フレキシブル基板技術の最先端トレンド-第1部

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※この記事はDevicePlus.com(英語版)のこの記事を日本語訳したものです。

硬質のプリント基板上に電子回路を実装するという従来の方法は、デジタル時代における信頼性の高い基盤として大きな役割を果たしてきましたが、フォームファクターや機能性という点では、今や限界に達しつつあります。デバイスの小型化、ウェアラブルおよびIoT分野の急速な成長等により、(今や限界の見えてきた)従来の方法を修正するというよりは、それを大きく超える設計コンセプトを有したイノベーションが必要です。それが、フレキシブルエレクトロニクスです。

フレキシブル基板とも呼ばれる新技術は、電子部品を誘電性フレキシブル基板上へプリント/実装する技術で、それにより、デバイスの機能的完全性を保持しつつ湾曲させたり、丸めたり、折り畳んだり、伸ばしたりすることが可能となりました。同技術によってセンサ、医療機器、スマートテキスタイル、ディスプレイ、フレキシブルバッテリー、太陽光発電、照明、自動車、防衛装置等へと応用分野は格段に広がります。基板設計におけるこの大きな飛躍によって、従来構造では不可能だと思われていた新たな分野への世界が切り開かれることが期待されます。

図1:ナイキ活動量計Nike+ FuelBand SE WM0110-003の内部:Flexible Circuit Technologies社製フレキシブル基板

図1:ナイキ活動量計Nike+ FuelBand SE WM0110-003の内部:Flexible Circuit Technologies社製フレキシブル基板/©Teardown

ナイキ活動量計Nike+ FuelBand SE – Teardown社

ナイキ活動量計Nike+ FuelBand SEは、低電力消費Bluetooth 4.0対応フィットネスデバイスで、腕にはめて日中の活動量を測定、かつ睡眠をモニターする製品です。活動量は3軸MEMS加速度センサで測定、記録され、USBコネクタまたはBluetoothによって、iPhone、iPad、PCと同期させることが可能です。

図2:ナイキ活動量計Nike+ FuelBand SE WM0110-003内部のフレキシブル基板の詳細

図2:ナイキ活動量計Nike+ FuelBand SE WM0110-003内部のフレキシブル基板の詳細/©Teardown

フレキシブル基板には、技術者の興味や好奇心をそそる特徴が数多くあります。従来基板と比較して、生産コストの低下、エネルギー消費量の低下、性能の向上、さらにはより環境にやさしい素材や加工方法を使用できる可能性も有しています。

また、多くの機能を併せ持つことが可能であり、標準設計の部分で各種の硬質基板やコネクタに取って代わることになるでしょう。こうしたあらゆる点を考慮すると、フレキシブル基板市場は今後10年間でほぼ3倍となり、2026年までに市場規模690億ドルを超えるというIDTechExリサーチによる推定は確かに頷けるものだと言えます。

 

基板の進化

フレキシブル基板設計の進化において特に焦点が置かれているのは、柔軟性を有した基板と導電回路トレース薄膜層であり、その上に電子部品が接続、成形、プリントされます。基板の性能は、柔軟性、熱安定性、コスト、生産のし易さ、性能等、回路の品質を直接左右するものであり、現在フレキシブル基板の製造に最も広く使用されているのは、ポリイミド製およびポリエステル製フィルムです。

Dupont Teijin Films社は、ポリエステルフィルムのリーディングカンパニーの一社です。同社の製品ラインには、高安定度を有するポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムがあります。特に同社ブランドのメリネックス®(PET)、テオネックス®(PEN)は、二軸延伸結晶性ポリエステルで、フレキシブルディスプレイ、プリンタブルエレクトロニクスの先進的素材となっています。テオネックス®の特性としては、強度、熱安定性、耐加水分解性、電気絶縁性に優れていることが挙げられます。

ポリイミド基板の代替品として、AI Technology社が開発した独自製品オーガニック銅クラッドラミネート素材は、はんだ付け可能で、300℃の高温でも使用可能です。同社のフレキシブル基板素材COUPLER™は、低誘導率、高耐湿性を有し、ポリイミド基板に共通の水分誘因劣化問題を効果的に防止することが可能です。AI Technology社によると、同素材は従来型のポリイミドフレキシブル基板と比較して、50%のコスト削減が実現できるということです。

液晶製ポリマー(LCP)基板は、安定的な電子特性を有し、高周波アプリケーション、すなわち、医療、通信、光電気機器、高周波相互接続システム等の分野への応用が可能です。フレキシブル基板製造業者のTech-Etch社は、先進的な化学エッチングLCP加工により、設計上、ポリイミドフィルム同等の自由度を実現しました。

 

