インタビュー

ドローンやローバーの第一人者が説く ロボットというインフラを使った新しい仕事の仕方【後編】

目次

  1. AIによって実現するさまざまなアイデア
  2. 新しいテクノロジーに飢えているアジア各国
  3. 機械系エンジニアにとって、これからは大きなチャンス
  4. アトラックラボの無人機を紹介

 

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株式会社アトラックラボ代表取締役 伊豆智幸氏

 

現在、世界中で活躍しているロボット。あらゆる産業においてロボットを活用した新しい仕事の仕方が次々の登場しています。そんなロボットに使われている最新テクノロジーと、それを活用した新しい仕事の仕方について、今回はドローンや自動制御の車両(ローバー)開発の第一人者である、株式会社アトラックラボ代表取締役の伊豆智幸氏にインタビューをおこないました。最新のロボットの活用事例から使われているテクノロジーまで。気になる部分を2回に渡ってお届けしていきたいと思います。

後編の今回は、AIを始めとした新しいテクノロジーの活用事例や、伊豆氏から見たこれからの機械系エンジニアについて、お話を伺ったので早速お届けしたいと思います。

前編はこちらをご覧ください。

 

1. AIによって実現するさまざまなアイデア

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──先ほどのいちご農園で活躍するローバーを例に、どのような技術が使われているか紹介頂けますか?

伊豆氏:このローバーにはLiDARが搭載されておりすべて自動で走行します。マッピングしながら走行し、いちごの育ち具合の情報を取得します。取得した情報はGIS(Geographic Information System)に入れて分布図を作ります。どのエリアのいちごが育ちが早い、どこのエリアは遅い、といったものを時系列で見ることができるように設計しています。よく天気予報のアプリで雲の動きをスライダーで見ることができると思いますが、あの感覚に近いですね。そういったインターフェースを作っています。

──いちごの生育についてはどのように把握しているのでしょうか?

伊豆氏:このローバーには温度センサなども搭載されていますので、そういった情報も参考にしながら、映像から赤くなっている部分の割合に応じていちごをカウントするように設計されています。AIを搭載していますので、例えば「これは2週間後に収穫できそう」とか、葉っぱに注目して「これは病気にかかりそうだ」といった形でカテゴリ分けをおこないます。普段、いちご農家さんが歩いて確認しているとようなことも、AIだと簡単に再現することができます。

──今後、こういったドローンやローバーではAIは必須ですね。

伊豆氏:そのAIデータを作ることができるのが当社の強みです。ロボットを走らせるだけではなく、AIを積極的に活用して、さまざまな技術と組み合わせています。

例えば、株式会社カナモトが取り扱っている「ナクシデント」と呼ばれる製品があります。これはバックホーと呼ばれる種類のショベルカーなど重機の後ろに取り付けて、本来死角になってしまうバックホーの後方部分に他の作業員がいる場合に検知し、エンジンを止めたりすることができるシステムです。これが凄いのはヘルメットを被って作業している作業員でも人間と検知して知らせることができる点です。通常のAIですと作業員を人間と認識するのは難しいのですが、この「ナクシデント」に搭載されているAIは、当社で作った作業員を認識することに特化したAIデータが使われています。具体的には、ヘルメットを被っていたり、作業用のベストを着ているといったことで作業員だと認識できるようにしています。

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(※出典元:株式会社ナカモト リリース資料より抜粋)

 

──こういったバックホーには、センサやカメラが搭載されているものではないのでしょうか?

伊豆氏:はい、普通はバックホーにも後方用のカメラは搭載されています。しかし、最大の問題は操縦する人間がそれを見ていないことです。例えば、バックしている最中はカメラの映像だけでなく周囲を見たりしながら操縦します。その際にチラッと映った後方の映像を見落としてしまうのです。事故が起こる時はたいてい「そんなところに人が入るわけがない」という状態で起こることが多いです。そういった状態になった時に、瞬時に見つけ、操縦している人に知らせ、事故を防ぐことが、AIによって正確かつスピーディにおこなえるようになった好事例だと思います。もちろん、最初は誤認識などもありましたが、当社はAIを育てる技術もありますので、誤認識したものは次回から排除し、より優れたAIに育てていける部分についてはお客様から高い評価をもらっています。

