「アイデア対決・全国高等専門学校ロボットコンテスト2024(以下、高専ロボコン2024)」が2024年9~10月に8つの地区大会、そして11月に全国大会が開催された。試合会場、またテレビやライブ配信だけでは伝わりきらない、各出場チームが経験した舞台裏に光を当てる本企画「あの時のピット」!
2024年大会でローム賞を獲得した高専にインタビューする企画の第4弾。今回は苫小牧工業高等専門学校Aチーム「ネジカタメパワーマシマシ」(以下、苫小牧高専)の小嶋さんに「あの時のピット」を振り返ってもらいました。
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1. 苫小牧高専の「あの時のピット」
Q:ロボットのコンセプトを教えてください。
A:今年の苫小牧高専Aチームのプロジェクト名は“ネジカタメパワーマシマシ”。こってりとした二郎系ラーメンのように、インパクトのあるロボットがコンセプトです。ロボット2を飛ばすために、相当な力が必要だと試作当初から感じていたため、定荷重バネをたくさん使って増せるだけ力を増しました。また、それに耐えられるよう射出機構の形は三角形に、使う角材はできるだけ太くするように工夫しました。
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(左)ロボット1の全体像 (右)ロボット2-1と2-2
Q:2024年大会に参加するにあたって努力したポイントを教えてください。
A:ロボットの設計は2年生が担当し、上級生がバックアップする体制で進めました。この体制には、下級生の育成を目的とするだけでなく、柔軟な思考を存分に活かしてほしいという意図もありました。その結果、ロボットの合計重量は規定より約7キロ軽く、最も軽いロボットは1キロ台で製作することができました。
また、これまでは一度決めたアイデアから大きな変更を加えることが少なかったのですが、今年は「試作」に重点を置いてロボット開発をしました。どの射出機構が最も安定して飛ばせるか、ロボット2の形が最適かなど、実際に作って試し、確認することを心がけました。
Q:大会準備でぶつかった壁と、乗り越えた方法を教えてください。
A:ロボット2の飛行性能を向上させるため、軽量化と強度のバランスを取ることに非常に苦労しました。
部材を減らして軽くしようとすると強度が不足し、逆に強度を増すとロボットが重くなり、投げるロボット1のパワーを強化しなければなりません。その結果、着地時の衝撃が大きくなり、壊れてしまうという悪循環に陥ってしまいました。そこで、ロボット2に緩衝材を装着し、着地の衝撃を和らげる方法でこの問題を解決しようと試みました。しかし、簡単にはうまくいきませんでした。紙風船を取り付ける案、足回りにスポンジを貼る案、ダイラタンシー流体を使用する案など、さまざまなアイデアが出ましたが、衝撃吸収の物足りなさや着地後の動き出しなど、どれも課題が多く決定打には至りませんでした。
最終的には、スポンジをプラスチックダンボールで挟み込み、タイヤがプラダンに接地し、着地後に緩衝材が素早く抜ける形に落ち着きました。
アイデア出しから実現までの試行錯誤を経て、最終的に問題を解決する最適な方法を見つけることができました。この過程で得た経験は、今後の設計にも大いに役立つ貴重な学びとなりました。
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(右)ロボット2-1 (左)ロボット2-2
Q:苫小牧高専にとっての「あの時のピット」とは?
A:実はロボット発送日までにロボット2が完成しませんでした。なんとしてでも大会までに完成させるため、学生寮に住んでいる人たちを中心に夜遅くまでロボットの製作、調整を行っていました。
会場には、電車でロボットを運びました。移動中に壊れなくてほっとしたことは今でも覚えています。
さらには前日に、ソフトウェアの問題でロボットが思った方向に進まない、入力したとおりの動作をしないといったトラブルが発生。プログラムが複雑すぎて、どこに問題があるかわからずにお手上げ状態だったのですが、顧問の先生に相談をしてなんとか当日出場できる程度になりました。
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地区大会会場、ロボット2-1
試合中は、ロボット2がエリアCに飛ぶかどうかということしか考えられませんでした。ロボット2は、練習ではエリアCに届いていたのにも関わらず、大会前日の練習で届かないことが判明したのです。しかし、直前の試走ゾーンでの練習で、ロボット1を前進させつつ同時に飛ばすことでエリアCに届かせることが一度だけできました。この技を本番でも成功させればロボット2をエリアCに着地させることが可能ですが、操縦者の腕とタイミングにかかっています。
いざ本番を迎え、大技に挑みました。何度か挑戦する機会はありましたが、いずれも失敗してしまいました。とにかく上手く行くことを願い、チャレンジの度にいかに早くリカバリーするか、飛んだ後に壊れないかなどを考えながら試合を進めていたことを、今でも覚えています。
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ピットでの様子
結果は悔しいものでしたが、この大会を通じて下級生のレベルが上がったことを実感しました。3年生は上級生の力を借りずともロボットを作り上げることが出来ています。2年生はロボット2の設計をほとんど任せただけでなく、ユニバーサル基板が主流であった回路関係は、切削基板やプリント基板の回路設計も行うなど、過去に比べてできることが確実に増えたことが大きな収穫でした。
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2年生設計のモータドライバ
Q:2025年大会の意気込みを教えてください!
A:今年は全国大会に出場ができなかったこともあり、来年度は全国へ進むことが目標です。
下級生が主体となってきたことで、来年度は今年度よりさらに強く、再来年度はそれ以上に…となることを期待しています。そのために、まずは来年度を見据え、オフシーズンではメンバー全員の技術を磨くと同時に、上級生の技術や知識を伝えていくために、講習にも力を入れていきます!!
苫小牧高専ロボットテクノロジー部 (@TmNCT_robotech) / X
>>学生ロボコン・高専ロボコン 過去のローム賞受賞校へのインタビュー
Vol.14 仙台高専(名取)
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