フレキシブルハイブリッド回路

フレキシブル技術は今後、これまでに無い機能性を発揮していくことは間違いありません。しかし性能面においては現時点では、従来回路の方優れています。この従来回路とのギャップを埋める暫定的なソリューションとなるのが、フレキシブルハイブリッド回路です。

フレキシブルハイブリッド回路は、フレキシブル基板上に、超薄型シリコン部品(従来設計部品)を実装し、導電インクをプリントしたもので、高性能シリコンとプリント回路の低コスト生産という特徴から、既存設計と未来のイノベーションとの橋渡しとなる存在だと言えるでしょう。その結果誕生したアーキテクチャは、ウェアラブル、IoT、医療等、柔軟性が求められる分野で大きな成長が見込まれています。

図3:使い捨て温度記録ラベル:ICチップNHS3100、Enfucell社製プリントバッテリー、
Quad Industries社製NFCアンテナを搭載した箔で製作

図3:使い捨て温度記録ラベル:ICチップNHS3100、Enfucell社製プリントバッテリー、
Quad Industries社製NFCアンテナを搭載した箔で製作/©Quad Industries

官民を問わず、フレキシブルハイブリッドエレクトロニクス(FHE)の未来は今や大いに耳目を集める存在です。8月31日に、企業、学術機関、非営利団体、政府機関のコンソーシアムであるNextFlexが、米国唯一のフレキシブルハイブリッドエレクトロニクス(FHE)のイノベーション研究所として正式に設立されました。サンノゼのシリコンバレー中心地に拠点を置くNextFlexは2015年、米国防総省(DOD)の補助金7,500万ドルを受けてFHE技術の開発を進めています。このDOD補助金から部分的に資金援助を受けている4件のプロジェクトが、先月発表されました。

 

1. パデュー大学/Integra Life Sciences社/ウェスタンミシガン大学/インディアナ大学医学部:酸素検知プリントFHEスマート創傷包帯

創傷床の酸素レベルをモニターし、レベルが低下した場合に酸素の局所供給を行う包帯です。創傷治癒にとって適切な酸素レベルは非常に重要であり、それによってさらなる創傷の悪化や合併症の予防が可能となります。同製品のプラットフォーム構造は(前回リサーチより:Mostafalu et al., 2014年)、低コストウェアラブルや使い捨ての生物医学診断分野にも適しています。

図4:酸素センサ搭載4層ペーパーベースPCB

図4:酸素センサ搭載4層ペーパーベースPCB/©Mostafalu et al.

 

2.パロアルトリサーチセンター(PARC)/カリフォルニア大学サンディエゴ校:バイオセンサラベル付マウスガード。軍事訓練中の兵士、その他ストレスの多い職場の従業員の疲労に関する化学的指標をモニターします。

同センサはBLEでデータをリレー伝送します。軍事演習時にはマウスガード装着が必須であること、また低コストで容易に取替可能なことから、センサ技術をマウスガードに組み入れるというアイデアは理想的だと言えます。センサによって疲労度をモニターし、訓練中、活動中の兵士の安全と健康を保持します。搭載する化学指標を将来的に増加することも可能です。

図4:酸素センサ搭載4層ペーパーベースPCB

図5:マウスガード:健康指標(唾液中の乳酸、コルチゾール、尿酸)をモニターし、データを無線伝送する/©UCSD

 

3.カリフォルニアポリテクニック州立大学(Cal Poly)/Jabil Circuit社/Dupont社/NovaCentrix社:フレキシブル基板上への超薄型チップ実装技術

FHEの成功のためには、信頼性、性能、コスト効果がいずれも高い形でフレキシブル製品の生産が実現できなければなりません。同チームでは、ラボから製造現場へ容易に移行できる、実行可能性の高い生産方法について研究を進めています。研究の成果は、ウェアラブルモニターシステムの快適性や性能を向上し、FHE業界全体に恩恵を及ぼすものとなるでしょう。

 

4.ニューヨーク州立大学ビンガムトン校(BU)/GE Global Research/i3 Electronics社/Infinite Corridor Technologies社/ロチェスター工科大学/Analog Devices社/Corning社:無線広汎性実装センサシステムの製作

無線広汎性実装センサシステムの開発は、デジタルヘルス、IoT分野の進歩の礎石となるものです。将来的に同システムが実現すれば、人間の内外環境を連続的にモニターし、状況に応じたデータをフィードバックすることで、健康、身体機能、生産性の向上を図ることが可能となるでしょう。無線統合センサシステムはユビキタスモニタリングの基礎となるものであり、BUとGEが、同システムの製造技術の開発を進めています。

個人の健康モニターから防衛分野まで、補助金を受けつつ官民の枠を超えて集中的に研究を進めることで、FHE技術はどんどん進歩を続けています。

Device Plus 編集部

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