ユカイ工学にモノづくりのスタンスを学ぶ CEO青木俊介さんインタビュー

第1回:2015グッドデザイン賞受賞のユカイ工学は、ユカイにモノづくりをしているのか? CEO青木俊介さんインタビュー

 

独特の「やわらかな」テイストをもったロボットをリリースするユカイ工学。編集部も、ロボットやIoT関連の取材を続ける中で、ずっと気になっていた存在だ。(もし、ユカイ工学をご存じない方がいらっしゃれば、こちらの記事もご覧いただきたい。2015グッドデザイン賞受賞のユカイ工学は、ユカイにモノづくりをしているのか? CEO青木俊介さんインタビュー

自社製品だけでなく、企業とコラボレーションしてユニークなプロダクトを生み出し、そしてどれもが独特の存在感を持つ。そんなユカイ工学のモノづくりのツール、スタンスについて、同社CEOの青木俊介さんに聞いた。

非常に落ち着いた、しかし笑顔が絶えないインタビューに

非常に落ち着いた、しかし笑顔が絶えないインタビューに

 

Javascriptを使ったプロトタイピングツール「konashi」

──デバプラとしては、プロトタイピングツールとしてリリースされている、konashiが非常に気になります。

(編集部注:konashiは、iOSとJavascript、BLEを簡単に組み合わせてプロトタイプを作ることができる「フィジカルコンピューティングツールキット」。使用例を集めたこのサイトも、インスパイアされること間違いなし。)

konashiは、巷でIoTデバイスと言われているものがものすごく簡単に作れる、というツールです。例えばアクティビティを計測するバンドのようなものを試作しようと思ったら、センサーを繋ぐだけでiPhoneから使えるようになります。

例えば私たちのプロダクトも、konashiを使ってプロトタイピングをしたりしています。今、世に出ている製品では、私たちが開発協力をした246(ニーヨンロック)も、konashiを使って開発しました。

また、auさんと一緒に取り組んでいるハッカソンで選ばれたアイデアは、konashiを使ったコンセプトモデルとして形になりました。FUMM(フーム)といいますが、子ども靴に内蔵されたセンサーとiPhoneが連携するものです。

──Javascriptを選んだのはなぜですか?

開発のハードルを下げるのが目的です。企画段階からいろいろなユーザーさんがソースコードをシェアしたり共有したりして、試作をもっとやりやすくするツールを目指そう、と考えました。konashiのリリースの時に、ちょうどカヤックさんjsdo.itというJavascriptのソースコードの共有サービスをやっていました。これがすごく良いサービスで、うまく連携できるのもひとつのメリットでした。

結果として、広告系の会社さんだったり、今までハードウェア系のものをやっていなかった人たちに使って頂いています。もともと私たちも、MakerFaire出身というか、MakerFaireといっしょに大きくなってきたというところもあるので、そういう人たちをバックアップするツールを作るというのは、どんどんやっていきたいと考えています。今もバージョンアップしていますしね。

──デバプラ読者も、使えそうですね。特にJavascriptということで、IT寄り、WEB寄りの人も。

すごく有効だと思います。付け加えるなら、konashiのユーザーだった人が、konashi繋がりでユカイ工学に入社することになったり、お客さんでも、もともとkonashiを使っていて、これをもっと発展させたいということでお仕事をいただいたこともあります。そういう、人を繋げる役割もしている大事なプロダクトです。

切削加工機は粉まみれ。この場所はいわゆる打ち合わせスペースだが、ここにもツール類が浸食してくるのは、モノづくりの現場の常

切削加工機は粉まみれ。この場所はいわゆる打ち合わせスペースだが、ここにもツール類が浸食してくるのは、モノづくりの現場の常

 

アイデアの源と、実現する方法

──konashiはある意味自分たちが欲しいものを作った。BOCCOなどの製品は、子どもの頃からの夢の一部が形になっている。アイデアの源は、単なるひらめきとかそういうものではなくて、そういった「想い」みたいなものですか?

そうですね。

──では、そんなアイデアがあったとして、それを実現させるには、どうしたら良いでしょうか。読者も編集部も、思いついてもなかなか実行しなかったりして……。

そうですねえ……ええと、作る前に、買ってもらえているといいですよね(笑)。

──えっ(笑)。

完成する前に売れていたら、最高じゃないですか(笑)。いやでも、家電のバルミューダさんなんかも、完成する前に注文を集めたって言ってました。クラウドファンディングもそうですよね。

──なるほど……。では、デバプラ読者は若い人が多いのですが、そんな人たちは、どうすればもっと楽しく、いや、ユカイになれますか?

う〜ん、……今の若い人たち、優秀だからなあ。ユカイ工学のアルバイトさんも、普通に設計してたりするし……、

──あんまり言うこと無いですか?(笑)

はい(笑)。でも、僕の周りを見ていると、面白いものを作る人ってつらい時間を過ごした人が多いですね。自分をどこまで追い込めるかというか……、それがけっこう平気な人が多いと思うんですよね。

──つらい時期がエネルギーを溜める、というようなことですか?

もちろんつらい思いをしろということではなく、自分の中にある衝動みたいなものが重要なのかも、という話ですね。

──なるほど、先ほどの「想い」のようなことですね。

あ、あとは、作ったモノを人に使ってもらう機会を自分で作る、というのは重要なのではと思います。僕たちもメンバーを新しく採用するときは、職務経歴書とかそんなものではなくて、仕事以外でどんなものを作っているかということを見たいです。

作るだけじゃなくて、人の目にさらして、いろんな意見を聞いたり、フィードバックをもらっていくと、新しいモノを作るということがどんどん上手になっていくと思います。MakerFaireのようなイベントでも、遊びにいくというよりは、自分で出展するほうが、何十倍も価値が高いと思います。そういう行動でいろいろな繋がりが生まれて、世界が広がっていくのは、とても良いことなんじゃないでしょうか。

AIBO、Pluto、ルンバなどなど、「その筋の」プロダクトが所狭しと。ありがとうございました!

AIBO、Pluto、ルンバなどなど、「その筋の」プロダクトが所狭しと。ありがとうございました!

■関連リンク
2015グッドデザイン賞受賞 ユカイ工学はユカイにモノづくりをしているのか? CEO青木俊介さんインタビュー
ユカイ工学


 

デバプラ×ユカイ工学プロジェクト Coming Soon!

デバプラとユカイ工学のコラボレーションが、水面下で進行中。2015年10月7日から幕張メッセで行われるCEATEC JAPANのロームブースで、ユカイ工学製作のロボット「からくり音楽隊」を展示する予定だ。人が振る指揮棒に応じて音楽を奏で、踊る、愛せるロボットに仕上がっている。↓チラ見せ!

さらにはユカイ工学監修の、ライントレーサーの作り方を無料で公開! からくり音楽隊の簡易版で、Arduino互換機のLazuriteを活用した拡張性の高いロボットとなっている。ダウンロードは無料なので、是非お試しいただきたい!

 

 

今回の連載の流れ

第1回:2015グッドデザイン賞受賞のユカイ工学は、ユカイにモノづくりをしているのか? CEO青木俊介さんインタビュー
第2回:ユカイ工学にモノづくりのスタンスを学ぶ CEO青木俊介さんインタビュー(今回)

 

ゼロから作るライントレーサー

アバター画像

エレクトロニクスやメカトロニクスを愛するみなさんに、深く愛されるサイトを目指してDevice Plusを運営中。

https://deviceplus.jp

スマホでコントロールできるロボットを作ろう