ここが分かると面白くなる!エレクトロニクスの豆知識

第4回:論理回路の基礎

第1回:はじめてのトランジスタ
第2回:はじめてのモータドライバ
第3回:はじめての抵抗器

 

エレクトロニクスに関する基礎知識やさまざまな豆知識を紹介する本シリーズ。今さらに人に聞けない、でも自信を持って理解しているかは怪しい、そんな方にぜひ参考にして頂くべく、基本的な内容から応用につながる部分まで、幅広く紹介していきたいと思います。

第4回では「論理回路」について解説します。論理回路は、例えばセンサのON・OFFなどの電気信号を処理する上で基本的な考え方となる「論理演算」を使います。この考え方がわかると、センサの接続や電子回路設計の際にも役立つ知識となりますので、電子工作がより楽しくなると思います。

 

目次

  1. 論理回路とは
  2. 論理演算の考え方
  3. 論理素子の種類
  4. 電子部品としての論理素子
  5. まとめ

 

1. 論理回路とは

論理回路(Logic circuit)とは、「1」と「0」、すなわちONとOFFのような2状態の値(真偽値)を取り扱うデジタル回路において、論理演算の基礎となる論理素子(AND・OR・NOTなど)を組み合わせて構成する回路のことをいいます。

ここで取り扱う「1」と「0」は、回路やプログラミングなどにおいては真理値による真(True)・偽(False)、電圧の高(High)・低(Low)などで表現されることも多く、それぞれは以下の表のように対応しております。

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真理値の表現方法の例

 

2. 論理演算の考え方

論理回路をどのような場面で使うことがあるかというと、簡単な例としては、複数のセンサの状態を検知してその結果を1つの出力にまとめたいときなどに使います。具体的なモデルとして「人が近くにいて、かつ外が暗いとき、自動でONになるライト」を考えてみましょう。

このモデルの場合、「入力」となるセンサには、人が通ったことを検知する「人感センサ」と、周りの明るさを検知する「照度センサ」の2つのセンサを使います。また「出力」としては「ライト」が備えられています。

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センサのように感知するものは「入力」、ライトのようにアクションを起こすものは「出力」として扱う

 

人感センサが「人を検知すると1、検知しないと0」、照度センサが「周りが暗いと1、明るいと0」、ライトが「ONのとき1、OFFのとき0」とすると、今回のモデルで望まれる動作は以下の表のようになります。この表のように、論理回路などについて考えられる入出力のパターンをすべて書き表したものを「真理値表(しんりちひょう)」といいます。

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センサ付きライトの真理値表

 

この表を見ると、人感センサと照度センサの両方が「0」、またはどちらか一方だけが「1」のときヒーターは「0」になり、人感センサと照度センサの両方が「1」になるとはじめてヒーターが「1」になることがわかります。

このように、すべての入力が「1」(ON)のときのみ、出力が「1」(ON)となる回路を特に「AND回路」と呼ばれます。論理回路にはこのAND回路の他、OR回路やNOT回路など、いくつかの回路があり、これらを組み合わせることであらゆるパターンの動作を設計することができます。これらの詳細については後述します。

 

3. 論理素子の種類

論理積(AND)

前章で述べた例のように、複数の入力すべてが「1」であることを示す論理演算を論理積(AND;アンド)と呼びます。2つの入力をA, B、出力をYとすると、論理積(AND)の回路記号と真理値表は下記のように表されます。この回路を言葉で単に説明するときは「A and B」や「AかつB」のように言います。

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論理積(AND)の回路記号と真理値表

 

論理和(OR)

複数の入力のいずれかが「1」であることを示す論理演算を論理和(OR;オア)と呼びます。2つの入力をA, B、出力をYとすると、論理和(OR)の回路記号と真理値表は下記のように表されます。この回路を言葉で単に説明するときは「A or B」や「AまたはB」のように言います。

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論理和(OR)の回路記号と真理値表

 

論理和(OR)の具体例としては、「複数の人感センサを並べていて、いずれかひとつでも検知したら、ライトをONにする」のように、複数の入力のいずれかが「1」になった場合に出力を「1」とするときに使います。

論理否定(NOT)

先の論理積(AND)と論理和(OR)が2入力(複数入力)・1出力であったのに対し、論理否定(NOT;ノット)は1入力・1出力の論理演算となります。論理否定(NOT)は、入力に対して出力の信号の真偽値が反転する論理演算です。「0」を入力すると「1」が出力され、「1」を入力すると「0」が出力されます。入力をA、出力をYとすると、論理否定(NOT)の回路記号と真理値表は下記のように表されます。

