IoT Tech Expo North America 2016: Discovering the Unlimited Connectivity in IoT(IoTに無限のコネクティビティを見いだす)

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※この記事はDevicePlus.com(英語版)のこの記事を日本語訳したものです。

IoT Tech Expo North America 2016に参加してきました。そこで知ったことは、IoTにからむテクノロジー、デバイス、アプリケーションの未来はおそらく無限であろうということです。しかし大きな疑問点もいくつかあります。過去を振り返ってみると、コンピューター、テクノロジー、消費財の足かせとなっていたのは、コンピューターの性能であったり、個々のテクノロジーであったり、メモリーの容量であったり、社会への普及速度であったりしました。IoT Tech Expo North America 2016の展示とテクノロジーを見て、そしてプレゼンターの話を聞いてはっきりしたことがあります。それは、主にわれわれの技術力が今日のIoTの限界を定めているということです。IoTとは、既存のデバイスとデータ、それらの間にあるあらゆるモノどうしを接続する技術力のことです。IoTは現在、成長期にありがちな痛みを経験しています。しかしIoT Tech Expo North America 2016に参加した開発者たちはすでに、その痛みをやわらげようと熱心な取り組みを始めていました。

以前にも増してIoTシステムが拡がりを見せ、一般消費者市場に浸透し始めている今、個人やさまざまなデバイスによって収集される日常生活データの量は膨大です。そうしたデータの使いみち、プライバシーに関するセキュリティの問題、安全性、これらはみな大きな問題です。IoT Tech Expo North America 2016の講演者、出展者、参加者が一様に述べていたことは、個人にとっても、開発者にとっても、暮らす都市にとっても、今日のIoTの方向性に大きな影響を及ぼしているのがコネクティビティの問題でありセキュリティの問題であるということです。

IoTによって都市のエネルギーエコシステムが分散するようになれば、モノのインターネットの相互接続グリッドが成長し続けない限り、そこに依存する各種デバイスから成るインフラストラクチャーは維持できなくなります。

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図1: 早朝に開かれたパネルディスカッションの聴衆(周りの展示ブースにまで人があふれている)

人、デバイス、システム、テクノロジーをつなぐ

IoTの特徴はなんといってもそのコネクティビティにあります。IoTとは、デバイスどうし、システムどうしをクラウドに(広くいえばインターネットに)接続することですから、そこが電球のスイッチとは違うところです。今のところはまだまだ、デバイスどうし、データどうしをつなぐ中継ぎ役が必要です。多くのシステムとデバイスは、それぞれ独立したシステムで稼働していますので、データ共有を可能にするためには、他のシステム、インターネット、クラウドのいずれかを経由しなければなりません。しかし将来的には、人もデータもデバイスからデバイスへとスムーズに移動できるようになるかもしれません。

あらゆる行動がシステムからシステムへと伝えられ、言葉、身ぶりだけでなく息づかいに秘められた意図まで読み取るデバイスと行動とが結びつけられる未来。そんな未来から、現在のテクノロジーを振り返ったとき、われわれは何を思うのでしょうか?

出展者であるOptimal Designは、テクノロジーとほぼ無縁の組織を対象としたコネクティビティを得意とする製品開発・IoTソリューション企業のひとつです。既存の市場、既存のメーカーと協力しながら、省電力化、ワイヤレス化を進めています。同社の目標は、初めてIoTデバイスに接するユーザーでも簡単に使えるようなIoTデバイスを生み出すことで、未来のIoTデバイスとの良好な関係を築くことにあります。

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図2: 狩猟用のデコイ(Optimal Design製。鳥の自然な羽ばたきを再現している)

コネクティビティ&セキュリティ

デバイスどうしがクラウドを通じて情報のやりとりができるようになると、ハッキングされる可能性、プライバシーの失われる可能性が出てきます。Xaptumの共同創立者でありCEOでもあるRohit Pasam氏は、パネルディスカッションのひとつで、IoTデバイスの最大の脆弱点について次のように述べていました ―― 「データが各デバイスからクラウドへと移動します。その間には、インターネットと呼ばれるものが存在しています。そしてインターネットは人々のために作られたものです。セキュリティの最大の問題はインターネットの脆弱性にあります」

彼の表現によれば、ユーザーのニーズを満たすために作られたインターネットはある種の負債です。その最たるものが、ユーザーのプライバシーを守るために設計された匿名性です。インターネットは人のプライバシーを守る必要があるため、それがIoTデバイスとIoTソフトウェアとにとって脆弱点となっているのです。彼によれば、匿名ユーザーがインターネットの匿名性を利用すれば、デバイスと通信すること、そのデータを盗むこと、操作することができてしまいます。

