少しずつwithコロナの社会が動き出し、禍中の模索が続いていたロボコンも2020年の中止、2021年のリモート開催を経て、2022年のABUロボコンはインドのニューデリーで開催される。
その国内予選でもあるNHK学生ロボコンは2022年6月12日、東京都大田区の大田区総合体育館で開催される。今年はデバプラ編集部も現地取材が可能になり、一般応援も受け入れる。3年ぶりの現地の熱戦をお届けするぞ!
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競技テーマはインドの遊戯「ラゴリ」、精度のゲームだ!
毎回、競技テーマはABUロボコンの開催地の文化に沿ったものが設定される。今年のテーマは「ラゴリ」だ!
ラゴリはインドの古い屋外ゲームらしい。「シーカー」チームと「ヒッター」チームに別れて競い合う。
まずシーカーがフィールド内に積み上げた石の「ラゴリディスク」を狙いボールを投げ、塔を崩します。そして再建する間、ヒッターはシーカーを狙ってボールを投げ、積み上げ作業を妨害する的当てとドッジボールを合わせたような遊びだ。
競技時間は3分間。ルールや得点条件・勝利条件の詳細は以下の通りとなる。少し複雑に感じるかもしれないが、ゲームの流れが見えれば分かりやすいはずだ。
目次
1.「1台2役」で攻守交代、2台のロボットが協力しあってミッションを遂行
競技フィールドは12メートル角の正方形で、赤チームの陣地「赤エリア」と青チームの陣地「青エリア」が中央の「ラゴリエリア」を挟んで向き合っている。ラゴリエリアの中央には5枚の「ラゴリディスク」が積み上げてあり、これが得点源だ。
3分間の試合を90秒ずつ「ラウンド1」と「ラウンド2」に分けて、シーカーとヒッターを交代する。シーカーのミッションは「得点の獲得」で、ヒッターのミッションは「シーカーの妨害」となる。
各チーム2台、手動もしくは自動のロボットを製作する。ロボットは前衛の「R1」と後衛の「R2」で異なった役割を持ち、さらにシーカーの時とヒッターの時で役割が変わる。
それぞれのロボットのタスクやできることを整理すると、以下のようになる。
シーカーR1:スタートゾーンからボールを投げてラゴリを崩す。
シーカーR2:上部にヒッターの的となるボール(ボールオンヘッド)をセットした状態でラゴリエリアの中に入り、シーカーR1が崩したラゴリを積み上げ直す。
ヒッターR1:スタートゾーンからボールを投げて、ラゴリエリア内のシーカーR2を妨害する。ボールはヒッターR2から受け取るか、自分自身でボールエリアに入ってピックアップする。
ヒッターR2:妨害用のボールをボールエリアからピックアップしてヒッターR1に渡す。
2.ゲームの流れ、得点条件
90秒のラウンドは、さらに「ブレイクショットタイム」と「ラゴリパイル」の時間に分かれる。
ブレイクショットタイム:
シーカーR1がボールを投げて「ラゴリブレイク」を狙う時間で、90秒のラウンド中、最大30秒与えられる。シーカーR1は最大3個のボールを投げられる。ラゴリにボールが当たって崩れると「ラゴリブレイク」が成立し、ディスク1枚のブレイクにつき5点が加算される(最大25点)。ブレイクショットタイム中はシーカーR2とヒッターR1、ヒッターR2は動けない。
ラゴリパイル:
「全てのラゴリディスクが崩れる」「シーカーR1が3個のボールを投げ終わる」「ゲーム開始から30秒が過ぎる」のいずれかでブレイクショットタイムが終わる。シーカーR2はラウンドの残り時間を使い、ラゴリエリア内に入ってシーカーR1が崩したラゴリディスクを積み上げる。積み上げた枚数ごとに10点が加算される(最大50点)。
