また、その走行性能にも注目です。今回走行したルートは斜度がそれなりにある坂道だったのですが、登坂能力も高く、坂をまったく苦にせずグイグイ登っていきます。また、歩道の上でも方向転換できるほど小回りもきき、人間が運転するかのように何度か切り替えして360度ターンを実にスムーズに転回するなど、場所を問わない走行性能も見ることができました。

 

②さまざまなシーンで活躍する自動運転モビリティ

さて、ラクロでの快適な自動運転乗車体験が終わったところで、改めて木村氏にお話を伺うことにしました。

インタビューに答えてくれた木村氏

 

編集部:まずZMPの事業について教えて頂けますでしょうか?

木村氏:ZMPは今回試乗いただいた小型の自動運転のロボットを開発しているだけでなく、自動車の自動運転も手掛けています。東京の六本木にて、世界で初めて自動運転のタクシーを走行させたのも弊社です。また、自動運転フォークリフトや、自動運転の台車(AGV)などの物流ロボットやロボットを管理するAIプラットフォームも開発している会社です。最初は二足歩行ロボットの「PINO」の開発からスタートし、現在は「歩行速ロボ事業」「自動運転ソリューション事業」「物流支援ロボット事業」「ロボ・AIソリューション事業」などの領域に業態を広げています。

ZMP社の歩行速モビリティ3兄弟。それぞれ用途と機能が異なっている

編集部:今回、初めて歩行速ロボットの自動運転を体験して、その性能の高さに驚きました。ZMPの歩行速ロボットはどのような特徴があるのでしょうか?

木村氏:ZMPの歩行速ロボットは3種類のラインナップがあります。歩行速モビリティの「RakuRo(ラクロ)」、無人警備・消毒ロボの「PATORO®︎(パトロ®︎)」、そして無人宅配ロボの「DeliRo®︎(デリロ®︎)」です。このうちラクロは、便利に移動を楽しめるパーソナルモビリティとなっており、主に空港やショッピングセンター、病院、観光地などでの利用を想定し、動物園やお城の観光などでも既に活躍しています。

無人で警備をおこなうパトロは、強力なドライブレコーダーが自動で巡回しているイメージです。普段はこのパトロが自動運転で監視し、警備員の出動が必要なシーンでは人とロボット双方が連携して警備に当たることができます。

これらの車両はすべてGPSを使わずに走行していますので、GPS電波が届かない屋内でも問題なく自動運転を実施できるのが特徴です。これはあらかじめ走行する位置のデジタルマップ(RoboMap)をデータ生成し、ロボットが走行する際に自分が見ている景色とデジタルマップを照合、自己位置の推定をおこなうことで可能となっているそう。

ZMPが開発する自動運転車両たち。左からフォークリフト、バス、トーイングトラクター、スイーパー、デリロ、ラクロ、パトロ。これらすべて、電動の自動運転モビリティだ。

ZMPでは他にも作業用の台車やフォークリフトを自動運転化したり、自動運転の小型EVバスやトーイングトラクター(自動運転無人けん引車)の開発などもおこなっています。自動運転技術については研究を重ねていますし、イベントなどの会場設定が複雑な場面では、多数の自動運転技術を持つ会社が集まった中で、唯一、弊社だけが自動運転を実現できたという経験もあります。そういう意味では、自動運転用の電子マップを作り、現場の実情に合わせて機体を走行させるセットアップ技術は、多少の自信があります。

 

③進化する自動運転モビリティの未来

編集部:今後、小型の自動運転モビリティはどのようなシーンで利用が進んでいきそうでしょうか?

木村氏:直近の事例では、ラクロを病院内で高齢者の移動用として使っていただいたりしております。他にはエンターテイメントの領域でも活用を進めているところです。現在は千葉の動物園で、園内を周回するコースをラクロが走行しています。このように高齢者福祉や、エンターテイメントの領域などで実際に活用が進んでいます。

そして、無人宅配ロボは物流、運送業界の2024年問題が間近に迫る中、非常に注目を集めています。このロボットは目的地まで自動でモノを届けることができますので、食品や日用品のデリバリーだけでなく、広い敷地内を持つ企業で書類や物品の輸送などといったニーズも見えてきています。

編集部:今後さらに多くのシーンで利用が進みそうですね。

木村氏:日本でも今後さらに法整備が進み、自動運転はますます進化していくと考えられえています。小型自動運転モビリティはラストワンマイルを補う存在として進化していくでしょうし、中型化という需要も出てくると思います。現在では既に自動運転バスも登場していますが、小型の自動運転モビリティはそれとは違った使い方で発展していくことでしょう。それと同時に、ただ自動運転するだけでなく、外部のさまざまな仕組みと連携して、新しい価値を生み出していく点も重要です。

 

先程紹介しました自動運転ロボットは、ZMPが開発する「ROBO-HI®︎(ロボハイ)」というロボットマネジメントプラットフォームの指令下で動いているのですが、この仕組みを活用することで、エレベーターなどの設備や各種業務システム情報を把握するビルOS、街の情報を管理する都市OSなどとロボットを連携させることができます。例えばロボハイをビルOSと連携させれば、ラクロなどのロボットは自動でエレベータと連携して上下階の移動ができるようになりますし、ビルOSの監視カメラなどの情報・人の混雑状況などの情報をロボハイが取得できれば、ロボハイから混雑を避ける配達ルートをロボットに指示することが可能になります。

ZMPが開発したロボットマネジメントプラットフォーム「ROBO-HI(ロボハイ)」。ロボットと各種設備、業務システム、都市OSなどをつなぎこむことができる

編集部:自動運転モビリティの普及に関して、どういった部分が課題になりますか?

木村氏:先程も出ましたが、自動運転をおこなうテクノロジーはかなり良いところまで来ています。一方で、社会実装となった時に、自動運転ではないモビリティとの共存環境をいかに整えるかという課題は考えなければいけません。例えば乱暴な運転をする人間のドライバーの自動車と自動運転モビリティが同じ道の上でどう共存するか。こういった部分は今後解決していかなくてはいけません。

 

④まとめ

自動運転モビリティと人が共存し合う社会がもうすぐそこまで来ている

今回はいま注目の自動運転について、歩行速モビリティや自動運転ソリューションを開発しているZMPでお話を聞くだけでなく、実際に自動運転の体験走行までさせていただきました。実際に乗っていてもまったく怖さや不安はなく、ちょっと特別な乗り物に乗っているような気分がした反面、年配の方や小さなお子さんから物珍しく見られてやや恥ずかしかったのも事実。しかし、今後日本中にこのような自動運転ロボットや自動運転車両が溢れるようになるのは間違いなく、あっという間に見慣れた景色になっていくことでしょう。

少子高齢化による人手不足が顕著な日本において、モビリティの自動運転化は社会的課題の解決という側面からも非常に重要なものだと考えます。誰もが安心して気軽に移動できる世の中になるには、自動運転のますますの発展が必要だと強く感じました。デバプラでは、この分野についても今後も継続的にウォッチしていきたいと思います。

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