しかし別のパネリストであるCraig Miller氏(Sequans Communications、ワールドワイドマーケティング担当バイスプレジデント)は、コネクティビティとプライバシーとが両立するはずがないとする一般通念はあまりに単純化しすぎであるとして、次のように述べています ―― 「セキュリティとプライバシーは同じコインの裏表ではありません。全然別のものです」

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図 3: パネルディスカッション「Which is best for your IoT applications: LTE or LPWA?(IoTアプリケーションに最適なのはLTE? それともLPWA?)」で、くつろいだ様子でさまざまなシステムとセキュリティとを比較しているところ(写真(左から右): Phil Beecher(Wi-Sun Allianceの会長)、Chris Miller(Sequans Communicationsのワールドワイドマーケティング担当バイスプレジデント)、Geoff Mulligan(LoRa Allianceの会長)、Alex A. Khorram(machineQ at Comcastの創立者でありジェネラルマネージャー))

Rohit Pasam氏の発言とは逆に、Miller氏をはじめとするパネリストたちの発言によれば、デバイスとシステムとの間のコネクティビティに関する問題は、プライバシーとセキュリティとに関する問題とは別であるといいます。プライバシーを守るためのソフトウェアシステムとデバイスを設計するときは、個別の問題として、強力なセキュリティに取り組む必要があるとMiller氏は力説していました。それについては、もう1人のパネリストであるAlex Khorram氏も同意し、「ニーズに合ったテクノロジーを選ぶ必要があります。それこそがソリューションにつながるのです」と強調していました。

コネクテッドシステムによってプライバシーが低下するのではないかという懸念がありますが、IoT Tech Expo North America 2016には、そうした懸念をうまい方法で回避するためのシステムがいくつか展示してありました。そのひとつが「Density」です。人数カウンターでありAPIでもあるDensityは、オンライン上での情報共有を単純化することで、セキュリティの問題に取り組んでいます。

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図4: 低コストのDensityセンサーで人を検出して人数を数える。顔などの特徴をカメラで追う従来の方法とは違い、身元は保護される(©Technabob)。

展示されていたDensityは、ドアフレームの上に取り付けられたただの銀色の正方形のようでした。Densityは、空間に出入りする人の形を赤外線センサーで識別し、人数を数えます。それだけです。捉えられる画像は、人の形をしたぼんやりとした輪郭であり、クラウド経由でクライアントに示される情報は、+1とか-1とかの数にすぎません。クラウドを経由する情報がごく限られるわけですから、セキュリティの問題もあまり生じません。単純でありながら、大切な機能をひとつだけきちんとこなします。

コネクテッドリビング

個人向けのデバイスもいろいろ展示してありました。企業や製品開発者向けではなく、個人消費者と直接つながることを狙ったデバイスです。

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図5: Sesameを使ってスマホでドアの施錠・解錠を行う。

ホーム&インフラストラクチャーテクノロジーがターゲットにしているのは一般市民です。たとえばCandy Houseは「Sesame」という最新のガジェットを展示していました。Sesameはシンプルな施錠・解錠システムです。ドアのサムターンにかぶせるようにして取り付けて使います。スマホで施錠と解錠が行えます。Sesameは、ホームワイヤレスネットワークに直接リンクすることによりBluetoothを介してスマホと通信しますので、常時接続していても消費電力は少なくて済みます。Sesameのバッテリー駆動時間は500時間を超えるとのことです。ミリタリーグレードの暗号をサポートしているうえ、ドアを解錠しようとした個人のIDを記録する機能もあります。

Sesameは、あらゆる部分が簡単に使えるように作られています。Sesameによって、最もくつろげる空間である自宅との関係性が様変わりします。ほかにも、個人をターゲットにしながら、都市レベル、全国レベルで使われるデータを一変させるようなデバイスも展示されていました。

Bloomskyは、一般消費者向けに直販するハードウェアデバイスを複数製造しています。同社のSky2およびStormは、個人で所有できる気象モニタリングシステムです。庭や自宅、事務所に設置して使います。個人とそのコミュニティとに代わって現地の気象データを記録する複数のセンサーが搭載されています。数百~数千箇所(将来的には数百万箇所)からリアルタイムの気象データを収集する働きをしますので、個人のアプリに直に接続はしますが、コミュニティベースの気象観測装置として販売される装置です。

