「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト2024(以下、高専ロボコン2024)」が2024年9~10月に8つの地区大会、そして11月に全国大会が開催された。試合会場、またテレビやライブ配信だけでは伝わりきらない、各出場チームが経験した舞台裏に光を当てる本企画「あの時のピット」!
ローム賞を獲得した高専にインタビューする企画の2024年大会、第1弾は、和歌山高専Bチーム「紫電飛動(シデンヒドウ)」の川嶌(かわしま)さんにインタビューしました。
目次
1. 高専ロボコン2024のルールをおさらい!
今年の競技テーマは、「ロボたちの帰還」。
高専ロボコンはじまって以来、初となる、まさかのロボットがロボットを投げるというルール。スタート地点からおよそ5メートル離れた「着地スポット」に向けてロボットを飛ばし、周辺に置かれたボールとボックス(以下、オブジェクト)をいくつ持ち帰ることができるかを競った。
投げられたロボットの着地が最高100点、そしてオブジェクト全てを得点すると250点、合計350点。投げる側のロボットを正確に動かす高度な技術力、投げられる側のロボットの耐久性、そしてボールとボックスをいかに早く持ち帰るか、そのアイデアが勝敗をわけた。
ルールは公式YouTubeが分かりやすい!
2.和歌山高専の「あの時のピット」
Q:2024年大会に参加するにあたって努力したポイントを教えてください。
A:ボックス点を獲得できない代わりに、投げられる側のロボットの着地点100点と、ボール回収で70点を確実に獲得するロボットを目指しました。特に、ロボットにボールを取り込む入口を横向きに付けることで、ロボットの横移動だけで素早く回収できるように工夫しました。また、射出ローラーを二枚にし、ボールの弾道や地面に落ちた時のバウンドに差が出ないようにしたほか、射出ローラー用の二つの大きなモーターを燃やさずに動かせるよう、強力なモータードライバ―を開発。
さらに、射出後の回収にも工夫を施し、地面に落ちたボールを回収するためのローラーや、飛んできたボールをキャッチするための緩衝材を使用した幕も搭載しました。
Q:大会に向けてマネジメント上、工夫したことはありますか?
A:1,2年生のみでチームが構成されており、私も初のチームリーダーということでかなりの緊張感を持ってスタートしました。技術面でもチームの結束という面でも心細かった私たちは、Aチームに所属している先輩方にアドバイスをもらったり、通話アプリで部活時間外でも積極的にコミュニケーションをとるなど、考えられる範囲で出来るだけ情報共有を行いました。
Q:大会準備でぶつかった壁と、乗り越えた方法を教えてください。
A:大会準備中は、ロボット製作の問題だけでなく、メンバー間の熱意の差や意見の対立など、さまざまな壁に直面しました。
その中でも、最も苦戦したのはロボットの「着地」です。ロボット1が他のロボットを安全に着地させ、さらに100点の的に正確に着地させるため、射出機構の精度やロボットの重量、滑り具合の調整に苦労しました。また、目玉であるロボット2(ボールロボ)も、飛距離不足やコントロールの難しさに悩まされました。
着地の問題は、軽量化したクッションをロボット2に装着することで、重量を抑えつつ壊れない着地を実現。ボールの飛距離とコントロールについては、射出ローラーの形状やボールへの圧力を調整して、改善しました。
すべての課題に共通して、実験中の動画を記録し、後から見直すことで効率的に改善策を考え、問題を一つひとつ解決していきました。
Q:和歌山高専にとっての「あの時のピット」とは?
A:大会前日・当日の両日とも、トラブル続きでした。
私たちの重量計が壊れていることに、前日の計測軽量時に気が付きました。なんと重量が1kg前後オーバー。回路にもいくつかのトラブルが発生した上、動作不良や規則違反も見つかったのです。しかし、必死の思いで各自ができることを行い、何とか動かせるよう調整。翌日にテストランも行い、試合にも出場することができました。
ですが、迎えた本番でもトラブルが続きます。
1試合目、ロボット2-2(ボールロボ)は着地の衝撃で足回りが歪み、最大の武器、左右の平行移動をしての射出ができなくなる事態に。さらに射出ローラーにも影響が出て、飛距離が足りなくなってしまいました。2試合目までの短い時間でパーツ交換を試みましたが間に合わず、2試合目も同じ状態での出場を余儀なくされました。試合中も何度もボールの射出を試みるもののうまくいかず、時間だけが過ぎていきました。
終盤、私は一つのアイデアを思いつきます。それは、着地兼オブジェクトゾーンの整理を担っていたもう一台のロボットにボールを運んでもらい、ボールロボ内に押し込むという作戦でした。結果、なんとかボールをエリアAまで飛ばすことに成功。しかし、ロボット1のキャッチがうまくいかず、惜しくも敗退となりました。
「もっと早くこの作戦に気づいていれば」「もっとトラブルが起こらないロボットを作れていれば」という後悔が残る結果でしたが、課題と学びの多い大会となりました。
Q:2025年大会の意気込みを教えてください!
A:今回の大会結果は正直、満足のいくものではありませんでした。ロボット制作、チームマネジメント、本番当日の動きなど、すべてにおいて何かしらの課題が残ったと思います。しかし、私たちはまだ低学年であり、将来に大きな可能性を秘めています。
この経験を来年に活かし、個人個人の力を伸ばし、互いの能力を高めあい、尊重しあっていけば来年こそ、納得のいく結果が見えてくると信じています!
和歌山高専ロボコン部(@wnct_rbcn_club) / X
>>学生ロボコン・高専ロボコン 過去のローム賞受賞校へのインタビュー