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論理否定(NOT)の回路記号と真理値表

 

否定(NOT)は「人感センサで人を検知“したら”」という入力の論理を反転させることで、「人感センサで人を検知“しなかったら”」という条件に変えるように、特定の信号の論理を反転させたいときに使います。

否定論理積(NAND)

これまで述べた論理積(AND)・論理和(OR)・論理否定(NOT)を使えば、基本的にはあらゆるパターンの論理演算を表現することができますが、複数の論理素子によってつくる特定の組み合わせをひとつの論理素子としてまとめて表現することがあります。

否定論理積(NAND;ナンド)は、Not ANDを意味する論理演算で、ANDの出力にNOTをつなげた形の論理素子となります。否定論理積(NAND)の回路記号と真理値表は下記のように表され、出力Yは論理積(AND)と比べると、出力の真偽値が反転していることがわかります。

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否定論理積(NAND)の回路記号と真理値表

 

否定論理和(NOR)

否定論理和(NOR;ノア)は、Not ORを意味する論理演算で、ORの出力にNOTをつなげた形の論理素子となります。否定論理和(NOR)の回路記号と真理値表は下記のように表され、出力Yは論理和(NOR)と比べると、出力の真偽値と反転していることがわかります。

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否定論理和(NOR)の回路記号と真理値表

 

排他的論理和(XOR)

排他的論理和(XOR;エックスオア)は、2つの入力のうちひとつが「1」で、もうひとつが「0」のとき出力が「1」となり、入力が両方「0」または両方「1」のとき出力が「0」となる論理素子です。排他的論理和(XOR)の回路記号と真理値表は下記のように表されます。

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排他的論理和(XOR)の回路記号と真理値表

 

排他的論理和(XOR)は、家などの階段の切り替えスイッチのように「どちらかの入力(スイッチ)を切り替えると、出力が切り替わる」という動作をさせたいときに使われます。

 

4. 電子部品としての論理素子

回路記号では論理否定(NOT)は端子が2本、上記で紹介したそれ以外の論理素子は端子が3本以上で表されていますが、実際に電子部品として販売されているものはそれらよりも端子の数は多く、電源を接続する端子などが設けられたひとつのパッケージにまとめられています。

例えば、ANDゲートの機能を搭載しているロジックICであるBU4S81G2(ROHM製)は、外観やピン配置は以下の図のようになっています。

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BU4S81G2の外観

 

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BU4S81G2の端子配置図・ロジック回路図

 

BU4S81G2 シングルゲートCMOSロジック
https://www.rohm.co.jp/products/switch-multiplexer-logic/standard-logic/logic-gates/bu4s81g2-product

ロジックICの電源ピンには、取り扱う信号の電圧レベルに合わせた電源を接続します。5Vで信号を取り扱う場合は5Vの電源を接続し、3.3Vで信号を取り扱う場合は3.3Vの電源を接続します。

 

5. まとめ

今回は論理回路の基礎となる論理素子の種類や、実際の電子部品としてどのようなロジックICがあるのかを紹介してきました。

論理回路についてさらに探求すると、組み合わせ回路、順序回路、カルノー図、フリップフロップ、カウンタなどのキーワードも登場してきます。記憶回路(メモリ)のしくみなどに興味がある方はこれらについて調べてみると面白いかもしれません。

また、センサやモータドライバなど、マイコン周辺で用いる回路を自作する際には、ロジックICやそれに類似するICを使うことは頻繁にあります。どこかで回路図を眺めるときに論理素子が含まれているのを見つけたときは、どのような目的や役割でその論理素子が使われているのか観察してみましょう。

 

 

今回の連載の流れ

第1回:はじめてのトランジスタ
第2回:はじめてのモータドライバ
第3回:はじめての抵抗器
第4回:論理回路の基礎(今回)
第5回:テスターの使い方

※ROHM「エレクトロニクス豆知識」はこちらから!

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1991年、福岡県北九州市生まれ。九州工業大学大学院を卒業後、電子工作キットの開発、ロボット競技会の運営、デジタルアート作品の制作などを手掛けてきた。現在はデジタルものづくりコミュニティ『薬院Make部』を運営し、福岡県福岡市内でものづくり活動にも取り組んでいる。ロボット競技会・作品コンテストに多数参加。代表作は『論文まもるくん』『アトゴフンダケ』など。

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