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図6: Bloomsky Sky2は、コミュニティベースのスマートウェザーカメラステーション。リアルタイム画像、経時データ、精密な気象データを提供する。

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図7: Sky2は太陽電池駆動。BluetoothとWi-Fiを利用して、ホームネットワーク、クラウドサーバー、スマホのアプリに気象データを送信する。

Daniel Han氏(Bloomskyのマーケティング&コミュニケーションズディレクター)は同社の製品がいかにも誇らしげでした。彼は、Bloomsky製のデバイスによってまとめられた大規模気象データマップが気象分析と気象予測に使われる未来について語りました。しかし一方で、Bloomskyは従来の気象データ収集装置と張り合うことに興味はないと力説していました。同社デバイスの真に先駆的な強みは、分散した多くの箇所から自発的に大量に集められるデータにあるからです。

スマートシティの作り方

IoT産業が拡がりを見せ、人とIoTデバイスとのやりとりがもっと一般化するにつれ、われわれの住む都市は変化してゆきます。都市におけるエネルギーの需要供給も変化してゆきます。一部の都市開発者はすでに、IoTデバイスを都市開発に応用する準備を整えています。

アムステルダム市の情報技術マネージャーであるNuray Gokalp氏は、IoTに対するアムステルダム市の積極的な方針についてIoT Tech Expo North America 2016で何度か講演をしました。同市は、いわゆる「ボトムアップ」型の手法でIoTの発展とイノベーションとを促進しています。都市基盤へのIoTの応用を進めるため、市職員、一般市民、イノベーターという三者間での対話をうながす体制作りをしているのです。同市は今年前半から毎月、スマートシティでの暮らしにからむさまざまなテーマに関するIoTミーティングを始めました。このIoTミーティングは、Gokalp氏によれば、公開市場のような機能を果たすと同時に、IoTの問題点についてはもちろんのこと、IoTを利用したソリューションについての対話をうながす場でもあるといいます。

Gokalp氏はプレゼンテーションの中で、これまでに議論されてきた有望なIoTアプリケーションについて非常に熱心に語っていました。そのうちのひとつはアムステルダム市のIoTミーティングで話の出た「鳥の巣箱」です。IoTを利用してWi-Fi接続された巣箱です。近隣から見える場所に設置して、現地の環境保全に役立てようというものです。この巣箱は、空気の汚染状況を測定して、色分けされたパネルにそのデータを示す働きをします。これによって市民は、地元の今の空気の質を知るというわけです。Wi-Fiステーションであると同時に、都市の汚染状況データを収集するデバイスです。

Gokalp氏が都市のIoTにおける大きな問題点に関心を示していたことは大変重要です。その問題とはすなわち、「市民生活をわずらわさずにさまざまな都市データを収集するためには、IoTをどう利用すればよいのか?」という問題です。

Gokalp氏は、アムステルダム市のIoTミーティングで強い関心を呼んだもうひとつの分野について熱心に語っていました。それはヘルスケアです。特に新生児を対象としたヘルスケアです。アムステルダム市では、新生児は病院の冷たいベッドの上でモニタリングされ、計測され、看護を受けます。このことは100年間変わっていません。アムステルダム市は、IoTデバイスを利用することにより、新生児にとっても両親にとっても温かくて快適な状態で新生児の体重測定やモニタリングができるよう、その検討を始めています。

ウェアラブルデバイス: 一時的流行から未来へ

ウェアラブルデバイスは、安定したペースで消費者市場に浸透してきましたし、すぐに飽きられることもなくある程度は定着しました。スマートウォッチやフィットネストラッカーは、最初の数年間に限れば、スマートフォンよりも速いペースで消費者に受け容れられました。現在、米国の成人消費者は、大半がスマートフォン(またはフィーチャーフォン)を所有していますが、ウェアラブルデバイスを所有しているのは10人中1人にすぎません。しかしMeredith Lind氏(YouGov USのパートナー。テクノロジープロダクツ&サービス部門担当。IoT Tech Expo North America 2016では、ウェアラブルテクノロジープレゼンテーションの司会を務めた)は開口一番、3000万人が将来的にウェアラブルデバイスを使うことに興味を持っていると推定されるデータを示しました。これは数十億ドルの経済規模に相当します。人々がウェアラブルデバイスに興味を持っていることは明らかです。スマートウォッチ、ファッションアクセサリー、フィットネストラッカーは有望です。しかし国際的な市場調査会社であるYouGovによれば、米国では、かつてスマートウォッチやフィットネストラッカーを使っていたユーザー数のほうが現在のユーザー数よりも多いといいます。では市場は何を見落としているのでしょうか? 消費者はウェアラブルデバイスに何を求めているのでしょうか?。

