すでにご存じのように、NHK学生ロボコン2015は、早稲田大学・ROBOSTEPが優勝。創部からわずか1年半、まったくの新規メンバーで、なみいる強豪を下しインドネシアへの切符を勝ち取った。一体なぜそんなことが可能だったのか? そんな疑問を持ちながら、出場3選手に話を聞いた。
サーブ失敗で精神崩壊?
──まず、優勝おめでとうございます! 自信はありましたか?
三宅:口では、「優勝する!」って言ってましたけどね。ただそれがホントにできるかと言えば……、誰もそんなことは思っていなかったと思います。ただ、初戦で負けるのだけはいやで、ベスト4ぐらいに行ければ……と思っていました。
──当日はスムーズに行きましたか?
三宅:いや、ゼンゼン……、前日からいろいろありました。
花尻:テストランで、空気圧が足りなくて飛距離が出せなかったんです。それでホテルでサーブ機担当の島君がめちゃくちゃ落ち込んでました(笑)。
島:ちょっと自信を無くしてました…….。
花尻:島君は初戦の後が一番やばかったのかな?
──初戦、サーブがあまり入らず苦戦しましたね。
島:1回目のサーブは良かったんですよ。そして2回目で失敗して、それで……、
三宅:その時に島君が会場のモニタにアップで写ったとき、「顔が死んでた」って言われました(笑)。
島:もし1回目が失敗してたら、その後どうなったか……。精神崩壊した自信がありますね(笑)。
──スコア的にも厳しい展開でしたからね。でもそれで勝ち上がって、そして豊橋、東大という自動機の強豪と当たることになりました。自動機への対策はしていたんですか?
三宅:一応、やっていました。サーブを思いっきり高弾道にすることです。
一応、僕たちもキネクトは試していて、シャトルの認知はできていたんです。で、相手がキネクトを使うという想定のもと、思い切り打ち上げ、キネクトの認知エリア外に出してしまえばいいんじゃないか、というアイデアです。もしかしたら、豊橋戦はそれが効いていたのかも……とも思いますが、確証は持てないです。
でも、東大は凄かったですね。ちゃんと返されましたし。キネクトじゃなくてXtionだったのかな、カメラ4台でしたからね。それに戦術というか、サーブのバリエーションも凄かった! 左右に振ったり、上のラケットで来ると見せかけて、下で来たり。
でも、こちらのマッチポイントになった時は、「読めた」かもしれません。その時に確実に入っていたのは、上のラケットからのサーブだったんですよね。「当然、後がないマッチポイントでは外したくない、だから上で来るはず」、と考えいたら、本当に上から来ました。その瞬間、「あ、これ返せる」と直観的に思いました。
ロボミントン=剣道!?
──なるほど、外から見ているだけでは分かりづらいところで、そういう駆け引きが行われていたんですね。
三宅:いろいろありますね。駆け引きというか、僕たちはセッティングタイムの練習もしてました。1分間をどう使うか。他ではそんなことはやってなかったんじゃないでしょうか。豊橋戦のセッティングタイムでは、初戦のサーブミスの調整に使いました。原因はコート上の風か、初戦でネットに突っ込んだせいで機体がゆがんだのか、その2択だったんですが、それをセッティングタイムで判断する、ということをしました。
──三宅さん、コート上で気合いを発してたじゃないですか。大きな声で。あれも準備されていたことですか?
三宅:はい、僕は小学1年生から高校3年まで、ずっと剣道をやっていたんです。その流れの行動ですね。ああやって声を出すことで、僕としては落ち着ける部分があります。メンバーも、その声を普段から聞いているから、それも落ち着くきっかけになる。でも、相手からしたら、相当にイレギュラーなことですよね。「なんだこいつら」って。それで、少しでもこちらのペースにできたらいいな、という考えでした。これは花尻と島には言っていなかったことだと思います。
花尻・島:言ってた(笑)。
三宅:あ、そうだった? まあ、そういうことを考えてやっていました。流れというか。スポーツだと思ってやっていたところはあります。
──なるほど、剣道は、駆け引きも相当に重要な要素ですからね。それが生きていた、ということでしょうか。
三宅:そうですね、”試合勘” みたいなものは残っていたと思います。バドミントンではありましたけど、完全な対戦型ですからね、何かしら剣道の影響はあったと思います。
「もうムリ! パンク!」
──サークルの発足が、2013年11月と聞いています。約1年半ですよね。そもそも、誰が言い出しっぺなんですか?
三宅:声を掛けたのは、僕です。中国語の授業でいっしょになった花尻に「ロボコンやらない?」って。その次に島君と石塚っていうのがいて。
──じゃあ、三宅さんが中心人物ですね。
花尻:島君なんか、普段から何かあると「三宅に聞けば、三宅に聞けば」って……(笑)。
島:それは否定しないけど、どっちかって言うと勝手にやったら後から何か文句でも言われそうで(笑)。
──それで、機体の設計をして、カナメの後衛機の操縦を担当して、いろいろな判断もして……、”三宅さんのチーム”、という感じですか?
花尻:そうですね、当日の駆け引きみたいなものも三宅だし、すべて三宅ですね。まあ、任せておけば安心、というのはありました。
島:シャトルが飛んできたら、確実に返してくれるだろうというのもありましたし。
三宅:いやでも、一回「もうムリ」って泣きついたことあるよね。それまでほとんど自分で統括していて、それでパンクして、ふたりに相談しました。その後はだいぶ分散しました。
──ひとりではムリだった?
三宅:そうですね。確実にパンクしてました。
花尻:だいたい、三宅はプログラミングはできないですし。
三宅:それはある! それと、花尻と島だけじゃなくて、井手口と峯下というメンバーもいまして、プログラムを最終的に仕上げたのは、このふたりですし。
──なるほど、やっぱり、三宅さんが中心に居るとしても、その他の方々も含め、チームとしてのまとまりがあったわけですね。
スーパーサイヤ人!?
──で、そうやって勝ち進んで、優勝ですよ!
三宅:そうですね。でも実感無かったですよ。初戦で勝ちましたが、あれだけギリギリ。「ま~コレ、次はムリだろう」って。豊橋の初戦のクオリティを見て、「うわ~なんか全部返してくるし、こりゃあ勝ち目ねえだろうなあ」というのが正直なところでした。毎回「次で終わりだな」と思いながら “特攻” して……、それで気づいたら決勝だった、みたいな。
──大会まで相当に練習したんですよね。
三宅:しましたね。4月に機体がだいたいできて、それからは月・水・木・金・土、夜は9時まで、ずっと練習です。このホール(筆者注 練習は、西早稲田キャンパス63号館の玄関ホールで行われていた。写真はそのホールで撮影)が使えて、授業が無い時間は、ってことですね。
それで大会の半月前、“覚醒” したんですよね。それまでサーブレシーブすら50%ぐらいの確率だったのが、8割9割まで跳ね上がったんです。
──スーパーサイヤ人かっ!? すごいなあ。今も、ABUに向けて特訓中ですか?
三宅:はい、今も同じくやっています。
──気になるのはやはり……、
三宅:中国は、完全自動のようですね。日本で、あれだけすごい自動機に勝っちゃったんで、これはもう手動機で優勝しないと、「面目ない」ってことだと思ってます。優勝したいですね。でもまずは、他の大学の手動機には負けたくない! それだけ追い込んできましたから。
──そうですよね。応援しています! では続いて、機体について教えてください!
後編・ロボット解剖に続きます!
学生ロボコン2015優勝校 早稲田大学。そのヒミツに迫る!〜機体編