ブレイクショットタイム終了後、ヒッターR1とR2はスタートゾーンを出てボールゾーンのボールのピックアップができる。ヒッターR1はスタートゾーンの中から、シーカーR2のボールオンヘッドに向けて最大6個のボールを投げ、落として得点を妨害する。
「シーカーR2が全てのディスクを積み上げる」「シーカーR2のボールオンヘッドが、ヒッターR1の投げたボールに当たって落ちる」「ラウンド開始から90秒が経過する」そして「ヒッターR1の投げたボールが積み上げたラゴリディスクに当たって崩れる」のいずれかでラウンドが終了する。
シーカーチームは全てのラゴリディスクを崩し、全てを積み上げると「パーフェクトラゴリ」達成、最大の75点を得ることができる。
3.制約、ペナルティ
特にヒッターチームに対して細かい制限事項があり、反則するとペナルティが課せられる。中にはかなり重いもの、直接勝敗につながるかなり重いものもある。「ロボットの精度を上げるか、一部の戦略を諦めるか」といった判断も必要になりそうだ。
ヒッターのボールがラゴリディスクを崩してはいけない:
この条件が最も重く、勝敗にも直接関わってくるかもしれない。ラゴリパイルの途中、ヒッターの妨害ボールがラゴリディスクに当たってディスクが崩れたらラウンド終了、その時間に「ラゴリパイルが成立した」と見なされる。
例:ラゴリブレイクで4枚崩した相手チームのシーカーR2を狙ってヒッターがボールを投げたら、ラゴリディスクに当たって崩してしまった→シーカーのチームはブレイク4枚(20点)+パイル4枚(40点)=60点を獲得する。
シーカーのボディにボールを当ててはいけない:
ヒッターR1の投げたボールがシーカーR2のボール保持部以外に当たってボールオンヘッドが落ちた場合、ヒッターは強制リトライ(15秒間の停止)のペナルティが課せられる。
ボールの受け渡しに関するペナルティ:
ヒッターR1がR2から妨害用のボールを受け取るとき、ボールはフィールドに触れてはならない。フィールドに触れたボールは使用不可となる。
4.勝利条件
ラウンド1とラウンド2、合わせて最大3分間の試合が終了した時点で勝敗が決まる。
合計スコアが高いチーム:
シーカーチームとして獲得した点数の多いほうが勝利。
ボールオンヘッドの落下:
獲得点数が同じだった場合、ヒッターR2が相手のシーカーのボールオンヘッドを落としたチームが勝利。
ラウンド終了時間:
獲得点数、ボールオンヘッドの落下も揃った場合、ラウンド開始からラゴリパイル終了までの時間が短かったチームが勝利。
ラゴリパイル時間:
上記がいずれも同じだった場合、ラゴリパイルのスコアが高い方のチームが勝利。
いずれの条件でも勝敗が決まらなかった場合、審査員判定が行われる。競合対決では「パーフェクトラゴリは当たり前、いかに相手のラゴリパイルを効果的に妨害するか」といったハイレベルなバトルが予想される。
目まぐるしい戦況の変化から目を離すな!
「対決」系の競技でここまで制約が多く、精度や戦略性が必要なルールが設定されるのは珍しいように思う。ラウンド一順までたったの90秒、まばたきも惜しいくらいの多彩な戦略バトルが期待される。
ロボットの性能を上げることはもちろん、相手チームの戦略を読む必要も出てくる。ロボットの性能をどこまで上げるか、人間にしかできない仕事を何と定義するかなど、限られた開発期間の中ですべき決断も多い。参加校がそれぞれ、どのようなチームを完成させてくるのかが本当に楽しみだ。
NHK学生ロボコン、そしてABUロボコンの本格的な再始動が始まった。参加チームも応援に来るファンの皆さんも健康に留意して、6月12日の会場を盛り上げよう。
NHK学生ロボコン2022 開催概要
開催日:2022年6月12日(日)
場所:大田区総合体育館
公式サイト:http://www.official-robocon.com/gakusei/