──この技術は他の重機にも応用できそうですね。

伊豆氏:はい、既に他の重機やトラックなどにもそれに合わせた形にカスタマイズして採用してもらっております。ひとつの例としてはクレーンがあります。クレーンの先端に搭載し、クレーンを伸ばした際に、下に人間がいてもそれを人間だと認識できるAIデータを当社では持っています。さまざまな色のヘルメットや作業ベストをドローンで上空からデータを取得し、それをAIに覚え込ませることで、上から人間の頭や肩のみが見える状態でも、人間と認識し、もしクレーンの下に作業員がいた場合は操縦者や周囲に警告が発せられるような仕組みを作りました。また、高度センサも搭載されているので、クレーンの高さを把握することができますから、その高さによって警告の範囲を変えることも可能です。

 

2. 新しいテクノロジーに飢えているアジア各国

──伊豆さんはこれまでも積極的にオープンソースの技術を採用されてきました。このあたりに何かこだわりはあるのでしょうか?

伊豆氏:私が何かやりたいと思った時に、同じようなことを考えている人が世界中にたくさんいると思っています。ですので、誰か同じようなことをやっていないかな?と探すのが一番の近道だと考えています。当社は製品を作り込む以前に、PoC(※概念実証)のようにコンセプトの検証をおこなうモデルを作ることが多くあります。お客様に「こんな風にできますよ」とお見せするモデルを作ろうと思った場合に、オープンソースを使うことは非常に有効です。

当社にはソフトウェアのエンジニアは外国人しかおりません。というのも、そういったオープンソースを使う際に、作った方とコミュニケーションを取れる人材が必要になります。そういったコミュニケーションは英語がベースとなりますので、ソフトウェアエンジニアは外国人で構成しています。

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──伊豆さんは以前から海外にも良く行かれておりますが、このコロナ禍でなかなか渡航できないのは残念ですね。

伊豆氏:そうですね。コロナになる以前は、欧米よりもアジアが楽しくなっていました。例えば、コロナになる直前には大規模農場のロボットシステムを構築するためにマレーシアに行っていました。アジアは、まさに「リープフロッグ現象」ではないですが、今までのやり方がないので新しいやり方にすぐに飛びつけます。これが日本では「今までの農業のやり方はこうだったから」というような文化があると思います。例えば農機具メーカーも機能の拡充などはするものの、ブレイクスルーの提案はまったくしません。逆にまだこれから発展するような国では、新しいテクノロジーにすぐに飛びついてきます。皆さん、新しいものに刺激を感じやすいのです。スマホで情報を得たり、ロボットを使って何かやってみたりすることに血が騒ぐのでしょう。ですので、我々がドローンやローバーを持っていくと、若い方を中心に物凄い食いつくようです。この国の農業は自分たちが担っていくんだ、という姿勢が見えますので、そういった方々といろいろな話を進めていくのは非常に心地良いですね。

 

3. 機械系エンジニアにとって、これからは大きなチャンス

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──デバイスプラスは若いエンジニアの方にもよく見て頂いております。ぜひ、伊豆さんからメッセージを頂けないでしょうか?

伊豆氏:現在、フィジカルと言われるモノの世界が注目されていて、物理・機械系エンジニアはこれから活躍する場所がたくさんあると思います。これまでの機械というのは、機械そのもので何かしなくてはいけなかったですから、なかなかブレイクスルーが難しかったと思います。しかし、これからは電子制御を含んだ機械作りができます。例えばドローンは機械だけでは飛びません。そこに電子制御が入ってきたことで、人間技では難しい4つのプロペラのコントロールがセンサとソフトウェアで可能になったからこそ飛ぶことができるのです。

同じようなことが今後さまざまな機械で発生すると思います。これまでは、ソフトウェアを作るとなると大規模なチームで大それたものを作る時代でした。電車や飛行機は大会社しか作れないものです。しかし、ドローンやローバーのような無人の小型機は小規模でも十分作れます。つまり、電子制御と機械を組み合わせて何かを作るということは、少し原始的な部分に立ち返っているところがあるのではないかと思っています。そういった意味で、若いエンジニアの方や、高専や大学で学んでいて、これからエンジニアを目指す方々にとっては、とてもチャンスのある時代が来たのではないでしょうか。

──本日はありがとうございました。

 

4. アトラックラボの無人機を紹介

電動芝刈機を電動ローバーで牽引

 

高精度RTKとAIを実装した無人車両

 

RTK GNSSを用いたアトラックラボBOX80ドローンの飛行試験

Device Plus 編集部

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電子工作マニュアル Vol.3