インタビュー

2015グッドデザイン賞受賞のユカイ工学は、ユカイにモノづくりをしているのか? CEO青木俊介さんインタビュー

ユカイ工学といえば、モノづくり界隈、IoT界隈の人たちには知られた存在だろう。それどころか、「気になる」クリエイター集団かもしれない。当然ながら編集部も、お話しをお伺いしたいと思い続けて幾星霜……。

なぜ気になるかと言えば、やはりその独特の方向性。技術や新しさや便利さだけではなく、ある種の「やわらかさ」を持ったプロダクトをリリースしていることがポイントだ。そのフィーリングは、この「BOCCO」のムービーを見るとよく伝わると思う(2015年のグッドデザイン賞を受賞!)。

ロボットがコミュニケーションのインターフェイスになっているだけでなく、ごくごく自然に生活に溶け込んで、愛せる存在としてそこに在る。もちろん、かわいいだけではない。……そんなプロダクトをどんな思いを持って作り出しているのか、ユカイ工学CEOの青木俊介さんに聞いた。

ゆっくりとした、低い声が印象的な青木さん

ゆっくりとした、低い声が印象的な青木さん

 

「画面の外」の世界の多様性 チームラボ、pixivを経て

──改めて、どんな会社なのか教えていただけますか?

「ユカイ」という名前は、SONYの設立趣意書にある「自由豁達ニシテ愉快ナル理想工場ノ建設」という言葉が元になっています。モノづくりが好きなエンジニアが集まって、愉快に仕事が出来る場所を作りたい、という思いが原点です。

同時に、「ロボティクスで世の中をユカイにする」というテーマも掲げています。今、人といっしょに生活して、人をちょっと手助けしてくれるロボットを作る環境が整ってきたと思います。そういうモノをどんどん出していきたい。

──設立は2007年でしたね。

もともと私は、在学中の2001年に、仲間といっしょにチームラボというソフトウェア会社を立ち上げたんです。その後、大学を卒業して、2007年にLLC(合同会社)としてユカイ工学を作って、それと平行して、メインの仕事としてイラスト共有サイトのpixivのCTOもやっていました。そして2011年にユカイを株式会社化して、今にいたる、という感じですね。

──その頃のチームラボもpixivも、ハードではなくソフトウェアの会社ですよね。

はい、基本的には検索エンジンの開発だったりサーバ側のことだったり、裏方に近い部分でした。影響を及ぼせる範囲といえば、基本的にはブラウザの中のことですね。ただ、画面の外に目をむければ、もっと多様な世界が広がっているはず、と感じていて、そのフィールドに立ちたいという思いは強くありました。

もちろん、とてもいい経験をさせてもらったと思っています。pixivで言えば、「自社プロダクトの立ち上げ、拡大」というのは、WEBに関わっている会社ならだれもがやりたいと思っていることですよね。その現場にリリース前から関わらせてもらったのは、非常に大きなことでした。

青木さんが審査委員を務めるグッドデザイン賞のロゴがちらり

2013年のグッドデザイン賞のロゴがちらり。「konashi」というプロダクトが受賞した

 

necomimi、事業の本格化、そしてBOCCOへ

──そして2011年に株式会社化してユカイ工学が本格的に始動、ということになりますが、何かきっかけはあったのですか?

necomimi、というプロダクトに携わらせてもらったのが大きかったです。

(編集部注:necomimiは、その時の脳波をキャッチして気分を動きで表現する、ネコミミ型デバイス。Youtubeやニコニコ超会議などインターネット界隈で話題を呼び、さらには文化庁メディア芸術祭 審査員推薦作品にもなった。RAPIROの石渡昌太さんも、開発メンバーの一員)

これが話題になって、いろいろな方に引き合いをいただくようになったので、というところでしょうか。会社としてやっていけるかどうか、まったく自信はなかったんですが……。

──今現在は、BOCCOのような自社製品をリリースしつつ、いわゆる受託開発もやっていますよね。理想の開発現場は「ユカイ」だとしても、タイヘンなこともあるのでは?