その答は、IoTでよく耳にする「コネクティビティ」にあるのかもしれません。消費者が強く求めていることは、周囲に存在するさまざまなデバイスを相手にウェアラブルデバイスで通信することであり、既存のIoTアプリケーションやIoTデバイスと極力スムーズにデータのやりとりができることです。ほかにいくつか例を挙げれば、ヘルスケア、電力管理、暮らしを快適にする調度、介護デバイスなどにもチャンスがあります。

Dan Tochen氏(YouGov USのリサーチディレクター)は総括としてこう述べました ―― 「ウェアラブルデバイスが周囲のあらゆるモノと“話”ができるようになれば、アプリケーションの種類はあっという間に増えて、人は『これなしでは生活できない』と言うようになるでしょう」

周囲のあらゆるモノに接続すること、これは、世界初のスマートリストバンドといわれている「Metron Force」がまさに実現しようとしていることです。Metron Forceは、使いやすいウェアラブルデバイスコントローラーの一種です。モーションとタッチ操作とでリモートコントロールを行います。一度に5台のデバイスまで接続できるようプログラムを組むことが可能です。コントロールされる側のデバイスは、そのモーション、スピード、パワー、ドライブなど、どの要素をコントロールするのかによっても違ってきますが、いくつかのシンプルなモーションでコントロールできます。

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図8: Metron Forceのサイズは腕時計ほど。2種類のデバイスをコントロールしている様子。

専用のアプリケーションを既存の製品に組み合わせる手法で新たな市場への参入を試みている出展者もありました。一般ユーザーを狙うのではなく、あえてニッチ市場を狙おうというわけです。そのうちのひとつが、Mobile Applications Studiosから発売される「Xperteye」です。Xperteyeは、いわゆるスマートグラスシステムの一種です。既存のスマートグラス製品を利用して、遠隔地から企業研修や現場訓練、医療相談などを行うことを目的としています。装着者は、自分の動きや周囲の状況をリアルタイムに捉えると同時に、別の場所にいるアドバイザーなどから助言や指導、レッスンを受けることができます。

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図9: Xperteyeが利用できるようセットアップされたGoogleグラス。ユーザーとアドバイザーとでライブビデオフィードの送受信ができる。

IoTがすべてを変える

IoTは、「コネクティビティ」「複数のデバイスの間に配置されたセンサー」「人から離れて不確定な状態で存在するデータ」の3つから成るシステムであり、人の振舞いと切っても切り離せません。Sudha Jamthe氏(モバイルビジネスリーダー&スタンフォードインストラクター、IoT関連書籍著者、スタンフォード大学教授)は、「Business Disruptions with Robots, Drones and Algorithms(ロボット、ドローン、アルゴリズムによるビジネスの崩壊)」と題した基調演説の中で、IoTの定義に関する自分なりの考えをこうまとめました ―― 「IoTによって普通のモノの中にセンサーやインターネット接続機能が埋め込まれるようになりました」。そうしたセンサーが追加されたことによって、モノのインターネットは、ヒトのインターネットとは別の世界を生み出しました。別の世界ではあっても、われわれと同時に存在している世界です。そうした世界がわれわれに与える影響はおそらく無限でしょう。しかしそれも使い方次第です。

あらゆる講演者、あらゆる開発者が、テクノロジー、デバイス、プログラムと人との関わりについて、そしてIoTの今後について、議論を交わしていました。Jamthe氏は、IoTがビジネスと人の発展に与える将来性に感化されていました。彼は、輸送、ロボット義手・義足、社会交流、パーソナルアシスタンス、プライマリーヘルスケアなど、ありとあらゆる領域にIoTが普及することを思い描いています。

開発者もイノベーターも、IoTテクノロジーの今後について無数のアイディアを持って待ち構えています。次はいよいよ普及の段階です。どうすれば、開発者と消費者とが同じ視点でIoTテクノロジーを受け容れるようになるのでしょうか? アムステルダム市の情報技術マネージャーであるGokalp氏は「テクノロジーは全体の20%、残りの80%は文化である」と述べていました。

IoT Tech Expo North America 2016については、「ハッカソン」「ビジネスの崩壊」「スマートシティ」など、いくつかのテーマに沿ってさらに掘り下げてゆきます。

 

IoT Tech Expo North America 2016シリーズ:

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