そうですね、ありますね、はい(笑)。でも、「大変だけどお金を稼ぐためにしょうがなくやっている」わけではありません。例えば今の自分たちのノウハウは、そうやっていろいろな仕事をさせてもらいながら身につけたものです。部品を調達するための商社だったり組み立てをするための工場だったり、そうしたネットワークを作るのも、受託の仕事がなかったらできなかったことです。それに最新のテクノロジーに触れるのも、クライアントのニーズを満たすために、という面もあります。自社製品としてリリースしたものも、もともとは受託開発の中でやっていた技術を使っていたりしますからね。

もちろん自分たちがメーカーでン十年というキャリアであれば、アイデアを考えるところから始めればいいのでしょうが、私はもともとソフトウェアのバックグラウンドです。そうしたノウハウを溜めるという意味でも、受託の仕事は重要です。

──なるほど、特にハードは……、

そうですね、ハードの開発は、デバイスのトレンドっていうのが重要ですよね。例えばひと昔前だったら実現するのに何十万とかかっていた製品が、BLE(Bluetooth Low Energy)が安くなったから数万円で販売できるようになった、というような。そんなトレンドがものすごく重要なので、そういう情報に触れることができるのも、受託のメリットのひとつです。

ソフトウェアなら、アイデアだけで勝負できたりします。しかしハードの場合は、アイデアがあっても、それがちゃんとコンシューマが買える価格で作れるようになって、初めて世の中に出せるので。

手前のロボットの正体は、まだ書けません……

手前のロボットの正体は、まだ書けません……

 

幼いころのイメージを実現する旅

──なるほど、いろいろなご経験が、今のユカイ工学、特に自社プロダクトに集約していった感がありますね。そもそも、ロボットは昔からお好きというか、興味はあったのですか?

そうですね。子どもの頃の興味の対象は主にパソコンでしたが、同時に、映画の『ターミネーター』なんかの影響があって、ロボットとか人工知能とか、そうしたものが好きでした。

クラシックのMacの奥は、FM TOWNS。当時欲しかったものだとか

クラシックのMacの奥は、FM TOWNS。当時欲しかったものだとか

──なるほど、BOCCOやその他の自社プロダクトも、その流れにあるのですね。

そうですね。だいたいロボットが好きっていうと、ガンダムとかマクロスとか……、そういうのが普通かもしれませんが、私はそういう感じではありませんでした。社内にもガンダム好きはいないかな。それよりももっと、ジブリ的というか、毎日ちゃんとロボットといっしょに生活できるような世界が作れたらステキだと思います。ユカイ工学が初めに作ったのは、カッパノイドって言って、ろぼのケ、妖怪がコンセプトでしたから。ちょっと遊んで、なんかかっこいい動きをして面白い、というだけではなくて、ロボットがちゃんと生活に溶け込んで、人の役に立っている未来、という感じでしょうか。

単に話題になるとかスゴイとかカッコイイとか、それだけではなくて、人がもっと自然に使える技術というか、人に寄り添った技術というか、人間を中心にデザインされたものが実際に使われる製品だと思います。目立つけど使われないのではなくて、ちゃんと使われるもの、使ってもらえるものを作ろうと、常に考えていますね。

──受託と自社プロダクト、チームで別れていたりはするんですか?

いえ、分けてはいません。そこを分けてしまうと、「俺たちが稼いだ金で好き勝手やってるやつがいる」なんてことになりがちで、それはユカイじゃないですよね(笑)。それに先ほどのお話の通り、作る過程で新しいものが生まれるという面もあるので、チームが別れていることは非効率だしなんか違う、と思っています。自社受託問わず、プロジェクト毎にアサインされる、という感じです。

──スタッフの方たちは、どんな人ですか?

Maker Faireとかワークショップの現場とか、そんなMakerコミュニティの繋がりで出会った人がほどんどですね。

──では、やはりモノづくりが好きでたまらない人、もっと言えばもう好きとかそんな意識もなくて、ただ気づいたらモノづくりをしている、というような……。

例えば「平日にエンジニアとして働いているから、週末はそんなものは見たくもない」という人よりも、休みなのに勝手に会社の設備を使って自分が作りたいものを作っている、というような人と仕事をしたいですね。今はそういう人が重要なんじゃないか、と感じています。

──そんな人たちが集まる開発現場は、「ユカイ」でいられていますか?

今は前よりぜんぜんユカイになっていると思います! もちろん、永遠のテーマとも言える話ですし、もっと完成を目指さないといけないとは思っていますが、前よりはゼンゼン、です。

 

■関連リンク
ユカイ工学にモノづくりのスタンスを学ぶ CEO青木俊介さんインタビュー
ユカイ工学
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デバプラ×ユカイ工学プロジェクト Coming Soon!

デバプラとユカイ工学のコラボレーションが、水面下で進行中。2015年10月7日から幕張メッセで行われるCEATEC JAPANのロームブースで、ユカイ工学製作のロボット「からくり音楽隊」を展示する予定だ。人が振る指揮棒に応じて音楽を奏で、踊る、愛せるロボットに仕上がっている。↓チラ見せ!
 

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